AWC 雪原のワルキューレ28


        
#3581/5495 長編
★タイトル (BYB     )  96/12/13  20: 6  ( 75)
雪原のワルキューレ28
★内容
よう、神の造った岩石人間よ」
  ロキは頷く。傍らに控える、魔族の男に声をかけた。
「いこうか、この宮殿の主が眠る場所へ」

「ブラックソウル様、お待ち下さい」
  影のように、一行の最高尾に従っていた黒衣の魔導師ドルーズが、口を開く。先頭の

ブラックソウルが振り向く。
「どうされた、ドルーズ殿」
「魔族の魔導師が、動き始めました。ユグドラシルの枝から造った木刀だけでは、対抗

できない相手が来ます」
「ほう、」ブラックソウルは、黒曜石のような瞳を、キラキラと輝かす。「どうします

かね、ドルーズ殿」
「先に進んで下さい、ブラックソウル殿。ここは、私がくい止めます」
  ブラックソウルは不機嫌そうに、眉間にしわをよせる。
「しかし、」
「この先は、クリスがいれば十分です。封印は彼女の手で、破壊させて下さい。私の役

目はここで、魔族の魔導師と戦うことです」
  ブラックソウルは、ドルーズを見つめ、そしてクリスを見る。クリスはゆっくり頷い

た。ブラックソウルは、ドルーズに向き直る。
「では、お任せします。帰りにもう一度、ここで合流しましょう。アニムス!」ブラッ

クソウルは、火焔の入れ墨の剣士の一人に、声をかける。
「ここに残ってドルーズ殿を守れ」
「不要です」ドルーズは、きっばりと言った。
「しかし、」
「魔族の魔導師にしても、誇りがあるでしょう。人間の魔導師を殺すのに、剣を使いま

すまい」
  ブラックソウルは、多少苛立たしげにドルーズを見る。黒衣に包まれた美貌は、闇を

照らす朧月のように、薄く輝いているようだ。
  突然、ブラックソウルは笑みを見せた。
「判りました。では、のち程」
  ブラックソウル達は、そのまま立ち去った。ドルーズは冥界に佇む死神のように、た

だ一人その場に立ち尽くす。
  そこは、長い渡り廊下のような場所である。通路は、馬車がすれ違うことができそう

な程の幅があり、天井はとても高くアーチを描いていた。
  所々に光石の照明はあるが、薄暗く、天井から差し込む蒼ざめた光線が、光の柱を造

っている。ドルーズはその静寂が支配する廊下で、ゆっくりと振り向いた。
  彼らが通り過ぎてきた道、そこに大理石のように白い僧衣に身を包んだ、魔族の男が

姿を現す。闇色の肌は、秘められた凶暴なまでに激烈な、生命力により黒い光を発して

いるようだ。
  瘴気が風のように、駆け抜ける。その魔族の男は、恐怖と残酷さを身に纏っていた。

近づく者をね狂死させかねない、邪悪な黒いオーラを漂わせている。
  夜明けの太陽を思わす、黄金の髪をかき揚げ、魔族の男はドルーズの前に立ち止まっ

た。
「下等な生き物にしては、立派なものだよ。こんな所まで入り込むとは」
  ドルーズは無言である。他界に通ずる穴のような黒い瞳で、魔族を見つめていた。
「名乗っておこう。私は、エリス。事実上、この宮殿の支配者だよ」
「私は、破戒魔導師ドルーズ。今はライゴールのジゼルに従っている」
「ふむ。始めようか、ドルーズ。三千年前には、夢にも思わなかったよ。再び戦うこと

の喜びを味あわせてくれるのが、家畜の魔導師とはね」
  言い終えると、エリスは声にならぬ叫びを放った。それはほとんど物理的な力を持つ

、精神波動である。黒い津波のような不可視の力が、ドルーズを飲み込む。  波涛が崩

れ落ちるように、精神波が通り抜けた後に、エリスは立ち上がった影のごとく、佇んで

いた。その表情には、なんの変化も無い。ただ、冴えわたる美貌が闇の中に浮かぶ月の

ように、輝いて見える。





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