AWC Rock'n Roll Cinderella (16)Farlia


        
#1566/3137 空中分解2
★タイトル (GCG     )  92/ 3/31  14:34  (147)
Rock'n Roll Cinderella (16)Farlia
★内容
               * * *
 「良くいらっしゃいました、神崎さん。僕が『竜人会』三代目の凛と言い
ます」
 歯切れのよい声で俺に向かって話し掛けてくる人物は、どうみてもガキン
チョだ。この子が三代目???信じられん。
 俺は口をだらしなく開けて、凛を見やった。
 「言った通りでしょう、父さん。必ず来るって」
 ふっと横を向くと、いかにもそれ風の男が一人立っている。
 「ああ、そうだな。お前の勝ちのようだ、凛」
 その男は普段は見せないであろう笑顔を顔に出しているのだろう。何とな
くぎこちない笑みのように見えるが、本人は本当に嬉しいのだろう。
 俺はここに来るまで、少し神経質になり過ぎていたのかもしれない。今の
状況から俺なりに判断すると、丸く治まりそうに感じられる。
 「神崎とやら、おまえを呼んだのはほかでもない。お前自信を試させても
らったのだ」
 「俺を?何のために?」
 「あの娘に相応しいか……だ」
 「事の始まりは、僕からなんですが………」
 凛が控え目に、今までの出来事総てを俺に語ってくれた。年齢不相応とし
かいいようのない悠長な言葉で話す凛は、俺より数倍も大人に見えた。
 「だから神崎さん、失礼とは思いましたが、あなたを試させて貰いました」
 一言も躓かず、俺の目をしっかり見据えて話すところなんか、とても子供
には見えない。
 「で……結果はどうだった?」
 俺は凛に尋ねてみた。
 凛はニッコリ笑って、答えてくれた。
 「最初っから結果は見えていたんですよ、僕にはね。だってそうでしょう、
舞さんの選んだ人なんだし………もし神崎さんが逃げ出して、舞さんを見捨
てることになったとしたら、舞さんの見る目がなかったと言うことになって、
その舞さんを見ていた僕自身も見る目がなかったと いうことになってしまう
んですからね」
 「じゃあ俺は合格でいいのかな?」
 「もちろんその通りだ。何と言っても、凛が見込んだ娘なのだからな……
第一、我が息子を否定するわけにもいかんだろ?」
 そういって大笑いしている。
 「神崎さん、舞さんを幸せにしてやって下さい。舞さんのために………僕
のためにもね」
 「あのおてんばじゃ、俺の手に負えるか……な?」
 おどけて見せる。
 大丈夫ですと凛は言うが、実は本気で悩んでいた。
 「夜が明けてきたようだな」
 窓から差し込む日が、今日は天気だと言う事を示している。
 「さぁそろそろお別れの時間のようですよ、神崎さん」
 俺は何となく別れが惜しいような気がする。出来ればもう少し話していた
い気分ぶんだ。
 「そんな事言うなよ、折角会ったんだからさ。朝飯くらい付き合わね〜か?
おっさんも一緒にな」
 「なかなか面白い奴じゃないか、なぁ凛」
 「そうですね、朝御飯くらいなら…でもまだこのホテルのレストラン開い
てませんが……」
 「なぁに。わたしが一言言えば、開かない所も開くさ」
 「鶴の一声ってやつだなぁ」
 俺は苦笑する。
 「そうと決まったら、早速食べに行こうではないか」
 そう言って先陣を切るところなんか、なかなか面白い人物であり本当は良
い奴なんじゃないかと俺は思わずにいられない。
 そして散々世間話をした後、俺は『竜人会』一同に見送られ『****ホ
テル』を後にするのだった。
               * * *
 とにかく総ての出来ごとは解決した。後はマンションに帰って、ゆっくり
風呂にでも入り寝るだけだ。俺は止めてあったバイクに跨がると、ゆっくり
走らせた。
 まずいな……ヘルメット被ってなかったんだ。結構話し込んでしまったの
で時刻もそれなりに経ってしまっていた。方車線だけ異様に込んでる所から、
通勤ラッシュ時に引っ掛かってしまったらしい。
 ノーヘルだと、目立って仕方がないなぁ。自分が望んでしたことなのに、
腹が立つ。
 「それにしても込んでるなぁ………」
 バイクの利点擦り抜け技を使っても良かったが、今日はゆっくり帰ること
にした。
 ん?あの橋の上………人だかりが出来てるなぁ?
 通勤ラッシュではなく、実はあの橋の上が混雑しているだけなんじゃない
の?そう思うくらいの混雑ぶりだ。ただ橋自体が小さかったので、そこそこ
で結構賑わっているように見えるだけなのかもしれなかった。
 俺も野次馬根性を出しバイクを橋の側まで乗りつけて、そこから先は歩い
て見学させてもらうことにした。
 取り敢えず人の間を縫うように橋の真ん中くらいまで行き、人の視線が集
まる橋の下を同様にして眺めてみた。
 なっ………何やってんだぁ?
