#1722/3137 空中分解2
★タイトル (MMM ) 92/ 5/19 12:50 (101)
マリコ抄(2)
★内容
真夜中、12時頃だった。君から電話がかかってきたとき、僕は誰からだろうと訝
しみながら目をこすりこすり受話器を取った。
そしてやはり君からだった。君はどうやってどこから電話をしているのだろう。囁
き声であまり良く聞こえなかった。『…ここはまっ暗なのよ。…まっ暗で怖いのよ…
。』という言葉だけがよく聞き取れた。
その言葉はとても寂しそうだった。君の魂は寂しくて、君の言葉は氷のかけらのよ
うに真暗闇の僕の部屋の中に散りばめられていっていた。
君の微笑みは死の微笑みのようだった。僕を心中へと誘う悪魔の微笑みのようだっ
た
君の心の中に棲みついた悪魔が、僕らを茂木の山奥で心中させようともくろんで、
僕に微笑みかけたようだった。
僕は君の微笑みにハッとした。
そして僕らはいま破滅しかけている。
マリコへ
情死行という言葉ばかりが浮かんできます。世の中には不幸な人がいっぱいいます
。なんだか僕から見るとこの世の中は夜みたいです。
いつも夜で朝は来ないような気がしてなりません。
でも、僕が危うく自己が崩壊しそうになりながら発狂せずに来られたのは不思議で
す。中学の頃あんなに素晴らしかった君が高校の頃から少しづつ神経質になって来、
短大を出、社会人になっからも少しノイローゼ状態でそして遂に発狂してしまうなん
て意外だ。中学の頃の君の姿しか知らない僕には意外だ。
僕は、中学の頃からずーっとノイローゼ状態だった。それでも僕は自己を見喪うこ
とはなかった。精神病一歩手前と言われながらも僕は発狂することはなかった。
何度も何度も発狂する寸前まで行ったけれども…今もまた発狂しかけているのかも
しれないけど…僕は際どく守られていたと言おうか…ず太い所があったと言おうか…
やはり小さい頃から苦しみ抜いてきたからか…僕には少しず太い所があって自己の崩
壊を辛くも保ってきた。
でも君よりも僕の方がずっと苦しんできた。君が入院してからは僕の方がまだ幸せ
だったかもしれない。でも僕もこの2,3年、苦しく寂しかった。君が寂しいと訴え
ているように入院していない僕でさえ寂しかった。毎日孤独との戦いに明け暮れてい
た。
でも僕が今、死の一歩手前にで苦しんでいること…発狂しかけていることは変わら
ない。小さい頃からの苦しみの量ではこの2,3年は君の方が多いだろうけど2,3
年前までは僕の方がずっと多かった。だからまだまだ僕の方が負けている。君よりも
人生に負けているというか不幸だった。
君は比較的恵まれてきたじゃないか。みんなより。少なくとも2,3年前までは。
僕が留年して不幸の雲の中に包まれていたとき、君は精神病院の鉄格子の中にいた
。君は僕より落ちぶれ果てていた。中学の頃、喉の病気などでとても苦しんできた僕
の方が比較的(出会った時…)幸せだった。
君の頭には悪魔が巣喰い、(僕の頭にもやはり…小さい頃からの…悪魔が巣喰って
いたけれど…)君を、以前の君とはすっかり変わらせていた。でも時々見せる笑顔は
中学時代の光り輝くような君の姿そのままだった。
僕より君が落ち込んでいた。中学の頃、あんなに明るかった君が今は僕よりも落ち
込んでいた。三度目の留年でどん底の僕よりも。
君よりも僕が落ち込んでいるはずだったのに。もし中学の頃から僕らがそのまま運
命を巡っていたなら。
孤独だけがすっぽりと僕を覆っていた。そのときに鉄格子の向こうから微笑んでく
れた君は比較的今よりも元気だった中学時代の僕を思い出させてくれた。君の笑顔も
寂しげだった。いや僕よりも寂しげだったにちがいない。
孤独に覆われてうつむいて歩いていた僕を…鉄格子の向こうから微笑みかけてきた
君は…以前とは見る陰もないほどやつれはてていた。僕は始め自分の目を疑った。
そして2回目僕が通りかかったとき鉄格子の向こうから叫んだ君の声は中学時代の
頃とそのままの声だった。
『ハブさん…ハブさん…』
僕の耳には今も残っている。中学時代の君の声とそのときの君の声が二重奏となっ
て憂愁に陥りがちな僕を励ましてくれる声として今も僕の耳の奥で鳴り響いている。
美しく…美しく…。
…思い出の中学校のグラウンド…
僕は決して一人では死なない。
僕は必ず誰かを道連れにして
きっとマリコを道連れにして
思い出の中学校の運動場か
茂木の浜辺で…クルマの中で薬を飲んで死ぬんだ。
僕に巣喰っている自殺霊がそう囁いているから。
僕は決して一人では死なない。
マリコかOOさんと心中するんだ。
僕は決して一人では死なない。
そうして眠るように霊界へ落ちてゆくんだ。
そして良ければマリコと一緒に白い天国へと旅立てる。
僕らはあまりに心が純粋すぎたから
だから精神に変調を来たしたんだから
だから僕らはきっと天国へ旅立てる。
僕らはあんまり人が良すぎたから
だから社会に適応できずに
こうして死んでゆくのだろうけれど
そうしてやがて僕らのことは夢か幻のようにみんなの心や記憶の中から忘れ去られ
て行くのだろうけれど
僕らはきっと天国へ旅立てる。
自殺したって天国へ旅立てる。
そして僕らは天国では幸せな毎日を送れるんだ。
この世での呪われた毎日と違って
幸せな幸せな…ちっとも寂しくなんてない
幸せな幸せな天国へと…僕らはきっと再生するんだ。白い白い幸福な新しい人生へ
と…。