AWC 逆流                    聖 紫


        
#423/1336 短編
★タイトル (ALN     )  95/ 3/21  19:56  (150)
逆流                    聖 紫
★内容

   「抱いても良いよ」

  突然、奴が俺の胸にもたれ掛かり潤んだ眼差しで見上げる。

   「誰が抱くか! 馬鹿野郎!」

  でも、乳くらいは揉んでも良いか…

   「よくそんな、冷たい言い方が出来るわね… 」

  奴は、俺の胸にもたれたまま微笑みながらすねてみせる。

   「無理していると、躰に悪いよ」

  奴は静かに瞳を閉じて、接吻を望むような表情を造る…

   『玲子より、可愛いなぁ… 』と、ふと思って仕舞う。

  如何… 限界だ。

   「誰が、無理などするか!
    お前を抱くくらいだったら、玲子を抱いた方が、よっぽとましだ!」

   「あらぁ、そうなの…
    玲ちゃんより、妹の方が抱きたいって云っていたのは、誰だったぁ?」

   『ぎょっ… 』

  何時の間にか… 何時来たのか、突然、和美が背中越しに、にやけた声で俺をい
 たぶる。

   「それは… こいつ… どう見ても、女にしか見えなかったからだろうがぁ」

  否、奴は確かに女だ。 そう、生まれたときは絶対に違うにしろ… 今は確かに
 女なのだ… しかも、姉の玲子を遥かに凌ぐ、いい女だ。

   「いらっしゃい」

  マスターが、にやけながら私の隣の席に和美のグラスをセットし始める…

   「人が悪すぎるぞ… マスター
    和美が来たのならそう云ってくれれば良いじゃないかぁ」

  マスターは、『悪いのはどっちだ』と云うような顔で、肩をすくめて見せた。

   「玲ちゃんは今日は来ないの?」

   「俺に聴くな」

  ぎょ、つい何時もの癖で、奴の髪に指を絡めて遊んでいた… 最悪だ…

   「あら、玲ちゃんには何時もこんな事しているの?」

   「するか!
    いつまでも、気持ち良い事してないで、さっさと起きあがれ」

  奴がやっと、姿勢を戻した頃、由美子が尚子と入ってきた。

   「あぁ、やっぱり、祐輔君を連れてきているぅ」

   「やかましい… 」

  好きで連れ歩いている訳では無いわい… 否、待てよ… 少なくとも、一週間前
 迄は、好きで連れ歩いていたんだ… 絶句。

   「でも良かったねぇ」

  由美子が意味在りそうに語尾を引きずりながら祐輔に話しかける。

   「祐輔は、私しか愛せないんだもんねぇ」

  一件、正常に思えるが…
 祐輔は女になる前は女を愛せなくて、女になった後で、女しか愛せなくなったらし
 い… 危ない奴等だ… 由美子は正真正銘の女だと保証できる俺はもっと妖しいか
 も知れない…

  由美子は祐輔の左側に座り、その向こう隣に尚子が座った。俺の右には和美が座
 って居たが、席をひとつずらせて更に右により、俺にも寄れと云う… まぁ、いっ
 か… 祐輔との間に席がひとつ空いたが… 其処には、玲子が遅れてきて腰掛けた。

   『最高で、最悪のメンバーだ…』

   「良かったなぁ、順子が居なくて」

  マスターが、意地悪そうにカウンターの中から話しかけてくる。

   「ぜんぜん…」

   『何処が、よかったなぁだ… 自分の娘だろうに…』

  しかし、祐輔と玲子… 並んで座れば祐輔の方が可愛い女に見えるからたまらん。

   「祐輔に手を出さなかったでしょうねぇ」

  玲子が、冷たく呟く。

   「誰が出すか」

  祐輔が、由美子と手をつなぎながら、顔だけこちらに向けて微笑みながら告げ口
 をする。

   「私より、玲ちゃんの方が良いって」

   「そう? 女だったら誰でも良いのでしょう?」

  すかさず、玲子が続けた。
 その発言… 的は得ているが… 明らかに、総ての顔ぶれに角が立っている様な…

   「尚子、分かれるそうよ」

  由美子がグラスを揺らしながら云う。

   「あら、良かったわね」

  和美が俺の顔を見ながら、相槌をうつ。

   『俺に振るな!』

   「早くも×1?」

  祐輔が続ける。

   「誰のせいかしら?」

  玲子が俺を睨む。

   『やはり、俺のせいなのか… 』

  いや、違うだろう… マスターの顔がひきつっている…

   「さぁ、誰のせいなのでしょう…」

  俺も、マスターの顔を見ながらにやけて見せる。

   「順子と再婚するの」

  尚子がぼそっと呟く。

   『こりゃ、かなわん!!』

  そう云えば… 尚子は、元々男だったんだ…
 待てよ… 確か、順子も娘になる前は、息子だったぞ… 如何、これでまた、俺の
 結婚恐怖症が化膿して行く… 確かなのは、玲子と、和美と、由美子だけだが、由
 美子は祐輔のものだから… まさか… 玲子と和美… 出来て居るんじゃ無いだろ
 うなぁ?

  こらこら、昔ママで今マスター、んな眼差しで俺を見つめるのは止しなさい!!

                                   聖 紫




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