#2810/3137 空中分解2
★タイトル (AKM ) 93/ 2/ 5 2:25 ( 81)
☆変な女からの電話☆5 ワクロー3
★内容
人を待つ時間というのは、普段よりも長く感じるものです。
定刻20分過ぎ。友人Wは、しきりにこっちを見て『こないみた
いなー』という表情です。来ないのか。ふざけた野郎だ。あ、女だ
から野郎じゃねえか。ふざけた女だ!
★登場!変な電話女★
とかなんとか、心の中で悪態をつぶやいていると、定刻22分過
ぎ。店に入ってきた人がいました。一人です。手に紙袋を持ってい
ます。分厚い手編のセーターを着ています。セーターの柄が真紅と
濃紺の格子縞です。けっこう目立ちます。服装には頓着しないタイ
プのようです。身長は165センチというところか。
店内を素早く見渡します。どきっとします。見つかったらどうす
ればいいんだ。発見されたようです。一人で座っている男は僕と友
人Wしかいません。僕は目印の茶色の鞄を横に置いていましたので、
それを確かめると迷うことなく僕の席までやってきました。
年齢は。。。20代なのか。おそらく、そうだと思います。どん
な声を出すのか。緊張していたら電話と同じ声と話し方だったので
安心しました。
『****さんですか』
そうです。答えると相手はたたみかけてきました。
『やっぱり違っていました。どうもすみませんでした。で、こう
してお会いしたのも何かの縁だと思うんですが、私、いま学校でち
ょっとした調査をしていまして、協力していただきたいんですがよ
ろしいですか。あ、そんなにお手間はおかけしません。ほんの15
分くらいで済みますから。はい簡単です』
あ、あのな。
『えーと、筆記用具をお持ちですか。なければ今おかしします。
あっと、さっきのことろで芯がおれてしまって。えっと、すみませ
ーん。ボールペンでもなんでもいいんですけど、書くもの貸してく
れませんか』
世話しげなやつでした。僕に話しかけつつ、傍らを通過した店員
さんにもう頼みごとをしている。僕は断固として彼女のしゃべりを
阻止しないといけないと思った。
ね、ちょっと。人違いは、それでいいですが、あなたいっつもこ
んな方法で自分の調査の相手を捜しているわけですか?
『気になります?』
なるに、きまってんだろー。彼女の顔を正面からみた。確信に満
ちた顔をしている。これは、はっきりしている。心に前衛的な宗教
を抱いている人の顔である。今まで街でいくらでも見たことがある
ぞ。なんだ。そうだったのか。手の込んだことをしやがって。
鈴木とか、佐々木とか、高橋とか、田中とか、適当にでかい会社
に電話して適当に呼び出して、網にかかったやつをこうして呼び出
して、アンケートから人生論、人生論から入会勧誘、入会から幹部
への道というばら色の未来がひらけてくるてえ寸法だったのか。
★変な電話女は宗教勧誘女だった★
いったん状況を把握したら、あとは僕が手慣れているので楽なも
のだ。
どの戦法を使って対処するか。主導権は僕にある。しかし怒りに
任せて、逆襲をするには、今の僕にはパワーがない。電話の主に対
して、この数日間こだわりを持って運命的なものを感じていただけ
に、失望があまりに大きくて、怒れないのだ。期待してしまった自
分があほだった。情けない。
(以下次回)