#2441/3137 空中分解2
★タイトル (WJM ) 92/12/ 6 18:39 (149)
生彩奪回CLUB /けい=iKei★彡)
★内容
「生彩奪回倶楽部」
「中途野郎は黙れ!!おまえ何か最後までやった事あんのかよっ!!」
「うるせえ 畜生っ!!」
このやり取りをただ隣に座り黙って聞いていたおじさんが溜りかねた
様子で口を開いた。
「君達お互いそこまで中傷しあう事はないだろう」
「うるせえ 黙ってろ」
大声でこう言われておじさんも少しむきになった様子だ。
「だいたい君達ここをどこだと思ってるんだ。電車の中だぞ。大声で
喧嘩して占拠するのはよせ」
「占拠? いつ俺達が占拠したんだよ!!」
背の高いいかにも不良という様子の高校生が40も過ぎて頭が少しハ
ゲかかっているおじさんに食ってかかる。
車内はこのやりとり以外の声はどこからも聞こえて来なかった。
満員電車だったのだがその周りの人達は必死に知らないふりをしてい
るように見える。
僕は、ああ黙っていればいいものをと思いこのやり取りを見ていた。
言いきれない寂寥感に悩まされていたのだ。
このバカらを心の内でせせら笑いながらも、興奮の結末になることを
望んでいる自分に気付いた。その瞬間僕の心の正義感が結集して行く
ようだった。
しばらくは耐えていたのだが、おじさんがひどく狼狽しているのをみ
て思わず大声で叫んでしまった。
「バカどもは黙ってろ」
ざわめく車内。その中に幾人かの笑いの顔があった。
僕は声を上げすぎたと後悔した。
すぐに駅についたので僕は慌てて逃げるように降りる。
数歩進んだ所で肩を叩かれた。ビクッと思わず飛び上がりそうになる。
振り返ることが出来ないでいるとなんと晴れ晴れしい声が聞こえてき
た。
「いやあ お見事でしたよ ほんと」
振り返ると高校生不良組だった。しかしその顔はにこやかそのもの。
その後ろにはあのハゲおやじも微笑みながら立っているではないか。
この状況を理解できず僕は困った。
当然その心を察しておじさんが続ける。
「本当あなた見事でしたよ。我々はこういう方を探してたんだよね」
合意を求められた不良組はうんうんとうなずいている。
いや今では姿が不良らしいというだけで顔には笑顔が絶えず浮かんで
おり先に感じた恐ろしいようなイメージはまったく消え去っていた。
「あのお どういう事なんですか?」
「僕たち毎日なんの生彩もなく生きている可愛そうな現代人のために
少しでも興奮できるような事をしているんです」
高校生が言う。
「実は言い出しっぺは私なんですよ。私今42。ふとある時最近何か
楽しい事興奮できることがあっただろうかと考えてみたんですよ。
そしたらね、悲しいかな、この数年なっにも無いことに気付いたん
です。ただやれ会社のためだやれ家族のためだと満員電車にもみく
ちゃにされているだけ。これじゃいかんと思いましてね」
高校生を一べつして続ける。
「この子達には駅前のゲームセンターで暇そうにしていたので捕まえ
たんですよ。それ以来、学生だという事もあってかなりの活躍をみ
せてくれています」
「僕も同じ様な事考えてましたから、すぐに興味を持ったんです。
今ではこれにハマッてますよ。毎日退屈で退屈でしょうがなかった
んです。このままじゃどうにかなっちゃいそうで。
本当岡部さんに深謝してます」
どうやらこのおじさんは岡部というらしい。
驚きと感心が入り乱れていた。
日本にもこういう事を考えることがいるんだな。
興味を持ちだしていたのは確かだった。
「あなたも入って見ませんか?会員はおどろく程いますよ」
「え、そんなに?」
「ええ、一度に全員集まると言うことはさすがになかなかありません
がね。私がいちお会長やらしていただいてます」
会長、ずいぶんと本格的なんだなあ、ただの遊びのレベルを越してい
る。しかし僕の心は弾んでいた。
この寂寥とした心から逃れることが出来るのではないかいや出来る。
「ところで毎日今日のような事をしてるんですか?」
「そうですね、内容は違いますがこういうような事です。」
この心から解放されるので有れば恥も外聞もない。
「ぜひ僕にも入会させて貰えませんか?」
「あ、こちらこそぜひぜひお願いします」
高校生が嬉しそうな顔をみせる。
「でもその前に入会テストと言うものがあるんですよ。なにそう難
しい事じゃない、ただねあそこにある伝言板に文字をかくだけで
いいんです」
おじさんが指を指した方向には確かに緑の伝言板がある。
「きみこ俺はおまえを愛してる どうか戻ってきてくれ 頼む、
こう書くだけでいいんです。簡単な事でしょう?
