AWC 風が萎えてしまう前までに 邸不施 餌歩


        
#698/1336 短編
★タイトル (RLJ     )  96/11/23  23:51  ( 40)
風が萎えてしまう前までに          邸不施 餌歩
★内容

何かが始まるというのなら
 僕は諦めるのだろうか 
   僕という全てを

高速の上に点灯する単色のライトは 心を鷲掴みにする
ただ不確かな周期性に彩られた不安は
何かを思い出させるようだ
物語の終末は だれもが悲劇を期待するけれど
失われた片割れを見つめて生きるのを諦めることを 
君は僕に思い出させたようだ
感謝は忘れ去られ
ただ報復だけが 待っているだけの人生だったというのに

君の精神はぼろぼろで 手の施しようがないとは 街のやぶ医者の診断だ
僕にはそれを覆すだけの気力もなければ、根拠も無い 
ただ自滅することだけを夢見ていた自分を隠そうとする君は
どうにも淫らな生き物になる筈だった
  だから僕は言い寄った 
際限のない望みは 頭の中にだけ 楽園を生み出す
なのに君は 
失われた片割れを見つめている僕自身のみじめな姿を
僕に思い出させたようだ

感謝するのなら すべてが台無しだ
埋め合わせは 風を萎えさしてしまう
とどまっていたいのなら 
君は世界に失望を感じるハメになるだろう

だから 生きていく事には希望を感じる
生きている事が無価値に見えているのだから
生きていることには 光を感じる

何かが始まるというのなら 僕は諦めるだろう
僕というすべてを


                                                       邸不施 餌歩  

1996 10月頃




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