#513/1336 短編
★タイトル (ALN ) 95/ 9/30 3: 7 ( 75)
今朝は微笑んで… 聖 紫
★内容
風に乗って…
秋の木漏れ日が微風に僅かに揺れて微笑んでいる様に色付き始める街
はしゃいだ様に笑ったあの夏の光りの中の君も静かに変わり大人しい
恋を見つけたね… 振り向く時の仕草で分かる微笑む時の瞳で分かる
気付かぬ中に木の葉は旅立… 梢もやわらかい陽射しを遮りはしない
子供達に代わり公園の長椅子は恋人達の為の束の間の優しいゆりかご
枯葉を運ぶ微風に乗って此の侭二人旅に出ようか秋の終わらない街へ
新曲
新しい歌をお前が唄う
なんにも変わっちゃいない
あの日のままで
お前の声すらなつかしむほど
時は流れて
変わらないものはお前と俺くらいか
新しい詩をお前が謡う
少しは本当に大人に成ったかい
今でもあの日の少女のままなのか
お前の顔は今でも覚えちゃ居るが
時は流れて
お前は俺の事を忘れたかも知れないな
お前の唄う新しい歌は
相変わらず恋に破れて愛に泣いて
あの頃のまま何も変わっちゃ居ないのか
昔の様に寂しいままならば電話くらい付き合うよ
時は流れたが
お前の事までは流しちゃいないから
捨夜
君の影偲ぶ秋夜の深さより 尚侘びしきは花器の枯れ花
星すらも隠す初秋の霧の肌 しろく冷たく流れ行くさま
窓越しの季節のような恋心 眺めてみればこころも笑う
指折ば悲しみさえも儚くて 泡沫の現に過ぎ去りし日々
指先
苦い珈琲を枯葉の海で褪せた光りの渦に身を任せ俯き加減に流し込む
冷めて仕舞ばこんなものかと笑顔まで冷たく苦くなる呑みきる束の間
見上げた空が高く遠く青く眩しく輝いてお前独りだねと見下ろした街
指先に伝わる空のカップの冷たさはお前を抱いたあの夜の肌の温もり
立ち上がる俺の躯倒れ行く俺の心歩き始めた俺の躯枯れて舞い散る心
ちぎれて仕舞えばこんなものかと痛みさえ身軽に成って戯ける束の間
転がる枯葉の上で躯が遠く小さく消え去る一瞬を見つけて見つめた街
お前の胸を這い回る指先の動きさえ無くした今は心で愛撫する夢の中
今朝は微笑んで…
悲しい顔が一番良く似合う季節の中で… 今朝は微笑んで御覧
細い肩に少し早めのコートを羽織る様に悲しみを身に纏っても
心の傷から溢れる涙は何時まで経っても瘡蓋には成りはしない
寂しい顔が一番良く似合う季節の中で… 今朝は微笑んで御覧
憂いを着こなせる女に代わる為になら誰もが恋の痛みに憧れる
だけど誰も知らない鏡に映った顔が隠した心の色を濁して終う
… だから、今朝は微笑んで。
君の得意な笑顔で微笑んで…
聖 紫