AWC 夢                   そあら


        
#759/1336 短編
★タイトル (KCH     )  97/ 3/20  23:38  ( 54)
夢                   そあら
★内容

 真っ暗の中に自分自身があった。
 まわりをめぐらせても、ただひたすらの黒、黒、黒。
 自分自身の姿さえ見えなかった。
 手足をみようとしても継ぎ目のない黒。
 恐かった。
 だからどこかへ逃げようとした。
 ところが走れど走れど視界は開けなかった。
 おまけに逆さまになってるんじゃないかと思えてきた。
 そして走りながら、逃げながら。
 何かを叫んで……

 景色が一変した。

 今度は真っ白な中に自分自身があった。
 まわりをめぐらせても、ただひたすらの白、白、白。
 自分自身の姿形は見えた。
 手足はいやに白かったけれど。
 不安だった。
 だからどこかへ逃げようとした。
 ところが走れど走れど視界に変化はなかった。
 おまけに逆さまになってるんじゃないかと思えてきた。
 そして走りながら、逃げながら。
 何かを叫んで……

 目の前に自分がいた。

 自分はここにいるのに。
 目の前に自分がいる。
 なんと言えばいいのか戸惑っている間に。
 彼がもう一人増えた。
 また一人。
 また一人。
 瞬く間に彼らは空間を埋め尽くした。
 彼らの意地の悪い目が自分に注がれていた。
 ここから逃げだそうと、もがきながら。
 何かを叫んで……

 ここで目が覚めた。

 見慣れた部屋の中に自分自身があった。
 まわりをめぐらせると、あらゆる色、色、色。
 窓の外ではいつも通り雀が木にとまっている。
 安堵のため息。
 起きたかい?
 思わず声のした方へ顔を向ける。
 そこには。
 自分がいた。
 思考停止。
 そして。

 絶叫。

                                <了>




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