AWC チェイス・ゲーム(3)    クリスチーネ郷田


        
#1616/3137 空中分解2
★タイトル (MEH     )  92/ 4/20  22:21  (144)
チェイス・ゲーム(3)    クリスチーネ郷田
★内容

突然の老人の死に、二人は驚嘆していた。初めのうちは注意をひく者は誰もい
なかったが、死体が座っているのに気付いた中年婦人が悲鳴をあげてから、事
態は一転した。映画館は殺人現場と早変わりし、野次馬が押し寄せ、黒山の人
だかりが出来た。

「キャーッ!死んでる!」
「ど、どうしたんだ?」
「死んでるわ、このおじいさん……!!」
「あなたが第一発見者か?」
「いや、私じゃない。二人の青年だったようだけど……」
「し、死んでる。本当に息してないよ、この人!」
「えっ!どうしたのどうしたの?」

誰かが連絡したのであろう。医者が駆けつけたが、本多と森田はその時、既に
劇場の外にいた。マリオンを離れて、二人は早足で歩きながら話し合った。

「おい、警察に届けなくてもいいのか?」
「知らん、こんなのは初めてだからな……。逃げるのはまずかったかな」
「そうだよ、あらぬ疑いをかけられちまうぜ!」
「だって、仕方ないだろ!重用参考人として調べられる。さて、俺たちはどう
いう理由で『グッディーズ』の会長を知ってるんだ?ハッカー仲間だからって
説明するのか?」
「おまえが犯罪スレスレの事をやってるからじゃないか、俺は関係ないぞ」
「森田、おまえだってマリファナの件だとかいろいろネタがあるだろう?やっ
ぱり警察はマズいぜ」
「俺はもうドラッグとは無縁だ!!馬鹿にすんな」
「わかった!あまり大声で喋るな。とにかく俺の家に戻ろう。この封筒の中身
を調べようじゃないか」
「ところでな、本多、おまえ気付いてたか?」
「何をだよ?」

「首の後ろにな、針が刺さってた。とても小さいやつだけどな」

「針……!?」
「そう、針だ。多分吹き矢か何かを使って殺したんじゃないかな」

森田は、吹き矢をぷっと吹く真似をしてみせた。

「針が!?そうか、全然気付かなかった……。これは……殺人事件だな」
「暗殺者は俺たちの後ろの席に座り、毒の塗られた針を吹き矢で飛ばしたと言
うわけだろう」
「だが、なんで殺されなくちゃいけないんだ?」
「そんなこと知るか」

重い足取りで二人は本多家に到着した。
「あがれよ」
「誰もいないのか?
「姉貴が部屋にいるかもしれない」
「あっ、一目おまえの姉さんを見たかったんだ。じゃ、お邪魔するぜ」
自室に戻り、やっと二人は落ち着いた。昭の姉、智代がお茶を入れてきてくれ
た。
「あっ、姉ちゃん気がきくなあ」
「うるっさいわね。ええと……森田君?いらっしゃい。」

「お邪魔してます。」
「このバカのお守りは大変でしょ」
「いやあ、こっちがお世話になってますよ……。」
森田は少し緊張しているようだった。本多の姉が美人だとは予想出来なかったか
ら、であろう。
「昭、今日はどうしたの?ひどく慌ててたみたいだけど」

「おい本多、早く封筒を開けて見ようぜ」
「ああ、そうだな」彼は封筒を大急ぎで開いた。
中にはフロッピーディスクが一枚、そして電話番号のメモが一枚入っていた。

「なんだこりゃ?」
「なんなのよ、それ」
「ただのフロッピーディスクだ。中身を見てみよう」
彼はディスクをパソコンにくわえさせ、中身のチェックをした。ドキュメント
ファイルと、何かのプログラムが入っている。早速本多はドキュメントファイ
ルを読んでみることにした。

中身は……。

[README.DOC]内容
 ROOT、この文書を読んでいる頃には、私との対面も終っているだろう。
君の心臓に悪いことをしてしまい、すまなく思う。いろいろ理由があって、私
は命を狙われているのだ。もしかしたら君に会う前に殺されているかもしれな
いが……。この文を君が読んでいることを望む。

以前、私はアメリカのあるコンピューター会社のシステムにハッキングした事
がある。そこで私はドジをふんだ。

やつらは一枚上手だった。私のアクセスを、やつらは一部始終監視していたん
だ。そしてさらに、逆探知までされてしまった。
それ以来、私は命を狙われるようになった……。
やつらは私のハッキングを警察に届けるなどと言うことはしなかった。
直接私の命を奪うつもりでいるらしい。
いくら私がガードを固くしても、やつらは様々な手で私を殺そうとしてきた。
恐ろしい話だろ?私がキャンディー会社の会長だからと言っても、そんな肩書
は何の意味もなさない。死んでしまえば、ただの肉のカタマリだしな。
ある日、自家用車のブレーキがきかなくなっていた時には、もう私の寿命も尽
きたかと思ったよ……。

さて、君に耳よりな情報を教えよう。
実は、そのコンピューター会社では、素晴らしい技術を開発中だったんだ。
これは恐ろしく革新的な内容で、私も驚きで足が震えた。
今までのフォン・ノイマン型コンピューターは全て旧式になる、それほどのも
のだ。
私はアメリカのパテントを調べてみたが、驚いたよ。何故これだけの技術を出
願していないのか、理解に苦しんだものだ。
現段階では90%までしか完成していないから、完全版を製作してパテント出
願しようとしているのかもしれない。あるいは何か他の理由か……?

 君に以前送った「謎のメール」の解読プログラムを添付した。内容は……。
そう、新型コンピューターの設計図だ。すぐに日本でパテントの出願をするん
だ、なるべく早く。そうすれば、君は資産家になれるぞ……。

忠告しておく。体には気をつけろ。私のメッセージを無視したければ、それも
良い。その方が、かえって長生きするかもしれない。だが、この話に興味を持っ
た場合、命の保証は私には負えない。自分の命は自分で守ってくれたまえ。

最後に、君は恐ろしく強大なマフィアを相手にしようとしている事を忘れない
で欲しい。私の場合、長年連れ添った妻と、一人息子が、簡単に暗殺された…
…。私は今や、一人ぼっちだ。もう失うものは何も無い。
君に妻と息子の仇討をしてくれと頼んでいるわけではない。

ただ……。

選択するのは君だ、ROOT。

                   DATE:XX/XX
                                FROM:FOG

「……だってさ。」本多はつぶやいた。
「なんだか、危ない事件に巻き込まれつつあるわけね、あんたたち」
智代はお茶をすすりながら言った。
「そ、そうみたい。」
「俺は、俺は知らん!と言いたいとこだが」
「おまえだったらどうする、森田?このまま無視すれば安全だって言ってるけ
ど」
「俺がいま恐れてるのはな、ひょっとしたら追跡されたかもしれないって事だ」
「そうだ……。プロだったら追跡してるとこだ」
「相手はプロなんだろ?プロのヒットマン……。」
「そうだろうな」
「ヤバイぜ!ここから早いとこ逃げなくちゃ!!」
「まあ待て、とりあえず特許庁に出願しようじゃないか。それが終ったら、どこ
かに隠れていればいいさ。いまオンラインで出願するから、待っててくれ」

……ガチャリ。
何者かが、本多家の玄関のドアを開けた。

,,




前のメッセージ 次のメッセージ 
「空中分解2」一覧 完狂堂の作品 完狂堂のホームページ
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE