AWC 道元のお面 $フィン


        
#570/1336 短編
★タイトル (XVB     )  96/ 4/ 1  23:51  ( 51)
道元のお面                                $フィン
★内容

 平安の昔から生きている道元のお面というものがあった。このお面、身体を持つ人
間がすべての欲の元となる因業を捨て、生きながらお面となり、何も食べずに、腐臭
を漂わせるだけの存在になっていたのだ。
 あるとき、この面の耳から一塊の茶色い小山が転がり落ちた。その小山は道元の耳
糞であった。今まで欲を切り捨ててきたのに、こんなにも因業の塊、耳糞が出たのか
と思うと、道元のお面は来世には極楽往生などできるものではないと哀しくなってし
まった。
 もっとお面を絞ればもっと因業が出るだろうと思い、近くにいる人間に頼もうとし
たが、いるのは僧でありながら酒は呑み女は抱くと有名な破戒僧一休だけであった。
 道元のお面は舌打ちしながら一休を呼んだ。一休は女を抱きながら道元のお面の元
にやってきた。道元のお面の話を聞いた後、一休は、少しぐらいの欲を持っているの
が人間であり続ける条件だと答え、今でこそそんな姿に成り果てているというのに、
これ以上因業を絞り出すとどんなことになるかわからないと答えた。
 道元のお面はそんな一休の忠告を無視し、僧でありながら酒を呑み女を抱く破戒僧
などわしの気持ちがわからんのかと罵倒した。こうして一休はしぶしぶであったが、
道元のお面の因業を絞り出す手伝いをすることとなった。
 一休が絞り出すと、道元のお面がくるくると曲がっていき、穴という穴から欲の塊
因業がとろとろと流れ出してきた。
 一休は力一杯お面を引き絞る。道元のお面もひいひい泣きながら、もっと絞り出せ、
もっと絞り出せと絞られる痛みを堪えて訴えた。これをすっかり出せば極楽往生でき
るものだと思い喜んでいた。
 絞り終わった後、道元のお面は、生きながら極楽往生する術を使うことになった。
因業をすべて取り出したから、何の悩みもなく極楽往生することができると考えたの
だ。そこで術を使う前に、高僧である道元であるならば、本来地獄に行くはずである
一休にも一度だけなら極楽を見せることができると感じ、一緒に極楽行きの術をかけ
ることとなった。
 むにゃむにゃ、道元が術をかけると辺りの風景が代わっていく。
 なんだここは、道元のお面は驚いた。何しろ着いた先が美しい蓮が咲く極楽ではな
く、鬼のいる地獄であり、その上あんなに因業を捨ててお面になったのに、地獄に着
けば手を足もついたまっとうな人間として蘇っていたのだ。更に悪いことに高僧の象
徴であった紫の衣を着ることもなく、生まれた姿のままで地獄の入口にぼんやり立ち
すくむのであった。
 地獄に着いた道元と一休の二人は鬼に引きずられて、それぞれにあった拷問を受け
ることとなった。
 一休には水、食物を与えないで幾日もいたかと思うと、今度は一挙に銀しゃりの山、
始めは無我夢中になって食べるのだが、腹が受けつけなくなり、食べては吐く、食べ
ては吐くの拷問が続くこととなる。
 一方道元は、腐臭まみれる板に打ち据えられ、両手足を切断される刑を受けること
となった。地獄の太陽が昇ったころ、鬼が道元の元まで来て、両手、両足をなたでぶ
ったきる。真っ赤な血が道元の胴体を染め上げる。その上化膿止めのために塩を傷口
に擦りつける。一晩眠り翌朝になってみると、斬られたはずの手足が生え、また太陽
が昇るころ鬼に両手足を斬られるということになっている。
 道元は拷問を受けながら、どうしてこんなことになるのだ、こんなにも因業を無く
してきたではないかと叫び声をあげた。
 すると道元の横で、銀しゃりを食べていた一休が、だからいったでしょう。生きな
がら極楽往生を望むのも欲なのだから、欲をすべて取ることなど無理なのですと叫び
返した。

  注 これ夢野城と同時進行していて、結局出さなかった分
  




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