AWC The Godees Of Grace4【女神】  RUI


        
#2234/3137 空中分解2
★タイトル (NZH     )  92/10/ 4  20:49  (187)
The Godees Of Grace4【女神】  RUI
★内容

3.計画と実行



「あ----やれやれ、まいった、まいった!」
 と、島川類は、金山食堂とゴロの入った服と帽子、眼鏡を投げ出した。
 髪型を変えていた髪も、ブラシを使って元に戻す。
 午後から家にずっといた森川敬は、クスクス笑いながら、
「予告状、今出してきたのかい?」
 類はリビングのソファに寝そべりながら、うなずいた。
「そう。つい、今さっきね。----あれ? 輝雪と優美は?」
「まだ、大学」
「ええっ? まだ帰ってないのか?」
「だって俺達と専攻違うもの。時間が違うの、当り前だろ」
 そう、類と敬は同じ学部、よりによって弁護士や税理士などの政治の方面。
 打って変わって、輝雪は日本文学の専攻。
 優美は世界史の専攻。
「それにしても」
 敬は合点が行かないといった風で、「その格好……お前、警視庁にそれで予告
状出しに行ってきたの?」
「いや……ちょっとね」
 類は必死に笑いを堪えた。
 ん?
 よく考えたら、俺、昼を食べてなかったけ。
 途端に、虚脱感。
「敬……。腹が減った! 何かあるか?」
「さっき作ったオレンジケーキがあるよ。食べる?」
「へえ。食べるよ」
 敬の焼いたケーキの味は格別なのだ。
 今日、類達の学部は午前だけで暇だったせいだろう。
「ミルクティーでいい?」
「上等!」
 敬は、読んでいた雑誌をガラステーブルに置くと、キッチンの方に立った。
 ふう。
 類は、疲れのため息を吐いて、もう一度ソファにねっころがった。
 きらびやかなシャンデリアが目を覆う。
 時々、思う。
 スリルは、確かに好きだ。それは、身体を引き締まらせ、活性化させる。
 でも、先程のように、どうして予告状というものを警視庁に出すのかが、今だ
に合点が行かない。
 それでなくても、いつもながらに警備は厳重で、特に今回のような『女神』の
ような世界的な宝石を盗むのにわざわざ、予告状なぞ出す必要は皆無だ。
  では、何故?
 今やっている事は類としては、嫌いではない。
 この表向き(?)大学に通う生活も楽しい。
 予告状を出す。
 それを無理に問いただしていいのかどうか……。
 この『トワイライト』の結成者----というのは、森川敬である。
 もともと、類を含め他の三人は敬に声を掛けられて、引きずり込まれたのであ
って、敬の過去は何も知らない。
 敬の方は反対に、類や優美や輝雪の過去を知っている、というか、調べ上げた
と、考えた方がいいだろう。
 それなりの『泥棒』としての才能、能力を備えている奴かどうか、見極めるた
めに。
 そして、それに該当する者に声を掛けた……。
 ----で、今の現状がこれである。
 これは、すべて類の想像だが、まず違いなかった。
 ……ま、実際に、それなりの『能力』の者に声をかけたせいで、前回の首尾も
上々、今だに捕まらずにいる。
 何しろ、『トワイライト』のモンタージュ写真さえ、作られていない。
 それは、----つまり、姿を見せていないという事。
 敬は、前回、長井美香江刑事に追い詰められ、チラリと姿を見られたようなの
だが、モンタージュ写真を公表されていないという事は確証がない、という事な
のだろう。
 姿を見せないが、モットーなのだが、もし、見られた場合を防ぐために、一応、
サングラスを掛けて髪型も少し変えたりして、まあ、9割がた、25、6歳に見
えるようにしている。
 そう、そう。それに。
 言い忘れていたが、ここの4人は4人共、皆、大学に通っている。
 森川敬は19歳。まともに考えれば、これが大学1年生の筈なのに、何故全員
通っているのか! という問題が湧くだろう。
 輝雪なぞは、高校2年生の筈である。
 答えは簡単で、戸籍の年齢を誤魔化しているに過ぎない。
 1歳ぐらいの違いはどうせ解らない。だから、類も優美も戸籍上では、19歳
になっている。
 しかし、輝雪も歳などいくらでも誤魔化せるのだが、例外で、数々成績の優秀
さを認められ、堂々と入学したのである。
 敬達が住んでいる所は、奥多摩の方である。いや、だからこそ、若い4人が住
んでも十分な程の一戸建てに住めるのであって。
 しかし、池袋にある草翔大学(4人が通っている大学の名前だ)までは、結構
遠い所が難点なのだが……。
「お待たせ」
 敬が、リビングに盆を抱えて戻って来た。
 ----まあ、いいさ。
 敬だって、予告状を出す意味を時期になったら教えてくれるだろう。
 敬のことは、友人としても大切だし。
 気長に待つことにしよう……。
「----で? 盗聴器つけてきたかい?」
 と、敬が椅子に座りながら聞いた。
「ん。一応、あの課長の机の所にね」
 類は盛んに湯気をたてる大きいオレンジケーキを頬張っている。
「類、あんまり急いで食べると火傷するよ。ケーキは逃げないんだから。----じゃ、
盗聴器の方、ちょっと聞いてみようか」
 敬はそう言ってソファから立つと小型の小さな受信機を出した。
 輝雪が新しく作ったもので、勿論、盗聴器の方も3日かけて作った高性能の物
である。盗聴探知機にかからないよう、レベルアップしてある。
「周波数はこのままでいいの?」
「多分……合わないようだったら、周波数変換してくれ」
 やっと落ち着いてミルクティーを飲み始めた類が返事をした。
「OK」
 受信機のスイッチを入れる。
 そして、周波数を合わせる間でもなく……。
「ばっかもーん!」
 ----酷い怒鳴り声だった。
 あらら。
 と、類は思った。
 この声はあの課長さんではないの。
『この報告書は何だ! 散々遅れて出した癖に、この字といい、文といい……大
体、あの事件は殺人として片付いたはずなんだぞ! どうして心中なんて書いて
あるんだ!』
『はあ……』
 そして、こっちの声はあの馬鹿正直な佐山ではないの。
 一体、また何をやらかしたんだろ。
『こんな報告書を出すぐらいならお前が心中してこい!』
 と、また、怒鳴り散らす声。
 ガタガタと音がして席に戻るらしい佐山を誰だが呼び止めた。
『おい、佐山』
 あれ。この声は……庄内刑事。
『あんまり、課長を怒らせるようなことはするなよ。ただでさえ、自分の席にト
ワイライトが予告状を出しに来たんだろ? ま、俺は出張中だったからよく知ら
ないけどな」
 ……あ、成程。道理で警視庁で見かけなかったと思ったら、出張中だった訳ね。
『それがカツどんと一緒に来て、そして、なおかつ、カツどんを食べ終るまで気
づかいってのは、大変な失態ぶりだからな』
『そうですね……わかるような気もしますが……』
『ま、なんとか頑張れよ」
 あの課長、失態を感じてるのか。ま、解らないでもないけど……。
 類は、妙な視線に気づき、チラと、敬の方を見た。
 敬と目が合う。敬が頬杖をついて類の方を流し目でにらんだ。
「類っ! お前な……あんな格好で予告状を出しに行ったのは、そういうことだ
ったのか!」
 類は笑って誤魔化して、「ま、たまにはこういうのもいいかと思ってさ」
 敬は、ため息をついた。
「……ま、あの課長さんをどうこうしようが、別に構わないけどね。しかし、見
物だっただろうな」
 と、屈託なく笑う。
「ところで、美香江刑事さん、いたかい?」
 と、敬が聞く。先刻、言った通り、敬を最後まで追い詰めた唯一の刑事である。
「いたよ。だけど、何だかボーッとしてたぜ」
「へえ。じゃ、元気付けに会ってやろうかな。『トワイライト』を捕まえてやろ
うって躍起になるかも」
「お前も物好きだな」
「ああ。女性にしちゃ、結構、やり手だからね。ああいう信念に燃えてる人は尊敬
するよ。----その内、情報収集にでも会いに行く」
 類は、呆れたような表情をして、天井に目を向けた……。
 そして、その少し後----。