 そこにはウェディングドレスを着た舞が、一生懸命川底を漁っている。
 回りにいる野次馬連中は、何をしているんだろうとしきりに噂しているが、
俺には直ぐに何をしているのか理解する事ができた。
 あ〜〜あ、ドレスが台無しだ……まったく。水で濡れ更に汚れてしまって、
ウェディングドレスの値打ちはもうないに等しい。それでも一生懸命探す舞
の姿と、汚れたウェディングドレス、何となくそれも良いもんだと思った。
 「お嬢さん、捜し物は見付かったかい?」
 わざとからかうような口調で舞に話し掛ける。おそらく舞に話し掛けた奴
は俺が始めてだったのだろう、ざわめきが起こる。
 「うるさいわねぇ。見世物じゃないんだから、さっさと行ったらどうなの?」
 相変わらずの舞の口調だ。
 「ほ〜。折角一緒に探してやろうと思ったのになぁ、舞ちゃん?」
 自分の名前を呼ばれておかしいと思ったのだろう、曲げていた腰を伸ばし
俺の方に顔を向ける。舞は笑ったかと思うと、泣き顔になってしまう。
 俺は橋の手摺に掴まると、勢い良く飛び下りる。またもやざわめきが起こ
るが、さして気にならなかった。今まで恥ずかしさに堪えて探していた舞に
比べれば、これくらいは大した事はないと言うことだ。
 「捜し物は見付かったの?」
 首を横に振る舞。
 「まぁ仕方ないさ、昨日からずっと探してくれたんだろう?もう十分だっ
て、手もそんなになっちゃて。第一風邪を引くだろ?」
 俺はそう言うと、舞の手を取って自分の目の前に持ってくる。手は赤く冷
たく、かなり傷ができている。
 「どれ熱は?」
 まずは自分の額に手を当てて、それから舞の額に手を当てる。
 「おいおい、大丈夫か?熱があるんじゃないのか?もういいから、帰ろう」
 「ヤダょぉ。まだ指輪見付かってないもん」
 舞は泣きながらそう言っている。きっと、見付かるまでここを離れないつ
もりなんだろう。
 「今度の涙は、嘘泣きじゃないんだね」
 「違うもん、今まで動いてたから汗でも流れたんでしょ?」
 俺に背中を向け、手で顔を拭って振り返る。
 「あたしね、見付かるまでぜ〜〜ったい帰らないから」
 そう言ってまた探し始めた。
 「で、見付かる見通しは?」
 「神様にでも聞いて頂戴………ほんとに……奇跡でも起こらない限り、見
付かんないよぉ」
 ペシャんと、へたりこんで泣いてしまう舞。俺が来たせいで、緊張の糸で
も切れたみたいだな。そんなふうに見える。
 「奇跡を待ってたって、起こるはずなんてないさ。奇跡は起こるものでは
なく、起こすものだから」
 そう言って舞に近寄り川の底から一掴みすると、俺は舞の手を開かせて重
ねた。そっと手を離して舞の掌に乗っていたものは、見覚えのある指輪。
 当然ながら俺が奇跡を起こしたのではない。さっき舞が俺に背中を向けた
ときだ、ウェディングドレスのヒラヒラの付いたスカートの裾に指輪が絡ま
っているのを俺は見付けてこっそり取っていたのだ。そして今、川底から取
る振りをして見せたって訳だ。ナイスなアイデアだろう?
 「これ………」
 舞が目を大きくして指輪を見つめている。
 「言っただろ。奇跡は起こるものじゃなくて、起こすものだって」
 俺は指輪を舞の手から取ると、左の薬指に嵌めてやる。
 「さぁ行こうか、お姫さま?」
 俺は手を引っ張って舞を立ち上がらせる。
 舞は俺の襟を引き中腰にさせると、唇を重ねてくる。
 「ご褒美、ご褒美」
 ドサッと俺に持たれ掛かってくる。寝ずに探し続けたのだから、体力も限
界だったのだろう。
 「おい、大丈夫か?」
 「うん、ちょっと疲れた……帰ろ」
 「ああ、帰ろう」
 俺はぐったりとした舞を抱いて、小川を這い上がり人の間を抜けてバイク
の脇に付ける。
 舞をシートに座らせ、俺もバイクに跨がる。
 「しっかり捕まってるだぞ、振り落とされないようにね」
 「大丈夫」
 俺の腰に両腕を回し、力なく抱き付いている。
 「さぁ、行こうか」
 お姫さまを鉄の馬に乗せて、俺は凱旋するのだった。




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