#2017/3137 空中分解2
★タイトル (KPG ) 92/ 8/ 6 19:48 ( 25)
「氷梢」13 由布子
★内容
「あの方のお望みでございました。あの方は、現実を非情なほどの目でご覧に
なっておられる方でした。そして、人間の悲しさをとても理解なさっている
お方でした。ですが、あの方のお心とは裏腹に、あの方自身がある意味で現
実に疑問をお持ちだったのだろうと思います。」
「孤独であるということは、ある意味で精神の自由につながることとは思いま
せんか?」
「私には、難しいことはわかりませんが、私自身自ら孤独を求め、そして、あ
の方のお心の中の世界の広さに、私も同調していたような気がします。」
「精神の世界とは限りなく無限で、かつまた、人間の体積ほどの僅かな空間し
か必要としない。この空間というのは、精神の空間ではなく、無限を作り出
し、その無限が享受するものという意味ですが。」
「あなたはいつごろからそんな考えをお持ちだったのですか?」
「そうですね、大学を出る頃にはいつもこんなことを考えていました。」
「何があなたをそうさせたんですか?」
「幸せ過ぎたのか、それとも不幸せだったのか、私にとってそういう価値の基
準はとても曖昧で、あなたが理解される答は出せないような気がしますが、
子どもの頃から精神の境界に非常に興味を持っていました。そして、ませた
子どもだったのでしょう、今でも覚えているのですが、「精神病とその境界
領域」などという専門書を思春期の頃に買って読んだことがありました。ま
あ、あの本は私に答をくれはしませんでしたが。」
「あなたはいつも疑問をお持ちなのですね?」
「自ら疑問を作り出すことが好きなのかもしれません。」
「そして、あなたはお幸せなんですか? いじわるな質問でしょうか?」
「かまいません。曖昧なのです。そういうことに関しては私はとても曖昧な人
間なのです。曖昧という答しかあげられません。」