#613/1336 短編
★タイトル (ARJ ) 96/ 7/24 19:22 ( 23)
お題>味知らぬ、天丼 みのうら
★内容
「ですから、その時間は食事に行ってました」
「誰か証言できる者はいるのかね?」
「……300人収容の大食堂ですから、そこまで気付くかどうか。近くに私の部署
の人間はいませんでしたし、この制服ですから食堂の人も見分けがつくかどうか」
「君は部内に人気がなくなる12:30を犯行時間に選んだ。携帯電話で彼女を呼
びだし、屋上から突き落としたのだ。恋愛がらみか……陳腐な動機だな」
「してませんてば。私は昼食を取ってからすぐ、出張に出たんです。今帰ってきた
ばかりですよ」
「君は昼食に何を食べたのかね?」
「何って……いつもの日替わり定食ですけど」
「おい、こいつを逮捕だ」
「な、何をするんですか!」
「どうもこうもない。犯人は君だ」
「なんでそうなるんだ!」
「昨日の日替わり定食は天丼だった。具は何かね? 何を食べた」
「え……っと、タマネギと人参とエビと鱚……」
「食べたのかね?」
「はあ」
「本当に昼食を取ったなら、君は今頃入院中だよ。『そっち』の犯人は君が日替わ
り定食を食べることを知っていた。鱚とエビに毒を仕込んでおいたんだ。3人が重
体、58人が入院治療中だからな。幸い今のところ死者は出ていない。さあ、奴が
ブタ箱で君を待っているぞ」