#1916/3137 空中分解2
★タイトル (LYJ ) 92/ 6/30 19:14 (102)
小説:ネットおかま入門講座 やまもも
★内容
KAHORU**ぷしゅっ!!
☆BOY**なになに、何、飲んでるの?
KAHORU**えっへへ。ビールだよお。
☆BOY**げっ、ビール飲むの?
KAHORU姫が?
KAHORU**飲むよぉ。ちょっぴりね。
一体また何が書き込んであるのかとびっくりされた方もおられると思います
が、上のチャットの文は、乃南アサ著『パソコン通信殺人事件』(講談社ノベ
ルス)から引用したものです。この物語では、薫は大学受験三浪の予備校生。
れっきとした男性なんですが、パソコン通信でKAHORUのニックネームで
チャットしていたら、ネットの仲間から可愛いギャルと間違われ、すっかりネ
ットの人気者になってしまいます。そんなKAHORUに切ない恋心を抱く男
性達も当然出てくるんですが、ところがKAHORUと実際にデートを約束し
た男性達が次々と殺されていく…。
この物語では、パソコン通信で可愛いギャルを演じる薫の心理がよく描かれ
ていると思います。薫は、味気ない単調な浪人生活を送っていたのですが、唯
一そんな彼の生活に刺激を与え、満たされぬ心を慰めてくれたのがパソコン通
信でした。パソコン通信のチャットの世界、そこでは見知らぬもの同士が気の
おもむくままに自由に寄り集い、心を開いて楽しく語りあうことができるので
す。そんなパソコン通信の世界で、薫はKAHORUというニックネームのた
めに可愛いギャルと間違われ、ネットの人気者になってしまいます。薫もその
ことになんともいえぬ喜びを感じるようになり、可愛いギャルKAHORUを
自ら積極的に演じるようになるのです。
薫は、パソコン通信でKAHORUとなって可愛いギャルを演じ、男性会員
たちのアイドルとなりました。このようにネットで男性が女性のふりをするの
を「ネットおかま」と称して、勿論ネットのモラルに反することなんですが、
ただ私たちは程度の差はあれ薫が味わったような快感をパソコン通信から得て
いるのではないでしょうか。人々は日常生活では、近所の人たちには「善良な
隣人」を演じたり、職場では勤勉な「上司」や「部下」を演じたり、子供には
「お父さん」や「お母さん」らしく振る舞ったりしているわけですが、24時
間それらの役割を演じることに熱中しているわけではないでしょう。どんな人
も、別の世界で全く異なる役割を演じたいという願望を潜在的に持っていると
思います。パソコン通信は、そんな願望をそれなりに実現させてくれるのでは
ないでしょうか。ネットおかまは、まさにそのような変身願望の歪にしてかつ
極めてストレートな表出形態と言えるのではないのでしょうか。
さて、こんなネットおかまの赤裸々な実態を探るため、今日はあの有名なネ
ットおかまの山口桃絵さん、通称ヤマモモ(私はやまももですよ、念のため)
のお宅を訪問し、ネットおかま人生についてインタビューしてまいりましたの
で、紹介したいと思います。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ネットおかまのヤマモモさんの赤裸々な告白(発言要約)
あら、あたしがなんでネットおかまやるようになったのかですって。だって
さー、普通のハンドル名でいくら書き込んでも全然反応がないわけよ。そんな
のつまんないと思わない。でもさー、若い女の子が書き込むと、どっとレスポ
ンスがあるわけ。しゃくじゃない。だからさ、一度、山口桃絵でーす、20才
の女子大生でーす、なにも分かりませんがよろしくお願いしまーすってボード
に書いたのよ。そしたら来たわよ、どーっとメールを含めてたくさんのレスポ
ンスが。それから病みつきになっちゃったのよ。
ええ、ネットおかまって楽しいわよ。あたしね、実際は固い仕事やってんの
よ。職業を明かすわけにはいかないけどね。神経使う結構大変な仕事なのよ。
叱ったり叱られたり、じっと耐えたりゴマすったり、ストレスたまるわよ。そ
れがさ、ネットじゃ可愛いギャルになるわけでしょ。仕事に疲れて帰って来て
も、ネットおかまやってたらさ、スカーッとするのよ。ネットの男連中がちや
ほやしてくれるでしょう。でもね、こっちもサービスするのよ。どう言えば相
手が喜ぶかなーって考えるのよ。だってさー、その人たちもネットで楽しい夢
を見たいんでしょ、可愛い女の子と話したいんでしょ。その気持ち、とっても
よく分かるのよ。だから、こっちも頑張ってサービスしてあげるのよ。まあ、
人助けしているわけね。表彰もんよね、あたしのやってることって。
えっ、可愛いギャルを演じる秘訣ですって。まず、誤字・脱字だらけの稚拙
で内容のない表現が大切よ。あんまり上手だと怪しまれるし、それに敬遠され
るわよ。あら、あたしはこれでも教養あんのよ。でも、ネットおかまやるとき
は頭をピーマンみたいにからっぽにするの。そんでさ、決してセンスのいい受
け答えなんかする必要ないわよ。今時、そんなことのできる女の子なんてめっ
たにいないじゃない。ただひたすら頭をピーマンにしてさ、「ウソーッ、ホン
ト、信じられなーい、分かんなーい、かっわいーい、ひどーい、私泣いちゃう
から、おねがーい」、まあこんなのならべればいいのよ。後はネットの男連中
の豊かな想像力に任せればいいのよ。みんな豊かな想像力持ってるから、勝手
に「理想の可愛い女の子」をイメージしてるみたいよ。下手に具体的なこと言
わないで、相手の想像力を喚起するってことが大切なわけね。
そうね、ネットおかまを演じるために若い女の子たちがどんなことに興味・
関心があるかってことを知っておく必要はあるわね。でもね、面白いのよ、男
の人たち、特に独身の男性はね、初めはカルーイこと言ってるのが、だんだん
話が真面目になって来んのよ。人生とはなにかみたいな哲学的なこと言いだし
たりすんのよ。あたしに夢中になりだしたってことね。これ以上やっちゃうと
遊びじゃなくなるでしょう。そこで、あたしにはすでに相手がいるってことを
それとなく匂わしていくのね。それで、なんとか納まっていくの。ええ、それ
でもあたしにすっかり熱くなっちゃって、メールなんかでしつこく交際を迫っ
てくる人もいるわ。こうなったら、またハンドル名とIDを変えて、別のホー
ラムなんかに移るしかないわね。まあ、その人には気の毒だけどね。こんなと
き、一番辛いわよ、ホントに。でも、その人も一時いい夢見たんだから、いい
んじゃないの。
あっ、それから演じる役柄なんだけど、やっぱりジョシダイセー、それも鹿
児島あたりの遠隔の地に住んでいるジョシダイセーなんかがいいわよ。なんと
いっても、ジョシダイセーが一番役柄が単純だし、鹿児島あたりだとOFMに
うるさく誘われる心配もないわ。どう、あんたもやってみない。