#3349/5495 長編
★タイトル (ZJN ) 96/ 8/ 4 16: 7 ( 79)
「ひとりぼっちの死神」@・・・奇蹟 龍
★内容
ひとりぼっちの死神
奇蹟 龍
第一章 人生最後の日
「夢を見ているのだろうか、それとも現実か・・・?」
車の中で血だらけになりながら口も開かないのに何かしゃべっているような気がす
る。
「目の前の物が掠れて見える。痛くはない。何も感じない。体も動かない。」
第二章 記憶
机に向かい自分の自伝なんかを残そうなんて思った。なぜそう思ったのか、私には
分からないけど何か書きたくなったのだ。きっと妻が妊娠をしたからだろう。
何処から手をつけていいものか、いざ机の前に座ると何も浮かんでこない。まぁそ
んなもんだ。
そうだ中学の頃から書こう。
私は自分で言うのも何だが、ガキ大将的存在でみんなから一目置かれていた事をお
ぼえている。クラスが5クラスあったが私の名前を知らないものは誰もいなかった。
だが集団で行動するのが嫌いで、いつも一匹狼だった。
もともとうちの親父が元極道で、お袋の兄貴が一家を構えてしのぎを削っていた。
ヤクザという事だ。私もその頃から悪かったせいか、ちょくちょく遊びにいっていた
。
「お前中学を出たら組にこい」 行くたんびに組長に言われていた。もちろん行く
つもりなどなかった。
ところがそれが行く羽目になる問題が起こったのだった。
中学二年の時、授業中に・・・確かあれは数学だったかな? 机の上に立ち散々騒
いだあげく、みんなを困らせていた時、その出来事は起こった。
急に何かに刺されたかのように胃が痛くなり、意識が遠のいてゆき、まるで自分が
砂で作られた人形のようにゆっくりと机から真っ逆さまに崩れ落ちた。その後クラス
がどうなったか、みんながどうさわいでたのかなんて覚えてもいない。
私が気がつくとそこは病院の病室のベットの上だった。目の前には私を診断しただ
ろうと思われる医師と看護婦、右を見ると私の親父とお袋の姿が見えた。どのくらい
気を失ってたのかをお袋に尋ねると、4時間ぐらいだったとの返事が返ってきた。す
ると医師が私に近づいてきて、
「辛かったでしょう。また大変だけど病院を移って1週間ぐらい検査をするよ。お
父さんとお母さんには今了解を取ったから。」 医師は満面の笑みを浮かべてそう言
った。私には何が何だか分からず、ただ胃がとても痛かったのだけは覚えている。
車に揺られること約2時間ぐらい。東京の大きな病院に着き、すぐICUという部
屋に連れて行かれた。私はただの腹痛だとその時は思っていた。
なんだかんだ1週間があっという間にたち、いろいろ検査をした結果が出たらしい
。個室の病室には親父とお袋、髭を生やして偉そうな医師がいた。何を話してるかは
分からないが、私に聞こえないくらいの小さな声で、深刻そうな話をしているように
見えた。
するとお袋が急に泣き出した。その声を聞いた私は親父の方に目を向けた。親父は
ただ頷いているだけだった。
医師が一礼をして部屋を出ていった。しばらくお袋は泣きやまなかった。ベットで
横になっている私は、窓の外の空を眺めながらあっけらかんとしていた。親父がお袋
の肩を抱いて私の前にきたのは、それから5分位してからだろうか。二人とも鋭い目
つきの中に優しさを感じる眼をしながら私を見つめていた。親父が語り始めた。
「誠、今から話すことを真剣に聞けよ。お前なりにショックかもしれんがな。」
「実は今先生からお前が癌だって言うことを聞いた。もう長くないらしい。手術も
出来ないらしい。このまま病院に残るかそれとも、あと少しの人生を外で過ごすかは
お前の自由だ。」
「それから、お前は本当は俺たちの子じゃない。お父さんの兄貴分だった人の子供
なんだ。俺が昔やくざだったことは知ってるな。お父さんの兄貴が死ぬ間際に俺の子
を頼むと言われて、それでお前を引き取ったんだ。もちろん兄ちゃんたちもこの話は
知らない。けどお父さんたちはお前をわけへだてなく育てたつもりだ。いきなり言わ
れてもぴんとこないだろうが、お前が長く生きられない以上、隠しとおすわけにはい
かないと思ってな。」
「もう一つ、お前には許嫁がいてな、その子と結婚が決まってる。お前の本当の親
父が最後に残した言葉、いや遺言ていえばいいか。お前とその子を結婚させてくれっ
て事だったんだ。その子とはあとでお前に会わせるから。こんな事情じゃ仕方ない・
・・。」
めったに口をきかない昔堅気の親父が、機関銃のように俺に話した長い長い物語の
ような話だった。
この続きはまた次回・・・
ミラクルプロダクション(作詞・小説・シナリオ・演出・企画・etc)
代表 奇蹟 龍