#3824/5495 長編
★タイトル (RAD ) 97/ 4/ 3 23:46 (137)
【OBORO】 =第1幕・花鳥風月=(12) 悠歩
★内容
「そうそう、さっき大野さんは『この子たちに何をした』って、訊いたよね。せっ
かくだから教えてあげるよ」
そう言って、田邊は床に横たわる香奈の元へ歩み寄った。
「さあ、大野さん、こっちを見て」
田邊に言われると、意志とは無関係に佳美の首は、そちらに向いてしまった。
「こういう事をしたのさ」
にた、と笑い、田邊は右手を香奈の性器に深々と差し込んだ。
自由にならない身ではあっても、香奈の顔に苦痛の色が現れるのが、ありありと
見て取れる。
「この子たちはね、特別に排卵の周期を早めているのさ。一回のセックスで、より
確実に妊娠するようにね」
そして性器から抜き取った田邊の手に、何かが握られていた。
田邊は佳美の前に来ると、拳を開いて中の物を見せた。
小さな、魚のような生き物………それが何であるのか、佳美にはすぐ分かった。
そしておぞましさのあまり、失禁してしまった。
「ちっ、だらしない女だ。ベッドを汚しやがって」
舌を打つ田邊。
「まあ、いい。今回だけ許してやる。次は殺しちゃうからね………釘崎くんみたい
に」
「あああ………」
「話の続きだ………ぼくはね、子宮を傷つけず、中の物を取り出せるんだ。こんな
ふうにね。この胎児は、ぼくの遺伝子を受け継いでいる。ぼくと同じ力を宿してい
るんだ。
これが、どういう事か、大野さんには分かるかな?」
佳美は力無く、僅かに首を横に振るしか出来なかった。
尋常ではない、田邊の話は続いた。
「つまりだ、こいつを取り込めば、ぼくの力は更に増すんだよ。こうしてね」
手にした胎児を、田邊は口の中へ放り込んだ。そして、ごくりと飲み下してしま
う。
「ふふふ、すごいだろ。こうして、ぼくは無敵の完全体になるんだ。無敵だよ、無
敵。
核の炎だって、ぼくを殺す事は出来ないのさ。
そして君は、こいつらと同じように、ぼくを強くするための子を作る道具になる。
光栄だろう?」
急速に体温を奪いながら冷えていく、小便で濡れた下着に田邊の手が掛けられた。
「助けて………助けてくだ……さい」
あらがう術のない佳美は、ただ泣きながら懇願するしかない。
ふと、田邊の手が止まった。
「いいことを思いついた、大野さんって『セーラーファイターΣ』のファイヤー・
ファイターに似てるよね」
田邊がベッドから離れて行った。
助かるのか………佳美の僅かな希望は、すぐに打ち砕かれた。
どこからか、田邊はセーラー服を模した奇妙な服を持って来た。
それをベッドの佳美に投げてよこした。
「それを着るんだ。濡れたパンツは、脱いでいい。一度でいいから、セーラーファ
イターのキャラクターとセックスしてみたかったんだ」
のろのろと立ち上がり、佳美は命じられるまま、服を着替えた。もちろん、自分
の意志ではなく。
「いい………いいよ、最高だ」
着替え終えた佳美を見つめ、田邊は歓喜の声を上げた。
「ははは、ファイヤー・ファイターがぼくの前に………ぼくと、セックスするため
に………はははははっ!」
佳美は脚を掴まれ、ベッドの上に倒される。
「はははは、ノーパンだ………ファイヤーファイターが、ノーパンだよ」
下卑た笑いが響き渡る。
前戯は無い。
いきなり佳美の中に、田邊のペニスが入り込んで来た。
薄い壁が、最後の弱々しい抵抗をした。
「おお!」
壁を突き破った、田邊が奇妙な声を発した。
「はははは、処女か………意外だね。大野さんって、もっと男遊びしてるのかと思っ
たよ。はははは、最高だよ」
破瓜の痛みと、濡れていない中で動かれる痛みとが、佳美を襲う。
しかし数回動いただけで、その行為は終了した。
ぶるっと震えたかと思うと、田邊は佳美の中で精を放った。
「良かったよ、大野さん」
その言葉は屈辱にしか聞こえない。
が、もうどうでもいいように思えた。
身体の自由が利くようになったら、すぐにでも命を断ちたいと思った。
「自殺を考えてるね? でも、そうは行かないよ。これから大野さんは、ぼくが命
じたようにしか動くことが出来ないんだ。まず、これを綺麗にしてもらおうかな」
精液と破瓜の血が織り混ざり、ピンク色の液にまみれたペニスが、佳美の前に突
き出された。
「OKだよ、優一郎のやつ、ぐすっりと眠ってる。真月が釣りに誘ったのが、よかっ
たんだろうね」
声をひそめて、美鳥が入ってきた。
「真月の方は?」
ベッドの横に正座した麗花が聞き返す。
「ああ、あの子もぐっすりだよ」
「そう、音風、身体はだいじょうぶ?」
「うん、私は平気………でも」
ベッドの上の音風は、心配そうに麗花を見つめていた。
「美鳥お姉さんに訊いたけど、麗花お姉さん、昨日も発作を起こしたんでしょ。無
理をしない方が………」
「心配ないわ」
自分の身を気遣ってくれる妹へ、麗花は優しく微笑み掛けた。
「それにね、急がなければならないの。異形の気配を読める、音風には分かるでしょ
う。覚醒する者が、活発になっていることは」
「そのことだけど………」
音風は、悲しそうに俯く。
「どうしたの?」
「この子、気にしてるんだよ。自分がもっと早くに気配を読めれば、そいつが異形
になるのを止められるんじゃないかって」
「そうなの? 音風」
「………うん。私にもっと力があれば………傷つく人が減らせるかも知れないのに
………」
「優しいのね、音風は」
麗花は妹を、強く胸に抱きしめた。
「でもね、一度目覚めた異形の力を、止めることは出来ないの。だから、異形となっ
てしまった人を少しでも早くみつけて、他の人を傷つける前に安らかにしてあげる
事が、唯一の方法なの」
「うん、分かってる」
「それに、いつ完全体が現れるか分からない………いえ、これだけ異形が覚醒して
いるのは、既に誕生している完全体のせいかも知れないわ。もう、私たちには時間
がない。早く(日龍)の完全体を、ね」
「うん」
「それじゃ、お願い」
促され、音風はベッドの上で祈るように手を合わせ、瞑想を始める。
麗花は音風の肩に、そっと手を乗せた。
美鳥も姉に倣い、音風の肩に手を置く。
静かな時間が過ぎていく。
聞こえるのは、虫の音と、時折吹く風がならす風鈴の音だけだった。
やがて、三人の身体が淡い光に包まれた。
「見えた」
音風が口を開いた。
「覚醒が始まってる………時間がないわ」
「行ける?」
「三人は初めてだけど………たぶん………できる」
「じゃ、頼むよ、音風」
「うん、美鳥お姉さんも、気を付けて」
「私は心配ないさ」
「行きます」
一瞬、三人を包む光が増した。
そして光が完全に消えたとき、そこに居たのは音風ただ一人だった。
肩で息をする音風は、そのままベッドの上に倒れ込んだ。
程なくして、深い眠りに落ちて行った。
ちりりん………
風鈴が一つ、音を立てた。
〔続く〕