#628/1336 短編
★タイトル (RJN ) 96/ 8/ 7 21:47 ( 32)
「ペトラルカのラウラ」 ルー
★内容
「ペトラルカのラウラ」
フランチェスコ・ペトラルカは、14世紀イタリア・ルネッサンス期の有名な桂
冠詩人である。ラウラという女性との運命的な出会いによって、彼女への愛を綴っ
た「カンツォニエーレ」という詩集を書き上げた。以来、ペトラルカとラウラの恋
愛は名声を後世に残した。
ペトラルカについて、私は寡聞にしてこれ以上知らない。ラウラについては、ど
んな女性であったか誰も知らないだろう。手元の百科事典には、ラウラはペストで
死んだ、とある。
ラウラを讃え、ラウラのための、ラウラを愛した詩が多くありながら、ラウラと
いう女性の容姿すらわからないというのは妙である。画家の想像力で描かれたとい
う話も聞かない。あるいは、ペトラルカの詩的表現は難解すぎたのかもしれない。
ラウラ、この花の咲きにおうような名。
ペトラルカに生涯愛され、「ペトラルカのラウラ」と呼ばれることによってのみ、
今に伝わる人。ラウラは美しかったのだろうか。詩人に愛されるためにだけ生まれ、
出会い、伝染病に冒されて、おそらく素早く命を散らした女性は。
詩人は、ラウラが人妻である故に、さらに愛を燃え立たせたのだろうか。しかし
悲恋ではない。永遠の女性なのだ。
古い恋物語は、まだ語り継がれるだろうか。
私達は、彼等の事を理解するのに限界に近づいている。私達は、ある日、雨が上が
った空のように彼等のことを忘れるだろう。
ラウラという謎を残したまま・・・・・
・・・・・・・・・了 by ルー RJNO8600