#4552/5495 長編
★タイトル (SEF ) 98/ 7/20 13:21 (100)
京都旅行記【後編】 /えびす
★内容
もう夕方なので、けっこう涼しい。足のおもむくまま、てくてく歩く。直
感で面白い感じのするほうへ、するほうへ。ふらふらと。旅行にゆくと、必
ずひとりでふらふらする時間を持つようにしている。趣味なのだ。
二年坂だか三年坂だかいう坂のところで、背後のカップルが「ここ二年坂
だ。別のところから行こう」とか会話しているのが耳に入る。なんのこっち
ゃ。通ると別れる、とかそおゆう坂なのかなあ、とか思って、そのまま坂を
降りる。後でおとうとくんに聞くと、
「いや、それ、そういうんじゃなくて、その坂でコケルと、
二年以内に死ぬ
とかいう坂なのである」
と教えられ、京都が大嫌いになる。というか、そういう設定を考える京都人
の文化ってのが、なんか嫌。そう言えば、なんかの漫画にも、この坂でコケ
ルと死ぬ云々っていうのは描かれていたような気もする。
坂の途中の陶磁器屋さんで、自分用に小さめのぐい飲みを買う。650円。
京都は、そこらじゅうにカミサマがいる。小さい社が、そこかしこに。そ
ういうところは、好きだ。
歩き煙草をぷかぷかやりながら、坂を降りていると、おばちゃん三人組が
どっかの建物を背景に写真をとろうとしている。間を通っちゃ悪い、と思っ
たので、ちょっと待っていると、シャッター押してくれません、と京都訛り
で頼まれる。いいっすよ、とカメラを手に取ろうとすると、あら、でも煙草
すってみえるから、あたしが持ってるわけにもいかないしねえ、とかぬかす。
カチンときて、うるせえ、俺は携帯灰皿、常に持ってるんで、大丈夫なんだ
よ、とばかりに煙草を腰の灰皿に入れる。でも、もちろん、顔はにこやかに
「大丈夫っす、今消しますから」と。いいじゃねえか、歩き煙草ぐらい。吸
殻捨てねえんだし。
まあ、とりあえずシャッター押してカメラを返し、また足のおもむくまま、
とほとほと歩く。
とほとほ歩いていると、なんとなく護国神社のほうに足が向く。というか
そこにそんなものがあるなんて知らなかったんだけどさ。インドのパールだ
かバールだかいう博士の記念碑がある、と看板にあったので、ちょっと行っ
てみることにする。太平洋戦争のときに、なんか日本に有利なことをしてく
れたひとらしい。よく知らんが。ふらふら中の俺を引き寄せたのは、この博
士か、とか勝手に思う。
けっこう長くてきつい坂を登ると、護国寺は既に閉まっている。
ややがっかり。まあ、5時過ぎてるからなあ。しょうがねえか。
元きた道を引き返すのは、なんとなくヤだったので、また足のおもむくま
まふらふらしていると、けっこういい雰囲気の住宅地っぽいところに出る。
森の中から、何かの鳥が一羽、綺麗な声でさえずってくれて、なんかいい感
じ。あるいはあのタツノオトシゴみたいに「トリトンが来たぞ」とか言って
るのか。
いや、じつは、
西村京太郎
の家の前を偶然通ったみたいなんですけどね。それについては、また後で。
6時半ごろ、下宿に戻って、すき焼きの準備をしつつ、テレビはフジテレ
ビ系にしておく。K−1観ないといかんもんね。
アーツ×フィリオの試合は、すき焼きを食いつつ、けっこう興味深くみて
いた。いや、今、個人的にオランダブームなんで。アーツを応援。脛をぱっ
くり切って、ドクターストップで負けちゃったけど。それ無かったら、どー
だったのかなあ。ワールドカップ、オランダ×ブラジル戦でもオランダ負け
ちゃったし、まあしょうがねえか。俺の頭の中では、今回の対戦がワールド
カップのリターンマッチだったのになあ。
その後、おとうとくんが前日にビデオに撮っておいた『紅の豚』を観る。
おとうとくんは、この映画、観たことがないらしい。こっちは、前日観たけ
どやっぱ、いい映画だなあ、とか思いつつ、11時過ぎに就寝。
痒くて寝れぬ。
けっきょく、2時間ぐらいで起きる。いやあ、下宿、汚いんで、ダニとか
凄いんよ。しかたないので、ビールなんぞ飲みながら、寝たのは深夜3時ぐ
らいか。
【1998年7月19日】
目が覚めると、朝8時半。入浴。メシ食うけ、とかおとうとくんが言うが、
あんまり食欲ないので、やめておく。
護国神社が気になるので、ちょっとそこ寄ってから帰るべえ、と、おとう
とくんと一緒に出かける。前日どおり、二年坂とか通りつつ、護国神社へ。
だがしかし、なんか雰囲気が怖くて入れない。おとうとくんも、なんか入り
づらそうだったので、やめておく。
で、前日どおりのコースを歩いていると、おとうとくんが、
「あれ? なんかここらへん、テレビで観た」
「なんじゃそりゃ」
「西村京太郎の家、確かこんな感じのところにあるんじゃなかったっけ。い
つだったか、『驚き桃の木』でやってたような気がする」
「んなアホな。気のせいだって」
「いや、間違いない。たぶん、あれじゃないの」
と指さすので、
「んじゃ、表札みてみるべ」
と見てみると、やっぱり西村京太郎とあった。
「ね。参ったか」
「うむ。参った」
うーむ。もしおとうとくんと歩いていなかったら、ずっと知らなかったん
だろうな。なんか得した感じ。お隣は、山村美紗。けっこう観光名所なのか
なあ、一部マニアのなかでは。
そのまま市バスの停留所までおとうとくんに送ってもらう。ちょうどぴっ
たりのタイミングでバスが来る。ラッキー。
ということで、市バスで京都駅まで行って、無事新幹線で帰ってきたっす。
あー、疲れたような疲れていないような。昼頃自宅についたので、すがきや
のインスタントラーメン食って、ガーッと寝たっす。
【おしまい】