AWC お題>風鈴 不知間


        
#493/1336 短編
★タイトル (YPF     )  95/ 8/17   1:31  ( 31)
お題>風鈴 不知間
★内容
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   風鈴二つ

                  不知間 貴志


          ひとつ

 昔の、子供の頃の風鈴ほど涼しい音色に。山のような、
巨大な入道雲のまぶしい白さと細部の無音の動き。その
下をはしる川越街道の、トヨタの数をかぞえていると、
風は、ぼう、と通り過ぎて、ちりん。
 子供の私は、茶色いあしぶみミシンの下にもぐりこん
で、開いた窓から縁側のむこうをながめている。
 夕立がくれば、あの雨戸をぎいぎいと閉める手と軋み。



          ふたつ

 からからと、貝鳴子が鳴っている部屋で、ほうけている
と、さらに風鈴もどこからか遠く聞こえてくる。
 私は、ただぺったりと古くなった畳の上にすわっている。
 ここは、今はいない赤ん坊独特の匂いに満ちている。
 扇風機の組み立てかた。しまいかた。
 人がいないときこそ、風鈴の音はさえるのだ、貝鳴子は、
妥当な海のように聴こえて、そうだ夜にはすいかを切ろう。

--
(1995.8/17)




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