#2535/3137 空中分解2
★タイトル (RPG ) 92/12/13 10:51 (107)
お題>雪月花 CAIN
★内容
「いいかい,あまり夜更ししていると,お前を喰いに恐ろしい妖怪がやって来るんだ
よ。特に月の出ている晩はね..。さぁ,もう寝なさい。」
太郎は耳にタコが出来るほど,毎晩毎晩この”教訓”を言われ続けてきた。
まだ7才の太郎にとって,「妖怪」は恐ろしい存在ではあったが,またそれと同時に興
味をひく存在でもあった。
ここは山奥の田舎の寂れた一軒家。空気が澄んでいて,夜になると星がシャンデリア
のように光り輝く。とくに,月は満月でなくても大きく見え,雲がない晩などは恐いぐ
らいに美しかった。だから,この近辺に住んでいる者は,皆月に畏敬の念を抱いてい
る。だから,子供を諭すときは,必ず「月」を使うのが習性となっている。
「お月様に連れて行かれるよ」だとか,「月の晩には妖怪が現れるから,夜遊びをして
はいけないよ」などなど。だが,彼らもまんざらでたらめを言っているわけではないの
だ。それを,今晩太郎は知ることになる。
時計は,とうに12時を回っていた。母親も,父親も太郎の部屋にはいない。
さて,太郎はというと..。今晩こそ,”妖怪”の正体を暴いてやろうと,睡魔と必死
になって戦っていた。ちょうど冬休みに入っており,学校に遅刻する心配もない。問題
はどうやったら妖怪に出会えるか,ということである。不思議なことに,「喰われる」
ことに対する恐怖はまったくなかった。恐怖心よりも,好奇心の方が勝っていたのであ
る。太郎は,布団から抜け出ると,そっと障子に歩み寄り,音をたてないようにして開
けた。すぐ隣が,両親の寝室なので,これだけでも太郎にとっては大冒険なことだっ
た。けれど,まだ関門が終ったわけではない。「雨戸」という強敵が太郎の前に立ちは
だかる。太郎は眠いながらも緊張を感じつつ,出来るだけ音をたてないように,細心の
注意を払いながら,雨戸も開けた。普段なら,きしんだ音を立てる雨戸だが,今日に
限って,うんともいわない。
なんとか2つの関門を突破した太郎を迎えたのは,シャンデリアのように輝く星空
と,それらを支配するかのように浮かんでいる,巨大な月。月から黄金のようなまばゆ
い月光が,広い庭一面に降り注がれている。いつも見る,田舎の景色が,幻想の世界に
変わっている。
太郎は裸足のまま,庭へと降りた。月の光は,太郎を優しく照らしだす。と,一陣の冷
たい風が吹き,太郎は急に恐くなった。家の中へ戻ろうと,きびすを帰すと..。
太郎が,驚いて息を呑む。声をあげることさえ忘れてしまうほどの,驚き。
太郎のすぐ目の前に,美しい少女が立っていた。月の光に照らされた少女の肌は,雪の
ように白かった。 ふいに,少女がフワッと浮いたように見えた。 驚く太郎の間近ま
で少女は寄ってくると,悪戯っぽく微笑してみせた。
(花だ)
太郎はそう思った。動作の1つ1つをとってみても,どれもしなやかで軽やかだ。そう
まるで花びらのように。
「遊びましょう」
その”妖怪”が初めて口を聞いた。太郎は返す言葉もなく,ただ頷く。
30分もしないうちに,太郎と少女は親しくなっていた。
「淋しかったの,誰も遊んでくれる友達がいなくて。」
少女が太郎に言った。
「ずっと,十数年もひとりぼっちで...。でも,みんなあたしを恐がって,友達に
なってくれなかった。」
「じゃあ,俺が友達になってやる」
太郎は真面目に言ったつもりだったが,少女はちょっと寂しそうに笑っただけだ。
「な?そうすればもうひとりぼっちじゃないだろ?」
太郎の無邪気な笑い顔に,少女はしばらく魅入っていた。
静寂。ふくろうの鳴き声だけが響いてくる。
「太郎,一緒に−」
少女が言いかけたときだった。
ふくろうの鳴き声に交じって,なにかお経のような声が聞こえてきた。
線香の,なんともいえない香も漂ってくる。
「太郎!その化物から離れるんだ!」
懐かしいような,父親の声。
太郎がはっと気づくと,家の中から父親と母親が出てきていた。そして,少女を見ると
..!
「うわぁっ」
太郎は尻もちをついたまま,動けなくなってしまった。
さきほどまでの可憐な少女は..。大きな白い耳を,白い尻尾を2つもち,そして口に
は鋭い牙をもつ,妖狐”白狐”と化していた。
「成仏出来ずに,妖魔となりおったか!」
父親が,数珠を片手に妖狐に一喝する。
妖狐は怒りに牙を剥き,両親をねめまわす。
「誰も,助けてはくれなかった!あの時の恐ろしさ,絶望,悲しみ..それがお前達に
解るか? 苦しかった。死にたくはなかった。」
妖狐の目から,鮮血のような涙がこぼれ落ちる。
「あれから,十数年,ずっとひとりでさまよっていた。気づいたら,このような姿..
妖怪といわれるものになっていた。もうもとにはもどれない」
「成仏して,天へとあがれば,元の姿にもどれる。このまま現世に残っていたら..
やがて邪鬼と化してしまうのだぞ。お前のうらみつらみはわかるが,もういい加減成仏
したらどうだ。現世にとどまっていて何になる。極楽浄土へいけば,その苦しみから解
き放たれるのだぞ」
妖狐の表情がふと変わった。
「極楽浄土...」
「そうだ。私なら,お前をそこへ送ってやれる」
妖狐はしばし足元で尻もちをついている太郎を見つめた。
太郎は怯えているのか,歯を噛み合せることさえ出来ないでいる。
「太郎。あたしが恐い?」
そういう妖狐の姿はみるみるうちに少女の姿へと戻って行く。
太郎は首を横に振る。
「..そう,ありがとう」
太郎の父親は,妖狐に目配せすると,再び呪文を唱え始めた。
妖狐の姿が光につつまれ,やがておぼろげになって消えて行く。
妖狐が完全に消えてしまうと,あたりは静寂につつまれた。
約十年ほど前。この村には雪花という可愛らしい女の子がいた。年もようやく10に
なったばかりで,素直で誰からも好かれていた。が,雪花は両親の留守中に,旅人を
装った山賊に襲われ,惨殺されてしまう。村人は,山賊を捕らえたが,山賊は牢の門番
を殺して逃走してしまった。 仕方なく,村人は雪花のために碑をたててやったが,雪
花の霊は静まらなかった。 最初は夜な夜な泣き声が聞こえてくるぐらいだったが,や
がて恐ろしい妖怪を見たという者が現れ始めた。 村人は,雪花が妖怪となってしまっ
たと思い,その妖怪を 雪月花 と呼ぶことにした。 月のような魔力を持つ,花のよ
うに美しく,雪のように白く淡い妖怪,という意味である。
そうして..。太郎の件以来,妖怪を目撃する者もいなくなってしまった。
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初めて書いてみました。細かいところとか,はっきりしていない点もたくさんあります
が,「書くことに意義がある!!」と開き直っていたりします。(^_^;
未熟者ですので,「ここは変だ!」とか「こうした方がいい!!」とかありましたら,
容赦なくがんがんいってやって下さい。m(__)mペコリ
。。
CAIN○゚