AWC 掲示板(BBS)最高傑作集35


        
#2990/3137 空中分解2
★タイトル (KCF     )  93/ 3/14  20:18  (198)
掲示板(BBS)最高傑作集35
★内容

(「掲示板(BBS)最高傑作集34からの続き)


 彼女は私が「え!」と言うのも聞かず、カウンターに行ってしまい、コーヒー
を買って戻ってきました。
 私はむっとして、
「『飲んでね』って言われたって、ミルクを2パックも飲みたくねーよ!」と、
私に飲みもしないミルクを買わせた彼女に文句を言ってやりました。
 彼女は、「ごめんなさい。さっきまでは大丈夫だったんだけれど、急におなか
が痛くなっちゃったの。お願ーい。飲んでー。」と言ってきました。
 私は完全に頭にきて、
「ふざけんな、ばかやろー! 俺だって、今朝、下痢気味だったから何も食べて
こなかったんだ! おまえがミルク2つ飲みてーって言ったから注文したんだぞ!」
と周囲を気にせず怒鳴ってしまいました。
 私たちの周りに座っていた人達は、私の大声にびっくりしてシーンと静かにな
ってしまいました。
 すると、彼女は泣きそうな声でこう言いました。
「ごめんなさい。でも私、どうしても今はミルク飲めないの。でも捨てるのはも
ったいないし・・・。そうだわ。もしあなたがこのミルク飲んでくれたら、今晩
私の体のミルク飲ましてあげる。」
 彼女は見た目はまじめそうですが、かなりユーモアを持った女の子です。
 すぐに彼女は、「嘘、冗談よ。」と言って前言を取り消したのですが、その時
にはすでに私はミルク2パックを完全に飲み干しており、ストローで吸いまくっ
たためパックの内側はカラッカラに乾燥し、そこにはアフリカの大地の干ばつを
思い起こさせる亀裂すら入っていました。

 しばらくすると、急に全身から冷や汗が出て、寒気がしてきました。
 下痢気味だというのに冷たいミルクを急に2パックも飲んだため腹が痛くなっ
てしまったのです。
 私は「ウォー!」というアフリカの大地を駆け巡る野獣の声を発して席を立ち
ました。いきなりほとんど漏れそうな状態になってしまったので、私は人目を気
にすることなく、両手で前後から下腹部を強く押さえました。そして、顔をしか
めながらながら一歩一歩ゆっくりとトイレに向かったのです。
 途中、排泄の欲求がピークを迎えるたびに立ち止まり、体をよじりながら、
「グゥーオー! ギィヤー!」という雄叫びを上げて我慢したため、店内にいた
お客さんの注目の的になってしまいました。

 そのお店にはトイレが一つしかなく、男女兼用のものでした。そのたった一つ
のトイレには、そのとき無情にも人が入っており、豪快な音を出しながら用を足
しているのが聞こえました。
 その直後、信じられないほど臭いにおいがトイレの中からにおってきました。
私は、失礼でしたが、あまりの臭さに思わず、「くっせー!」とおもいっきり叫
んでしまいました。それと同時に私は下腹部を押さえていた両手を顔に移動させ、
鼻をつまみました。
 鼻が少し濡れてしまいました。
 私の下腹部はすでにちょびっと漏れていたようです。
 それはそうと下腹部から手を離してしまったものだから、体内から出たくて仕
方がなかったのに両手で押さえつけられていたものは、ここぞとばかりに反撃を
開始してきました。
 私は「やばい!」と思い、鼻をつまんでいた両手をすぐさま下腹部に戻しまし
た。するとまた、とんでもなく臭いにおいが私の鼻を襲ってきました。
 仕方がないので再び両手を下腹部から顔に移動させ、鼻をつまみました。する
とまた、下腹部が漏れそうになり、両手を再び下に戻しました。
 このようにして、片手で鼻を、もう一方の手で下腹部を押さえればいいと気付
くまでの数分間、私は両手を数十回と上下させていたのです。

 しばらくすると、水を流す音が聞こえ、ドアが開きました。異常に臭いにおい
の用を足していたのは外人でした。
 その外人は、私が右手で鼻をつまみ、左手で下腹部を押さえているのを見て、
一瞬、「こいつはいったい何をやっているのだ?」という不機嫌な表情をしまし
た。しかし、その外人はすぐに、私が漏れそうで、トイレのにおいが臭くてそん
な格好をしてたということがわかったようです。その外人はにおいの責任を感じ
たのか、頭をかきながら申し訳なさそうに自分の席へ行ってしまいました。

