AWC    不完全人間の失望      /オークフリー


        
#648/1336 短編
★タイトル (GSC     )  96/ 9/ 2  22:20  ( 44)
   不完全人間の失望      /オークフリー
★内容

 コンピューターも、なんだか急に張り合いややる気が無くなってきた。

 私のパソコンNEC〈PC−9801DA/U2〉には、ICM社製の光型リムー
バブル ハードディスクユニット〈RD−270〉と、同じくICM社製の普通型ハ
ードディスク〈HC100〉がつないであり、この二機のHDDが連動して立ち上が
るように設定してある。
 そしてパソコン通信も、WTERMを7月からこのシステムに移して快適にできる
ようになった。従来PC−9801UXで通信を行っていた時には、スピードも遅か
ったし文字化けもあり、PC−VANの高速利用料金が基本の5時間を超過すること
が多かったのに、9801DAに移してからは、4時間以内でおさまるようにもなっ
た。
 今年が最後の夏休みということで、正に私は『パソコン三昧』の40日間を過ごす
ことができ、一応満足していたのである。
 ところが、その夏休みも最後になって、DAに接続してあるハードディスク
〈HC100〉が壊れてアクセス不能になってしまった。しかもそれに伴い、連動に
なっているリムーバブルも立ち上がらないのである。
 既に、ICM社は倒産してしまったから新しいハードディスクを生産することはな
い。他の会社の製品でもつないで使用することはできるかも知れないが、なんとなく
出鼻をくじかれたような、裏切られたような、妙な失望感を覚え、突如元気を無くし
てしまった。
 何が一番つまらないかと言うと、せっかくこれまで時間をかけて作成・整理・保存
してきた各種のデータ(自作の文章、有料・無料の各種ソフト、バイナリーあるいは
テキスト形式の全てのプログラム・資料・マニュアル、点字および普通文字の文学作
品、MIDIやBASICで作成した音楽データ等々)の全てが永久保存にできない
ということである。どんなに綺麗に正書し、どんなにきちんと分類して保管したつも
りでも、ディスクが壊れたりドライブや機械が動かなくなれば、一瞬にして消えてし
まうし、もしそれを防ぐとしたら、寿命が来るよりも少し早目にバックアップを取っ
ておかねばならない。しかし、バックアップを取ったとしても、それ自身が永久保存
でないのだから、3年に1回、それも最低2カ所以上にSAVEしておく必要がある。
会社も倒産するし、機種もドシドシ変更されてしまうから、それに即応するために、
常に注意を怠らないようにしていなければならない。
 「そんなことは最初から分かっていたではないか!」
 と言う人もあろうが、保存・更新期間が5年も持たないとなると、それはあまりに
儚いし、作業の効率も悪い。
 こんなつかの間の幻影のために、ばく大な労力と時間と金銭を浪費していてよいの
だろうか?

 結局、随筆『音楽によせて』で書いた状況と同じように、私は物事に一時的に集中
し、ある限界を越した瞬間から、突然意欲を無くしてしまうようだ。それは世の中の
仕組みや人のせいではなく、私自身の不完全な精神のゆえである。


                 [1996年9月2日   オークフリー]




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