#502/1336 短編
★タイトル (ALN ) 95/ 9/10 22:56 ( 50)
編修 聖 紫
★内容
例えば、私が今どの様にして過ごして居ようとも、君自身には全く関係の無い遠
い事の様に、私にとっても多くの普段の生活の中では君の事を故意に思い浮かべる
事すら無いのは全くの嘘では無い。 だがしかし、その事で総てを全く消失した訳
では無い。 日常を僅かにでも離れた瞬間が訪れた一瞬、私は君の事を思わない時
など一度すらない。 そんな風に幾つもの君が、幾つもの君の跡に続く事実を除い
て、私は君を今でも愛しく思い出すのだ。
其れは、誰もが初めてと云う言葉で表すように、必ず避けては通れない出逢いが
君に他ならないからだ。 初めてで最後… そんな出逢いが在ったとすれば、私に
とって、其れは既に永遠に叶う事の無い憧れだ。
君に抱いた夢が大きすぎた様に、君を溺愛した幼さが不幸を約束した様に、私は
更なる夢を描き、幾つもの愛を語り… 繰り返し、そして知って居るのだ。 総て
は君に初まり、君で終わって居たのだと。
君と別れた後の私を如何に初めての君に相応しい私に見せかけようか。
人生が振り返る度に書き換えられるものであったならば… 再び新鮮な私で、あの
日の君に逢いに行けるものを… 或いはこうして居る瞬間でさえも、あの日のまま
の君と私で居られよう筈のものを…
繰り返す事を知りつつ犯す過ちを、この先何処か近い未来で書き換える事を前提
に、無数に誘う罪の甘い罠の虜になりたい。
幾つもの深い傷と、後悔と落胆。 既に今の私は、其れを恐れるあまりに、初め
ての君の事以外には頭の中に無いのだ。 必ずしも不幸では無い今を捨て、明らか
に私自身の我侭の為だけに、このささやかな生活を犠牲には出来ない事に気付きな
がらも、それでも君の事を思い出すと、あえて、今の彼女とは別れて仕舞った方が
良い様な気がしてならない。 今の彼女は、私には合わないのだ。 否、否、否…
私が、今の彼女には合わないのであろう… 彼女を受け入れようとする度に、白々
しい程に無意味な虚無感が私を襲って来るのだ。 時には憎悪すら感じる。 近頃
では、いっそ彼女の目の前から永遠に姿を隠し去って仕舞いたいとすら思う事の方
が多いのだ。 … 心の痛みは益々留まるところを知らない。 私は既に心の底か
ら愛すると云う事を忘れて仕舞ったのだ。 君を愛で、あの子を愛し… 彼女も…
また、あの女も… 幾度もの出逢いと愛は総てが欺きへの立証に他ならなかった。
君を純粋に愛した私が、あの子の総てを… そう、隅々にいたるまでを溺愛した
時代。 そして、総ては終わったのだ。 悲しいくらいに、寂しいほどに君達を愛
する時代は、もう既に終わったのだ。 私はなおも愛に飢えながらも、悲しみの中
で、痛みの中で、喘ぐように… 君達を虚飾の花として愛する以外に術を知らない
事にしよう…
しかし、君にだけは分かって欲しい。
これが最後でないにしろ、何時もの我侭な裏切りで在ろうとも… 私が486を
捨て、Pentium/90MHzを餌食にしようとするのは、やはり純粋な恋心
からに他ならない… 清らかに美しい少年の様な憧れなのだと云う事を… 。
聖 紫