AWC Rock'n Roll Cinderella (9)Farlia


        
#1558/3137 空中分解2
★タイトル (GCG     )  92/ 3/31  14: 6  (179)
Rock'n Roll Cinderella (9)Farlia
★内容
               * * *
 太陽が頂点に近付くにつれ、暖かくなって行く。
 まだ正午には時間があるのだが、視界に入って来るレストランや喫茶店な
どには、昼の御飯を食べにでも来ているのだろうか?同じ制服を着たOLや
背広姿のおじさん連中が店中を占拠しているのが見える。
 そんな光景を眺めながら、人通りの多い歩道を歩いているのだった。
 が、舞のほうは先程のダイヤのことを根に持っているらしく、頬を膨らま
せて俺の2・3メ−タ−程後ろをツンツンしながら歩いている。
 俺が歩くのを止めると、舞も止める。俺が再び歩き出すと、舞も歩き出す
。そんな事を繰り返しているのだった。
 俺はタイミングを計って、クルッと振り返る。舞はキョトンとした顔をし
て一瞬だけ目線を会わせるが、直ぐにそっぽを向いて口を尖らす。
 俺はそんな仕種をする舞が、可愛くて仕方がなかった。
 「あのさぁ、そろそろ機嫌直さない?ツンツンしてると可愛い顔が台無し
になるぞ」
 事の原因は俺にあるのだが、貧乏な俺に宝石をねだるって方にも問題があ
ると俺は思っている。二・三万の安いやつなら考えもしたのだろうが……(
これでも考えるのだから四十五万など論外だ)。
 「それにさ、そんなに離れてちゃ危ないだろう」
 「困ったなぁ。そんなに拗ねてないでさぁ、機嫌直してさ……」
 「買ってくれたら機嫌直してもいい」
 「ど〜しても欲しい?一桁少ないやつなら、考えてもいいんだけど」
 別に舞の頑固さに折れたわけじゃなかったが、ついつい口が滑ってってい
うやつだ。一桁少なくなったと言っても四万五千円なのだ。これだけあれば、
俺だったら二か月は暮らしていける(もちろん家賃を除いての話だ)。
 「うぅ〜〜〜良い」
 眉間に皺を寄せて考え込んだ末に、舞は渋々ながらも頷いた。
 「よし決まり。店で駄々こねてもだめだからね。わかった?」
 先程の状況から判断して店で駄々をこねる可能性があると判断した俺は、
一応念を押しておくことにした。
 「うん、わかってる。でもお金持ってるの?」
 知っているくせに聞く事ほど嫌味な事はない。
 が、事実は事実。無いものはなかった。
 「俺が金持ってないこと知っるくせに、そんな事聞くわけ?」
 「お金ならここにあるからここから出せばぁ?」
 そう言って、がま口を見せる。
 「そりゃナイスなアイデ…………ア……否、やっぱりロ−ンだな」
 「ど〜して?どっちみち報酬金になるんだから………」
 「そうもいかないだろ、プレゼントなんだからさっ。大体プレゼントを自
分のお金で買っても何にも嬉しくないだろ?」
 いくら最終的に自分の金になるにしても、自分自身の金を使わねば買って
やることにはならないわけで……
 「プレゼント?なら、高いのだともっと良かったのになぁ」
 「ま〜たそんなこと言ってる」
 「へへっ、うそうそ。あたし、他人からプレゼント貰うの始めてなんだよ
ぉ。だからね、今とっても嬉しいのさっ」
 舞は一歩二歩と俺の前まで歩み寄ると、両手を俺の首に回して飛び付いて
来る。しかも、ここは歩道で人通りが多いものだから、これはやたら目立つ。
行き交う人々の視線があちらこちらから付き刺さり、今にも凍り付かんばか
りだ。それでも舞は一向に構わないようだった。
 まるで、何かのドラマのワンカットのようなものだった。
 「お〜い。恥ずかしいだろ〜〜。人目があるんだからさ」
 世間体なんてものは気にしてなかったが、人並みに恥ずかしさくらいなら
持ち合わせていた。
 「恥ずかしい?あたしは構わないよぉ。それともなに?あたしに抱き付か
れるのは嫌だっていうの」
 「いっ、いや別にそーいうわけじゃ………」
 しどろもどろ、しどろもどろ。
 「よし!それじゃ、これから四十五万円のダイヤの指輪を買いに行くぞ」
 「こら、なにが四十五万円のダイヤの指輪だ。その一桁少ないやつでしょ」
 「じょーだん、じょーだん」
 「言って良い冗談と悪いじょうだ……ん、グッ」
 後頭部に激しい痛みが走り、俺は両膝を地面に叩き付けるように落とした。
後頭部を押さえた掌に生暖かい液体のようなものを感じ取り、どうやらそれ
が血であることが分かった。
 振り返ると男が一人、鉄棒を片手ににやついている。どうやらこいつに殴
