AWC お題>ノックの音がした>風変わりなお客様   穂波恵美


        
#839/1336 短編
★タイトル (PRN     )  97/ 8/ 6   0: 9  ( 54)
お題>ノックの音がした>風変わりなお客様   穂波恵美
★内容
 ノックの音がした。
 私は、いつものように扉を開けた。
「遅刻する、遅刻する!」
 今回は、ずいぶん小さなお客様だった。
 しかし、チョッキから金時計を取り出し、慎重に眺める手つきは紳士だ。
「旦那様は、あちらです」
 私は丁重に案内をした。
 お客様は、真っ白い耳をゆらゆら揺らしながら、通路の向こうに消えていった。
「やだ、どこにいっちゃったの?」
 おやまあ、今回は二人連れだったとは。
 これは、私の手落ち。私は急いで、小さなレディに道を示した。
「お客様のお連れ様は、あちらにいらっしゃいます」
 私の言うことはほとんど耳に入っていない様子で、女の子はぱたぱたと通路を走っ
ていった。
 仕方がない、あの年頃の女の子とはそういうものである。

 しかし、最近旦那様にもお客様が増えた。
 一昨年の恒例誕生日パーティー以来ではないだろうか。
 私はこの屋敷の執事を努めて50年になるが、こうも毎日お客様がいらっしゃるの
は実に珍しい。
 始めにいらっしゃったのは、実に立派な身なりの紳士だった。片方の手が鈎爪だっ
たのが印象的だが、私も長年執事をやっている身。
 勿論その理由などは気にしなかった。
 それから、毎日のように色々なお客様がやってくる。ひどく疲れた様子のレディも
いた。手にした籠いっぱいにマッチを抱えていて、どこか遠くを見ているような瞳を
していた。
 かと思えば、とても元気な紳士もいた。古風な方で、顔をすっぽり覆う仮面をつけ
て、薪でも切って下さるのか大きな斧を抱えていらした。
 親指ほどの姫君もいらしたし、何故か箱を抱えて、「あけるべきか、あけざるべき
か」と呟く、若い異国風の紳士もいた。
 異国風と言えば、金色に輝く背の高い紳士と、銀色の子供のようなお連れ様が来た
こともある。美しい長い黒髪を持ち、雲に乗っていらした姫君もいる。
 
 それにしても、旦那様にこんなにご友人がいらしたとは驚きだ。
 半年ほど前から、一度も私を呼んで下さらなくなったが、これだけお客様がいらっ
しゃるのだから、退屈なさっていることはないのだろう。
 しかし、私は少々疲れていた。
 こうも毎日お客様をご案内しているのだ。無論執事として為さねばならない他の仕
事もしっかりとこなしている。
 私は、扉の近くのソファーに腰掛けほんの少しうとうとしてしまった。
 ノックの音がした。
 私は慌てて扉に近寄った。
 しかし、本当にノックの音がしたのだろうか?
 もしや、夢に見ただけでは。
 私はそっと覗き穴から外を見た。
 …………実に珍しいお客様だった。
 しかし、私がご案内しようと扉を開けたときには、お客様の姿は見えなかった。 
ただ、声だけがかすかに聞こえて、私は不思議に思った。
「げ、音声だけじゃなくて画面までバグってる」

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 お、終わりです。
 ああおちが、おちがない。         
  おしかりのお言葉待ってます。




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