#4470/5495 長編
★タイトル (PTN ) 98/ 4/19 18:14 (115)
コドクノ「人」ガエラレナカッタ、アタタカイ「宝物」1 しのぶ
★内容
べつだん大掃除・・・・・・・・・・という季節ではないのだけれど、インスト
ール家では季節はずれの大掃除をおこなっていた。マユカとしてはこん
な夏場の時季に大掃除なぞしたくはなかったのだが、なにせんマユカの
教育係であり、お手伝いさんでもあるロボットのインストールが極度の
きれい好きなので、やりたくもない大掃除をやっているわけだった。
そんなわけで、今マユカがいるところは普通のマンションほどの大き
さをもつ倉庫の中だった。一週間もかけた大掃除作戦の第一日目として
インストールがこの倉庫をえらんだらしい。
「あ、マユカ、そっちの奥のほうは足場がわるいですから気をつけてく
ださい」
と、インストールがマユカに注意する。
「わかってるわよ」
つみかさなって階段のようになってしまったダンボール箱を上りなが
らマユカが答えた。
先先代、つまりマユカのおじい様が発明した最初の家庭用ロボットの
インストールは、その発明者であるおじい様の名から命名された。
いちおう社長でもあったおじい様の発明のおかげで、会社は一気に世
界でも有数の大会社なってしまった。今ではインストール10号まで出
ているが、マユカの家でつかっているのはおじい様が造った初代のもの
だ。
造られてから50年以上たっているのに、初代のインストールはちゃ
んと動いている。おじい様も大変なものを造ったもんね、とマユカは思
う。そういえばこの前にインストールが「マユカのおじい様だけでなく
他にも世の中に知られている方々が、たくさん血族におられますよ」な
どと言っていたような気がする。
自分はそんな血をひいているわけだ。たしかに父もうまく会社の経営
をしている(みたい)。もっともそのおかげで一緒にいる時間がほとん
どないが・・・・・・。
インストール家は代々、有名な人を世の中に出しているようだ。
「じゃぁ、わたしは何でいつも学年ビリなのよ」
「何かいいましたか、マユカ?」
「何でもない、ひとり言よ。・・・・・・・・・・・わっ!」
とつぜん世界が一回転したとおもったら、足元の箱がくずれてマユカ
は一緒にごろごろとダンボールの階段からころげ落ちていた。
「だ、だいじょうぶですか、マユカ!?」
「・・だ、だいじない・・・・・・」
「よかった。大丈夫のようですね。起き上がれますか?」
「大丈夫じゃないって言っているでしょ」
と、言いながらも頭を打ったのか、後頭部のあたりをさすりながらな
んとか一人で起き上がった。
「もう、いきなりダンボールが崩れたからビックリしちゃった」
「だからさっき注意したのです。それをあなたが・・・・・・」
「今のは不可抗力よ。あんなの注意してもしなくても同じよ。それより
わかってたんだったらインストールがちゃんと助けてくれなきゃ」
インストールは眉をしかめてきっぱり答える。
「いえ、いつも助けてばかりではマユカが成長しません」
「いつ助けてもらったのよ?」
「それはしょっちゅうです。この前の課題もわたしがいなければマユカ
はなにもできなかったに違いありません。小学校のときも夏休みの自由
研究をいつも手伝っていましたし、屋根のうえに上って降りられなくな
ったこともありました」
「うっ・・・・!」
「そうです。これを機会にわたしが助けるのをやめましょう。いつまで
もわたしにおんぶにだっこではお父上に申し訳がたちません。マユカの
お父上は、もう10才のときからわたしの手をわずわらせることはあり
ませんでした」
インストールのマシンガンのようなトークで、マユカはなにも答える
ことができなかった。インストールはマユカだけでなく父の教育もおこ
なっていたし、おじい様の補佐役もしていたのだ。ある意味で父もイン
ストールにはかなわないといえる。
「もうわかったわよ。あいてっ!」
マユカの頭になにか硬いものがあたった。おそらく自分がダンボール
から転げ落ちたときに、時間差で落ちてきたものだ。いったい何だろう
と自分の頭に降ってきたものを拾い上げる。
「なんか綺麗な箱なんだけど、インストール知らない?」
箱は曲がりくねった彫刻がほってあったり、宝石(おそらく本物の)
があちらこちらに付けられていて、ちょっと見たことがないような代物
だった。しかしそれでも綺麗なことにはかわりはない。
「う〜ん、見覚えがあります。かなりまえの記録ですからちょっと待っ
てください。今わたしのデータを読み取ってますから・・・・カチ・・・カチ・・・カチ
・・カチカチカチ・・・・・わかりましたよ!これはすごいものです、マユカ!!」
「えっ?なにが?」
ふだん全くといっていいほどうろたえたことがないインストールが、
いきなり大声を出したので、マユカは驚いてあとずさってしまった。
「あ、すいません」
「いいのよ別に、インストールもたまには驚くことがあるだろうし」
「ええ、これには驚かされました。なんとこれは旦那様の遺品のひとつ
ですよ!」
インストールは亡くなったマユカの祖父にしか「旦那様」と呼ばない
。マユカの父にさえ、この間まで「ぼっちゃま」と呼んでいたのだ。
「おじい様の遺品?そんなのたくさんあるじゃない。いまさら一つ増え
たところで誰も驚かないわよ」
「そうではありません。ただの遺品ではないのです。これはそう、中に
何かすごいものがあるのです!!」
「・・・は?・・・なにそれ・・・・・・・・・・・?」
『何かすごいもの』・・・・こんな言葉がインストールの口から出てくる
などマユカには想像もできなかったが、今インストールがその言葉を口
にした。
そのことに戸惑いを隠せずにいると
「しかたありません。そのようにわたしのデータにはインプットされて
いるのです。とにかく『何かすごいもの』がしまってあると旦那が教え
てくれています」
「そんなことを何でいままで忘れてたのよ?」
ごくごく自然な質問をした。
「わたしはロボットです。忘れることなどありません。ただ旦那様がわ
たしのチップをいじって、一時的にデータを消去していたのです」
「ふ〜ん、けどこの箱開かないわよ」
「もちろん鍵がかかっています」
「けど番号とか鍵穴がないんだけど・・・・・・・」
とマユカが箱を持ち上げて観察しながら言った。箱の裏側にも、もち
ろん横にも鍵らしいものはなく、それどころか箱として開けるためのふ
たさえどこにあるのかわからなかった。
「その話ほんとなの?」
ちょっとばかり信じられないような顔をして聞くと、インストールが
怒ったように言い返してきた。
「ほんとうです。鍵は特種なものなので見えないだけです。さぁ、マユ
カ、さっそくこれを開けるためにがんばりましょう。わたしの残ってい
るデータによると、旦那様がえられなかったものをささげれば開くそう
です」
「え?掃除は?」
もしかしてという期待を膨らませてマユカが聞くと、インストールは
ため息をついて残念そうに言った。
「しかたがありません。また今度にしましょう」
「ヤッター!!」