AWC 雪原のワルキューレ15     つきかげ


        
#3568/5495 長編
★タイトル (BYB     )  96/12/13  19:47  ( 76)
雪原のワルキューレ15     つきかげ
★内容
た。
「記憶を失っている、おまえが知らないのは、無理もないか。かつて魔族はこの大陸す

べてを支配していた。初代エリウス・アレクサンドラ・アルクスル大王が魔族の王と約

定を結び、中原を人間が支配すると決まった時、魔族達は、ほうぼうへ散らばった」
  ロキは遠い目をして、言葉を続けた。
「魔族の大半は南西へ行き、アルケミアを建国した。一部の魔族は東や北へ向かった。

北へ向かった魔族、クレプスキュール族はここ、ノースブレイド山の地下にナイトフレ

イム宮殿を築き、住処とした。今は外界との接触を絶ち、夢の中で暮らしているようだ

が」
  ロキは肩を竦め、フレヤを見る。
「昔とはいえ、たかが、三千年ほど前のことだよ。ナイトフレイム宮殿が築かれたのは

。まぁ、そのころおまえはもう、記憶を封印し眠りについていたのだろうがな」
  フレヤは首を振る。
「思い出せないな、何も。それにしても脆弱な人間に、魔族が中原の支配を譲るとは、

奇妙なことがあったものだ」
「いずれ思いださせてやるよ。今は、クレプスキュールの神官に会うのが先だ」  ロキ

は石柱の円環の中心へと、入り込む。そこでしゃがむと、地面のどこかを押した。
  地の底で、何かが動く。そして、円環の中心がゆっくりと、地面の中へ沈んでいった

。その後に現れたのは、暗い地下への入り口である。
「行くぞ、フレヤ」
  漆黒のマントを靡かせ、ロキは闇に溶け込むように、地下へ下って行く。フレヤはそ

の後に続き、純白の姿を闇へ沈めていった。

  地下へ向かう階段は螺旋状に捩れながら、下へ下へと続いている。まるで古代の王の

墳墓の中のように、空気は淀み、退廃した闇がすべてを支配していた。
  目を覆われたような闇の中を、黒衣のロキは躊躇うこともなく、下ってゆく。あたか

も巨大な獣の胎内奥深く、入り込んでゆくようだ。頭上に、大きな重量を感じる。
「深いな」フレヤの言葉に、ロキは軽く応えた。
「なに、もうすぐだ」
  フレヤは地下へ進につれ、空気の流れを感じ始めた。確かにロキの言うとおり、どこ

かへ出ることになるらしい。
  果てしなく続くかと思われた螺旋階段は、唐突に終着点を迎えた。最下部には、真っ

直ぐなトンネルが開けている。どこからか微かな光が入りこんでおり、大聖堂の内部を

思わせる、壮大なトンネルを見ることができた。
  フレヤの純白の姿は薄闇の中で、輝いているかのようだ。フレヤは、冥界に降りた大

天使のような姿で、トンネルの中を歩む。地の底から霞が舞い上がるように、埃がたつ

。闇にとけ込んだ黒い影のようなロキが、フレヤに声をかける。
「こっちだ。フレヤ」
  トンネルの床は微かに傾斜しており、上方へ向かっている。先に進むにつれ、傾斜は

しだいに急になり、トンネルは狭まっていった。光はトンネルの先から、来るらしい。

  ロキはその光に向かって、狭まってゆく道を進んだ。やがてトンネルがフレヤの背丈

ぐらいまで狭まった時、二人は群青の空の下へ出た。
  頭上には、気の遠くなるような深い青の空が、弧を描いている。天上世界のように、

蒼ざめた清浄な光がそこから地上へと、降り注いでいた。青い空は地上に近づくにつれ

、深みが薄らいでゆき、地上付近では南海の海の水のような、透明感のある青に変わっ

ている。
「フレヤ、あれがナイトフレイム宮殿だ」
  冥界の案内者のような、ロキの、黒衣に包まれた左手の指し示す先は、この地底世界

の中心部であった。その、群青の空の下の、大地の中心には黒い巨大な建造物が、聳え

ている。
  その建物は、地上のいかなる建物とも似ていない。その姿は、あたかも漆黒の火焔




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