しかしとんでもなく大きな字で、あの伝言板のスーペース全てを
使ってお願いします。また豪快に」
幾分迷ったが僕は歩き出した。
伝言板の前に立ち先に書かれてあるすべての文字の上から大き
く先の文字を書き出す。
この伝言板は改札口にすぐ隣にあるのでたくさんの人が通るのだ。
カッカッカッとできるだけ大きな音を出すことも忘れなかった。
通行人を楽しませると言う使命があるはずだ。
恥ずかしさは随時僕の心を刺してくる。しかし途中ある一種の
快感とも呼べるかも知れない気持ちがスッと入る。
僕は調子にのってその下に
「毎晩俺は泣いているんだ」と付け足した。
いつしか僕の後ろには人が集まっていた。
それに気付いた時はさすがに恥ずかしかった。
書き終わり、にやにや笑っている人たちに顔を隠すように三人の待つ
場所(駅内の喫茶店で待ち合わせをしていた。ここからは掲示板がよ
く見える)に向かう。
ふと掲示板の方で笑いがおこった。
何があったのかと思い振り返るとなんとせっかく僕が恥ずかしい思い
をして書いた文字をすぐさま駅員が消しにかかってるじゃないか。
それをみて皆が笑っていたのだ。
喫茶店に入ると三人が笑っている。
「いやあ 合格合格。どう楽しかったでしょ?」
「さすがに恥ずかしかったですけどね。でもあの駅員に消されちゃい
ましたよ。あれが一番恥ずかしかったですね」
そう言うと三人は楽しそうに、掲示板を消し終えて立っているその駅
員をみた。
「実は言うとね、あの駅員も会員なんですよ」
その時は一瞬理解できなかった。「え、、」
「いたるところにいますよ」
後ろで怒鳴り声が上がった。「おい、コーヒーの中にゴキブリが入っ
てるとはどういうことだい。もしかして期間中プレゼントというの
はこのことかっ!」
通学帰りらしき学生らが楽しそうに笑っている「ゴキブリだってよ」
「あの男と、それにここの店長もそうです。
こういった類のものの大半は我々の仲間ですよ。
たぶんあなたが今までに見たことのある大半がそうなんじゃないで
しょうか。今やすでに全国的な組織になってます。
毎日同じで退屈している現代人に一時の興奮を与えるためにね」
喫茶店の前を上半身裸のおじさんが歩いている。
電車が駅に止まりドアが開いた瞬間、女に強く手を引かれて男が降り
てきた。いや強制的にだろう。
「なんだよ」こう言って手を振り払おうとしているのだが女は叫んだ。
「この男痴漢なんですっ!」
すかさず駅員が近づいてくる。手を振り払ったその男が必死になって
走り逃げた。「あっ」駅員が思わず声を上げた。次の瞬間慌てて追い
かける。男は走りが早いようでどんどんと差が開いていった。
しかし途中誰かの足につまずいて大きく転ぶ。
駅内は静かな笑いが湧いていた。
END
書き始め考えていた結末とは大きく変わってしまっている(^_^;
軽いオチになってしまった。
久しぶりにスイスイと書くことが出来た小説でした。
Keiichiro☆ミ
(けい)