#35/1336 短編
★タイトル (QUB ) 93/ 5/12 20: 2 ( 58)
ある日の出来事 グレイ
★内容
俺の中で何かが弾けた様な感じがして、暫く経つといつもと同じ職場にいる自分
に気がついた。おかしい俺は今日は風邪を引き込んで今日は休暇を取ったはずなの
だが、身体の調子もおかしい所は無いし勘違いなのだろうか?
暫くの間いつもの通りの仕事をこなした俺は周囲の俺を見る目が常日頃の感じと
異なっている事に気付いたのだが、それも気のせいと黙殺していた。
所が常務からの呼出が来るに至って事は重大さを増す事になるのだった。
「君の開発した新商品なのだが、売れ行きが好調でねぇ、企画部でも少々目先を
変えたファミリーが欲しいと言って来てるのだよ。何か妙案は無いかね?」
常務の切り出した言葉に俺は目を丸くした。俺は新商品どころかここ2年程って
もんは開発関係の仕事はしていないのに、常務は俺が新商品を開発したと言うし、
しかもそれがヒットしてると言うのだ。
最初は勘違いが続いているのかとも思ったのだが、どうやらそうでも無いらしい
周囲の見る目が変わっているのも、これが事実だとすれば納得出来る。
その時になって俺はいわゆるパラレルワールドと言う奴に考えが至ったのだが、
いくら俺がSF好きでもこの状況が現実の事と捉えるにはまだ抵抗があった。そこ
で俺は常務の探りを入れて見る事にする。
「新商品のファミリーって、いったいどう言ったもんを御望みなんです?」
「どうと言ってもねぇ、君の開発した季節にも環境にも左右されないあのジャケ
ットにデザインの他に深海用とか防弾機能を付けた警備用とかのファミリーを
作って見て欲しいのだよ」
淀み無く応える常務の言葉に俺は絶句した。俺が半年前に提出してボツにされた
それも、今誉め契っている当の常務がSF的過ぎるとボツにした企画では無いか、
これが通って、しかもヒットしてる世界へ俺は飛ばされてしまったのか、ならば俺
の望む所では無いか。そう考えた俺は、簡単な返事を常務に返すと部屋をゆったり
と出て自分の為に用意された個室へ向かった。
(俺にも運が向いて来たらしいな、多分入れ替わりにこの世界の俺が向こうに行
ったのだろうが、気の毒な限りだ)
心の中でそう呟いた俺は、研究室の自分の机に向かって更に驚く事になる。
机の上にある1枚の写真は、半年前あの企画がボツになったとたんに俺の元から
離れて行った沙弥香と俺の結婚式の写真だった。
これ程までに、たった一つの企画がどう扱われたかによって俺の人生は違ってし
まうものだったのか、全てが順風満帆では無いか・・・・・・。
心の中で叫び声を上げた時、俺は夢から醒めた。そう、全ては夢だったのだ。
どうやら願望が夢に出たらしい、俺は苦笑する事しか出来なかったが、何か希望
を持てた様な気がして、熱を出した後の重たい身体を窓辺に寄せると、後ろから声
が呼んだ。
「起きたの? 久しぶりに来たら寝込んでるんだもの驚いた」
振り返ると、そこには御粥の入っているのであろう土鍋を両手に持った沙弥香が
微笑んでいた。どうやら全てが夢では無かったらしい。
俺は、ヨリを戻そうと言う沙弥香を手招きするとベッドに座り込み幸せを噛みし
めるのだった。
グレイ