「あーっ、やれやれ、やっと終ったわ!」
 と、優美は息をついて図書館の真っ白い壁を見ながら言った。
 全く、あれほど肩の凝る学部もないわよ。講義や授業なんかは興味あるから面
白いんだけど、世界史だからなのよね、問題は。
 何かわからないことがあったり、もっと概要だけでなく奥詰まったことまで知
りたいってなったら、あの重い世界史年表をひいて、まるでブロックほど重そう
な世界史辞典を引かなきゃならないんだもの。
 それなら、それでまだいいんだけどさ。
 問題は図書館よ!
 わざわざ図書館にまで行って引かなきゃならないのよ! しかも、図書館はこ
の大学の最上階、5階ときた!
 それに比例して、私たちの学部は別棟で、しかも2階なのよ! こんなに不合
理な話ってある!? 早い所エレベーターでもつければいいんだわ!
「予算、予算って……」
 優美はまだブツブツいいながら、世界史年表と世界史辞典(5冊もあった!)
をなおしながら、世界史年表に匹敵(?)するようなレポートをひきずって図書
館を出た。
 つい欠伸が出る。
 と、----目の前に人影が立った。
 誰だろ? 残っている人間も少ない今の時間に……。
 優美は上を見上げた。
「----あら。輝雪」
 そこには、輝雪が微笑んで立っていた。
「散々、待ちましたわよ、優美。世界史専攻って、大変ですのねえ」
「----まあね」
「私は、選ばなくてよかったと、存じますわ」
「そっちは日本文学だったわね。日本の美しき言語の衰退を研究するって訳ね」
「そんな事いって。まだまだ、衰退してませんわ。日本の言葉はどの国よりも響
きが美しいものです」
「そうかしらね。所で、確か輝雪達の学部はとっくに終った筈じゃなかったの?」
「だから待ってましたの」
 輝雪は悪戯っぽい表情をすると、「優美に手伝って貰いたいことがありますの
で。手伝ってくださいますわよね?」
「別に構わないけど? 何を手伝うのよ?」
「そんなに勘ぐらないで。簡単なことですから」
 輝雪はちょっとウインクして言って見せた……。
                              <続く>




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