AWC 大都会の中の熱き戦場             グレイ


        
#2037/3137 空中分解2
★タイトル (QUB     )  92/ 8/ 9  20:22  ( 97)
大都会の中の熱き戦場             グレイ
★内容

 早瀬 敬はその男の来訪を最初余り快くは思って居なかった。
 今年31に成る早瀬に取って男は13年前迄の自分を映した鏡の中の存在の様に
写ったからであって、男が過去に早瀬が所属した組織から来たと聞いても信用する
事が出来ないで居た。
 男が「レオン」と組織のコードネームを名乗った事で早瀬は男の目の前でかつて
の上司であり早瀬が9才から18才迄の9年間所属した特殊庸兵組織の現在の極東
支部長である男に連絡をして確認を行った。
 「やあ、ウルフ久しぶりじゃないか、お前の所にレオンと言う男をやったが着い
たのか?」
 電話の相手で早瀬がミスターと呼び習わして居た男はいきなりそう言った。
 数分の会話に後、早瀬はレオンが信用出来る組織の人間である事そして今、彼が
何よりも大切にして居る女で11才年下の井出 沙織に迫る未知の危機に付いての
情報をもたらした事を知った。
 仕方無しに早瀬はレオンに一杯のブランデーを出すと話を促した。
 「ウルフさん、今回の敵は、間違い無く我々と違う製法によって作り出されなが
ら我々に匹敵する力を持った生体兵器なのです」
 レオンは早瀬が驚愕する事実から話始めた。
 「俺達は遺伝子操作を受けた、通常30パーセントしか使われぬ人間の能力を伸
ばし100パーセントにしてから更に600倍に増幅したと言う非常識の極みとも
言える化け物じゃ無いのか?」
 「その通りです、しかし敵は我々同様のSF的手段、おそらくは遺伝子操作で他
生物の能力属性を持って居る存在なのです」
 早瀬はレオンの言葉に愕然とした、それと言うのも早瀬が現役の頃彼の組織も同
様の実験を試みて失敗して居たのだ。
 理論的には、早瀬達ソルジャーと呼ばれる生体兵器に匹敵する存在をこの方法が
製造し得た。
 「確認は?」
 「現在、蜘蛛を始めとする昆虫類や肉食性ほ乳類の属性を持った者が確認されて
居ります、多分は虫類属性の者も居るでしょう」
 早瀬はたまらずに聞いた。
 「何故、沙織がそんな奴らに狙われ無ければならない?」
 「そこまでは、確認出来て居ません、何しろ我々は敵の実戦部隊の能力を知って
居るだけでどの様な組織が行動して居るのかさえ掴んでは居ないのです」
 「それでは、何故沙織が狙われて居ると?」
 「捕虜にしようとした敵が自殺する間際に回収出来たディスクに入って居たので
す、分析には随分時間を取られましたがね」
 レオンは恩着せがましい口調で言ってのけた
 「すると、どんな敵が来るかも判らないのか?」
 早瀬の質問にレオンは薄笑いを浮かべて言った
 「パルドと敵のコードで呼ばれる男の単独作戦だと言う事とその男の戦力データ
は入手して居ます」
 レオンはそう言うと早瀬に500円硬貨程の大きさのディスクと彼が現役時代に
使って居たのと同型の読み取り装置を差し出した。
 ディスクの中身は驚嘆すべき物だった。

−−−コードネーム:パルド
−−−属 性   :数種の昆虫(甲虫と蜘蛛を確認)の混合体
−−−戦闘レベル :クラス特A
−−−性 別   :男性(但し雌雄両体の可能性有り)

 だが、そこに比較対象として記載された早瀬の力もそれに匹敵した

−−−コードネーム:ウルフ
−−−属 性   :ゴッド型生体兵器
−−−戦闘レベル :クラス特A(PK及び発火能力、時空切断能力を有す)
−−−性 別   :男性
−−−特記事項  :全能力解放時のデータは不明(計測不可)

 この二人が戦うとすればまさにこの世の地獄が出現するであろうデータだった
 古い記憶を呼び起こした早瀬は沙織に迫る危機についての認識を新たにしたが何故
組織が彼に情報の提供をしたかに疑問が残って居た。
 「貴方の他にこいつの相手を出来るのは四聖天と呼ばれた貴方方四人の他には大部
隊を投入するしか無いそれはデータを見れば御判りでしょう」
 レオンの言葉によって早瀬は気付いた組織は沙織の為に戦う気は無い、早瀬への情
報は昔働いて居た者への義理でしか無いのだ。
 「よし、判った沙織は元々俺が命を掛けても守ろうとしてるのだから俺の方で面倒
を見よう情報には感謝する」
 そう言うと早瀬はレオンを早々に追い返し戦闘の準備を始めた。

 井出 沙織はその時昼間の仕事を終えて、小遣い稼ぎに夜アルバイトをして居るP
UBに入った所であった。
 店の中には既に顔見知りの店の女達が居て沙織に声を掛けて来た。
 「ねぇあんた少し太ったんじゃない?」
 「早瀬ちゃん、今日来るんじゃ無いの?、余りもったいぶると他の女に取られちゃ
うよ!」
 沙織は「余計な御世話よ!嫌いじゃ無いけど惚れるまで行かないんだもの」と心の
中で呟くとそれとは裏腹に表向きは微笑みを見せながら
 「そうだね、そろそろちゃんと考えなくちゃ失礼だね」と言った

 慌ただしく準備を終えて開店したのが7:00を少しまわった頃であった。
 その日最初の客は仲間とも噂をして居た当の早瀬であった、いつもと少し違う雰囲
気に沙織が訝しく思い
 「今日はちょっと暗いよ!何か悪い事でもあったの?今日は来る時間もやけに早い
様だったし」
 と聞くと早瀬は一言だけ
 「たまらなく会いたく成った、それだけさ」と言った
 暫く早瀬だけを客として飲んで居た、店の女達は全部早瀬の周りに集まって居たが
客が混み合って来るのに合わせて一人づつ他の席へと消えて行き早瀬の元には沙織だ
けが残った。
 そうして数時間が過ぎた頃、一人の男が入って来た男を迎える店の女達の態度は他
の客に対するのと変わる事は無かったが早瀬は「ついに来たか」と心の中で呟いた。
 油断無く身構える早瀬にそいつは明かな殺気を放って居た。


         1992/08/09 QUB38517 【神奈川】 グレイ





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