AWC ●連載パソ通小説『権力の陰謀』 13.退職


        
#2511/3137 空中分解2
★タイトル (CKG     )  92/12/11  15:55  ( 21)
●連載パソ通小説『権力の陰謀』 13.退職
★内容
 信一への苛めはその後も絶え間なく続き、信一はまるで坂道を転げ落ちるように、次
第に苦境を深めていった。 精神の限界を遥かに越え、理性ではもう抑え切れないとこ
ろまで追い詰められて行った。 信一はもうこれ以上いると病気になるだろうと思った
。 家に帰ってもその極度のストレス状態にじっとしていられない程であった。 思わ
ず柱を何回も叩き「畜生!、畜生!」と大声を発てたりもした。 畳を踵でどんどん叩
いたりもした。 しかし、どうしてもそのとてつもない不満を消し去ることはできなか
った。 信一にはそのようなことを相談できる相手が一人もいなかったのだ。
 そんなある日の朝、信一の兄たち4人が突然家に来て、信一の両肩を抱きかかえるよ
うにして、病院へと無理矢理連れて行ったのだった。 信一は「病気じゃない、病気じ
ゃない」と叫び拒んだが、4人の力には抵抗できなかった。
 その後信一は、しばらく薬を飲み、よく睡眠をとり、理性を取り戻すが、丸2年間の
それを自分にごまかすことは出来なかった。 あれは本当なのに気違い扱いで済まされ
てしまうことに我慢することは出来なかった。 そして、とうとう昭和50年7月31
日付で退職するという文面の「退職願」を若山課長に提出したのだった。 課長からは
何も言われなかったし、引き留められることもなかった。 信一はその時はっきりと、
この苛めが何のためだったのかを知ったのだった。
 信一は覚悟していた。 確かにとてつもない苛めからは開放されるが、また同時に、
自分が新たなる不幸に向かって行くのだと言うことを。 学歴のない信一にとっては、
再就職が極めて困難なことが分かっていたからだ。 だが、今は自分と自分の健康を
守るために旅立たなければならないと思った。 先行きは明るくはなかったが、信一
は希望を捨てなかった。 新しい何かがあるだろうと思った。




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