 私は即座にトイレに入り、便器に座るやいなや下腹部のバルブを解放しました。
 ものすごい勢いでした。
 まるで、パチンコ台でいきなり「7」が3つ並んでしまったときのようでした。
パチンコなら3000発も出せば打ち止めになるのでしょうが、そのときの私の
下腹部は、パチンコ店の新装開店記念のため打ち止めなしの出血大サービスのよ
うでした。

 しばらくすると、トイレの外では人が並んでしまったようで、声が聞こえてき
ました。
「何、このトイレ。くさーい。」
女性の容赦ない声でした。
 私は、「まずい!」と感じ、再び冷や汗がだらだらと出てきました。
 ミルクを2パック一気に飲んだ直後に出てきた冷や汗は、真夏に歩道を歩いて
いるときにホースで水撒きをしていたラーメン屋のおばさんに水をひっかけられ
たくらいの冷たさでしたが、今回の冷や汗は、北海道に接岸する直前の流氷の上
で白熊に犯されそうになり、「海に突き落とされるよりはましだ。」と思い一度
は体を許してはみたが、あまりの痛さに自分から海に飛び込んでしまったという、
そんな冷たさでした。

 一つしかないトイレをあまり長く使用し続けると、外にいる女の人の怒りが爆
発すると思い、私は区切りのいいところで切り上げることにしました。
 ところが、水を流してさあトイレから出ようとすると、また腹が痛くなり、再
び便器に腰掛けてしまうのでした。
 こんなことだから、待っている女性はやがて、耳が痛くなるくらいの大きな声
で皮肉を言い始めました。
「この店のトイレはみんなのものなのに。今トイレにいる人は自宅のトイレと勘
違いしているのかしら。」
 もう限界です。これ以上長くトイレにいると、外にいる女性がドアを突き破っ
てトイレに乱入しかねません。そうなったら、私と「椅子取りゲーム」、いや
「便器取りゲーム」を始めてしまうでしょう。
 音楽が鳴り始めると、私とその女性は二人で便器の周りを歩き始めます。二人
ともいつ音楽が止まるかびくびくしながらも、便器を虎視眈々と狙いながら歩き
続けます。やがて急に音楽が止まり、競技者は便器の上に突進するのですが、ほ
とんどの場合は音楽が止まった時の二人の位置関係で勝負が決まります。
 もし、彼女が便器の正面、私が便器の後ろを歩いているときに音楽が止まって
しまったら彼女の楽勝です。私はといえば、一応彼女より先に座ろうと便器にダ
ッシュするのですが、便器とタンクをつなぐ鉄パイプに膝をおもいっきりぶつけ
てしまいます。その後私は、「勝ったわ。」と満足の表情を浮かべながら心置き
なく用を足している彼女の後ろで、パンツを下ろしたまま、激痛のする膝を両手
で押さえてのたうち回るのです。

 こんなの嫌です。
 そこで私は自分のカバンを開け、バレーボールの選手が膝につけるパット入り
のサポーターを探しました。
 しかし、女友達とハンバーガーを食べに来ている私のカバンの中に、バレーボ
ールで使う膝用サポーターなどあるわけがありません。
 その代わり言ってはなんですが、男が競泳用の水着をはくときその下にはく
「サポーター」がカバンの中にありました。

 私が子供の頃は、「サポーター」とは、手足をけがをしたときに関節を保護す
るためにつけるものだと思っていました。しかし、中学になって競泳用水着を買
ったとき、その下にはくパンツも「サポーター」と呼ばれるのを知り、「けがし
てないのになぜ『サポーター』をはくのか?」と長い間疑問に思っていました。
  やがて高校生になり、英語の時間に「support」が「支える」という意
味であることを習い、その時になりやっと、ぶらぶらと安定しないものを「支え
る」から「サポーター」でいいんだとわかりました。

  「中学、高校時代にはこんなことがあったなあ。」
と私はしばらく昔を懐かしみ、いつの間にかサポーターをはいていました。

 下腹部が安定してシャキッとしたのか、いい考えが浮かんできました。
 トイレットペーパーをまるごと取り付け台からはずして膝に当て、サポーター
で固定するのです。これで鉄パイプに膝をぶつけたとき、痛みが多少は緩和され
るはずです。

