AWC 小噺:大工とろくろっ首    やまもも


        
#1904/3137 空中分解2
★タイトル (LYJ     )  92/ 6/28  10:54  ( 63)
小噺:大工とろくろっ首    やまもも
★内容

 さて、今日の小噺は「大工とろくろっ首」。この小噺の元ネタは古典落語の
「ろくろっ首」です。元ネタでは、婿入りするのは与太郎ですが、今日の噺で
はしっかりものの大工にしました。また元ネタでは、「お嬢さんが首を長くし
て待ってるよ」とサゲているんですが、今回は「お嬢さん」がなぜろくろっ首
になったかという理由説明を新たに付け加えましたので、その関係で落ちも別
のものにしました。私の小噺、古典を超えられるのか、それとも古典を台無し
にしたとコテンコテンにやられるのか…。

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 あれ、横丁のご隠居さん、お久しぶりです。えっ、最近、めまいがしないか
ですって。また薮から棒になんですかい。まあ、大工やってますから木を使う
でしょう、だからいろいろ気も使いますよ、ホントに。喧嘩をしても怪我をし
ないだろうですって。どうしてですか。えっ、毛がないから。ははは、口が悪
いね。いやね、確かにここんとこ目だって毛も薄くなってきましたよ。えっ、
かみさんをもらえですって。髪の毛だけでなくかかあにも不自由してるだろう
って。めまいや髪の毛の話とどう関係あるのかよく分かりませんが、でもなに
かいい話があるんですかい。

 へぇーっ、養子の口ですか。えっ、お金持ちのお嬢さんで、両親はもう亡く
なって、お屋敷ではばあやさんと女中二人の四人暮らし、近所じゃ小町と言わ
れるくらいの器量よし、気立てもとてもよい。そりゃー結構な話ですね。しか
し、そんなお嬢さんなら縁談は山のようにあるんじゃないですか。えっ、少し
ばかり訳ありでお婿さんの来手がないですって。その訳ありってのはどんなこ
となんですか。えっ、真夜中になるとそのお嬢さんの首がすぅーっと伸びて、
行灯の油をペタペタぺタッとなめるって。

 また、そのお嬢さんはなんでろくろっ首になっちまったんですか。へーっ、
娘さんがまだ幼い頃に両親がよんどころない理由で旅に出て、そのまま帰って
こなかったんですか。そんで、毎日毎晩、お屋敷の門の前でばあやさんと一緒
に両親の帰りを待っていた。とと様まだか、かか様まだかと待っていたんです
ね。あんまり首を長くして待っていたからろくろっ首になっちまった、なーる
ほどねー。

 いゃー、お嬢さんの気持ち、あっしにもよく分かるなー。いえね、あっしが
餓鬼の頃、おふくろが毎日外に働きに行ってたんですよ。ですから、いつも帰
りが遅くってね。あっしは、夕方、もう帰るかもう帰るかって、いつも家の戸
口でおふくろの帰りを待っていたもんですよ。おふくろの下駄の音はね、あん
な気性だからカタカタカターって気ぜわしいんですよね。カランコロン、カラ
ンコロン、ああ、これは違う人だな。ペッタペッタペッタ、これも違う。カタ
カタカタ、カタカタ、あっ、おふくろだって思ったら、違うおばさんが通りす
ぎて行ったりしてね。でもね、おふくろは、毎晩ちゃんと帰ってきましたよ。
うーん、そのお嬢さんは辛かったろうなー。

 ろくろっ首がどうだっていうんですかい、はっはっは、そんなことぐらいで
驚きゃしませんよ。油どころじゃない、世間をなめて首が回らなくなったり、
首ったまがとんだ人間がたくさんいますぜ。ろくろっ首なら、首があってくる
くる回るだけ上等じゃないですか。うん、そりゃいい話だ、ご隠居さん、その
お嬢さんとの縁談をよろしくお願いしますよ。

 この大工、こんなことを言ってろくろっ首の話にも怖がりません。まあそん
なわけで、この大工とお金持ちのお嬢さんとの縁談はうまくまとまり、吉日を
選んで婚礼とあいなりました。しかし、祝言を挙げた翌朝、その大工は青い顔
に赤い目をして長屋に逃げ帰って来ました。それを聞いたご隠居さん、この大
工を諭して言いましたね。「なにぃ、女はやっぱりろくろっ首だったんで、怖
くなって逃げ帰ってきた。なにをいまさら、そのことはちゃんと言っといたじ
ゃないか。お嬢さんが首を長くして待ってるよ。かわいそうじゃないか、早く
お帰りよ」。

 そしたら、大工が言ったんですね。「へぇ、お嬢さんがろくろっ首だってこ
とは前もって釘を刺されておりやした。でもねー、お屋敷に大工道具は持って
行かなかったんですよ。だからカナはなかったんです」。





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