#3076/5495 長編
★タイトル (SEF ) 95/ 5/10 23:19 ( 47)
ボーイ・ミーツ……【終】 /えびす
★内容
「でも、そんなばかな!」
爆弾でも仕掛けておいたのか、と誠は思ったが、まさかそんなむちゃくち
ゃなことはしないだろう、と考え直した。
「行ってみれば分かる。種明かししてやるから」
呆然としている誠の手を引っ張って、マコは木のそばまで行った。既に何
人か、ひとが集まってきていたが、警戒して近づかないようだった。マコは
堂々と木に近づいた。
「ほら」
マコは言って地面を指さした。子供の頭ぐらいの何かが木の根っこのそば
に小さなクレーターをつくっていた。
「あっ、隕石?」
「そう」
「でもどうしてこの時間に……あっ!」
どうして、この時間に隕石が落ちることが分かったのですか、と言いかけ
て途中で気づいた。頭に浮かんだのは、さっき観た映画の一場面だった。映
画の中の落雷は、隕石に変わっていた。
誠のそばに正面からマコが近づいた。目と目が合った。同じ目をしていた。
「そういうわけだ。誠だから、マコだ」
誠の顔の前三〇センチの距離でマコが言った。
「信じられない」
「インパクトあるだろ? でも、それだけじゃ足りないんだ」
すっ、とマコが動いた。マコのくちびるが誠のくちびるにそっと重ねられ
た。見物人に見られるまましばらくそうしていた。
「初めてだろ」
くちびるをはなしたマコが言った。
しばらく誠は口がきけなかった。どうして女なのか、会った時間と今の時
間がどうしてずれているのか、今後、自分の人生がどうすすんでこうなるの
か、いくつもの疑問が頭の中をぐるぐるかけめぐった。マコは、誠が今それ
を考えているということを知っていた。言葉は不要だった。
「時期が来たら分かる。とりあえず、一生懸命勉強して、理系の大学で化学
をやれ。突然、化学式が浮かぶんだ。メンタルな部分に作用する薬物の」
マコはくるりと向こうを向いて歩きだした。
「待って!」
誠が言った。聞きたいことだらけだった。マコは振り向いて、誠に聞こえ
るように少し大きな声で言った。
「全部知っちゃったら、つまんないだろ」とびきりの笑顔をマコは浮かべた。
「この世の中って、お前が思ってるよりもっと楽しいものなんだぜ」
マコはまたゆっくりと歩きだした。誠はそのまま立ち尽くしていた。自殺
のことは完全に頭から飛び去っていた。マコの姿が人にまぎれて見えなくな
った。誠の顔に笑顔が浮かんだ。わくわくしてきた。
星空を見上げた誠は、振り向いてゆっくりと歩きだす。
【おしまい】
1995年5月1日-1995年5月10日