 ただ、先ほどお尻を拭かずにサポーターをはいてしまったため、膝に縛るサポ
ーターが茶色がかっているはずです。これでは相手の女性に失礼かもしれません。


 私は結局、世間体を考えてトイレから出ました。
 トイレが空くのを待っていたのは25才くらいのOL風の女性でした。
 彼女はいきなり私に面と向かって「くさーい!」と言って、鼻をつまみました。
トイレにはまだ、さっきの外人が残したにおいが充満しており、私がドアを開け
た瞬間、とんでもないにおいが彼女にふりかかったのです。
 私は、「中にしばらくいれば、慣れるよ。」とアドバイスしようかと思ったの
ですが、あまりにその女性が失礼なので、本当のことを言ってやりました。
「このにおいは俺のじゃない。あそこに座っている外人がやったにおいだ!」
私はこう言いながら、席に座ってハンバーガーを口にしている外人を指さしてや
りました。
 その外人は、私たちが何のことを話しているのかを悟ったらしく、焦ってハン
バーガーを口からボロボロこぼしながら食べていました。
 しかし、その女性は、「人に責任をなすりつけるなんて男らしくないわね。日
本人の男は本当にだらしないわ。少しは外国人紳士の爪のあかを煎じて飲まして
やりたいわ。」と言い、私の言うことをまったく信じてくれません。
 真犯人であるその外人は、食べかけのハンバーガーをテーブルに残したまま、
逃げるようにして店を出て行きました。

 彼女にそこまで言われてしまった私は、自分が無実であることをわかってもら
うため、必死に弁解しました。
「俺はこんな臭いものはしない。これはさっき出て行った外人のにおいだ。」
 しかし、彼女はどうしてもわかってくれず、
「それなら証拠を出しなさいよ。」と言うのです。
 仕方がないので私はもう一ひねり出して、彼女に「におい」の比較を行っても
らうことにしました。
 ところが、トイレ内に充満しているにおいがあまりに強烈なため、そこでは何
のにおいを嗅いでもさっきの外人の残したもののにおいしかしないのです。これ
ではどうしようもありません。

 結局、彼女がたまたま検便の容器をハンドバッグの中に持っていたため、「家
に帰って調べてみる。」と言って彼女はそれを容器に入れて持ち帰って行きまし
た。
 彼女は別れ際に「明日また会いましょう。私が間違っていた場合は、謝ります。」
と言ったのですが、翌日には彼女は現れませんでした。


 ところが先日、彼女と同じ店でばったり会いました。
 彼女の話によると、彼女はあの日持ち帰った検便の容器を電車の網棚の上に置
き忘れてしまったらしいのです。彼女はすぐに新宿駅の「落とし物センター」に
駆け込んだのですが、彼女が置き忘れたものはセンターには届けられていません
でした。そして、センターの係員に「貴重なものは、まず出てきません。」と言
われたので、あきらめていたとのことです。
 しかし、数日後に「あなたの落とし物が出てきましたよ。」という電話連絡が
鉄道会社からあったというのです。検便の容器に自分の名前と電話番号を書いて
おいたからこそ出てきたのです。
(みなさんも、自分の持ち物には必ず名前と電話番号を書いておきましょう)。
 さっそく彼女は「落とし物センター」に取りに行き、検便の容器を開けてみた
のですが、中身はすでにカッチカチに固まっていて、「かりんとう」のようにな
ってしまっており、においを嗅いでも何もにおわなかったそうです。これじゃ持
ち帰っても仕方がないので、彼女は「かりんとう食べますか。」と言って「落と
し物センター」の係員にあげてしまったということです。

 そんなわけで結局、私の容疑を晴らすことはできず、私と彼女のしこりはいま
だに続いています。

○コメント
「『かりんとう』ほどの大きさの入る検便の容器があるわけねーだろ。」という
抗議のメールをいただきました。この人が小学生の頃は、便の一部を便器からス
プーンで取って、小さな検便の容器に入れていたようです。でも、私の小学校で
配られた検便の容器は、スプーンなど使わずに容器の中に直接出せる大きさのも
のでした。

これで終わりです。掲示板(BBS)最高傑作集36をお楽しみに。





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