られたらしい。
 「キャア。瞬……」
 先程の一撃で意識が切れ掛かっていた。それでも舞の悲鳴を聞き取り、声
のする方向に目を移す。そこには男が一人舞を掴まえていた。
 悲鳴が途中で切れ掛かっているのは、その男に口を押さえられているため
だ。俺を殴った仲間の一人であろう事は容易に想像できる。
 舞の口を押さえている男は、嫌がる舞を車道に停車させてある車へと強引
に詰め込むと、さっさと走り去って行く。残念ながら、ナンバ−プレ−トを
確認する事すら出来なかった。なぜなら残っていた男の一人が更に一撃を与
え、俺が意識を失ったからだ。
 それでも、気を失う寸前に男の言った最後の一言だけは頭に残っていた。
 「お遊びはここまでだ。これは式の招待状だ、受け取りな」
 胸のポケットに紙を差し込まれたのは分かるが、内容を確認する事ができ
たのはかなり時間が経っており、しかも病院のベットの上だった。
               * * *
 俺は見知らぬ個室で目を覚ました。
 ここがどこか最初は気が付かなかったが、頭に巻かれた包帯と腕には点滴
をしていることから、どうやらここが病院の個室であると理解する事ができ
た。
 窓から差し込む夕陽から考えて、殴られてからだいぶ時間が経っているの
だろう。
 周りを見ても誰もいない。本来ならここで、舞がいるはずなのだがその姿
も見えない。どうやら舞を守ってやることは出来なかったらしい。
 俺は自分の力のなさに、憤りを覚えていた。
 舞を守れなかったばかりか、自分まで病院送りにされているのだ、情けな
いったらありゃしない。『何とか助け出したい』俺はその事しか頭になかっ
た。
 思い立ったら止まらない。俺は腕に付いている点滴の針を引き抜き、ベッ
トから起き上がった。
 「いててて」
 おもいっきり殴ってくれたらしくズキンと、後頭部に落雷でもしたかのよ
 それでも立ち上がると、ハンガーに掛けてあった自分の服に着替える。
               * * *
 時は遡る。
 俺が病院でおねんねしている一方で、舞は連れ去られた車の中で大暴れし
ていた。
 「下ろせ〜〜下ろしてったら」
 舞は車の後部座席で大声を張り上げていた。
 あたしを挟むように座っている男達を殴り倒してでも逃げてやろうと思っ
たが、それは出来ないでいた。それは先程試みてみたがあっさり躱され、そ
のお礼とばかりに腕を縛られていたからだ。
 「すこしは静かにして下さい。姉さん」
 あたしの右隣に座っている少し小太り気味の男が、振り向きもぜずにそう
 あたしは考えていた。別にお姉さん扱いされる覚えはなかった。
 「何であんたなんかに、姉さんなんて言われなきゃなんないのよ。それに、
どこへ連れて行こうっていうの?あたしは、早く帰りたいの!」
 「それはですね……」
 左隣の男が応える。
 「我等『竜人会』の三代目の命令により、姉さんを本部事務所までお連れ
しろと言う事でしたので、早速でしたがこうして参った訳です」
 そう言えばそうだった。決して忘れていたわけではなかったが、余りに突
然の出来事だった為になぜ自分が連れ去られなければならないのか判断でき
ないでいたのだ。もちろん、興奮していた事もあるが…
 『竜人会』だって、どうしよう。事の重大さに気が付いて、あたしは焦っ
ていた。賭に負けてしまったからには、結婚するしかない。そんな事は絶対
に嫌だったが、今のところ逃げようにも逃げれない状態だ。もっとも、いま
居る自分の状態からみて、逃げてもまたすぐに見付かるのは目に見えていた。
 「三代目も待っている事ですし、少し急ぐことにしましょう。おい、分か
ったな」
 右隣の男は、運転している男にどなりつけた。
 「はい、アニキ」
 どうやら、運転手は子分格なのだろう。言われた通り公道を走る速度とは
思えない速さで飛ばし始めた。
 ふと、疑問が舞の頭をかすめた。
 ”そういえば………三代目ってどんな人なんだろう?”
 良く考えてみたら、顔すら見たことがなかったのだ。手紙やら、電話やら
なら沢山貰ったが実際に会った事はなかったので、こんな状態で不謹慎かも
知れなかったが多少興味があった。
 「ねぇ、三代目ってどんな人なの?」
 応えてくれる相手は誰でも良かったので、さり気なさを装って『別に興味
はないんだけど、念のために』と言うような顔をしながら舞は、自分の疑問
をそのままぶつけてみた。
 「それはですね、姉さん……」
 車に乗っている『竜人会』の男達が、声を揃えて同じ言葉を掃き出す。
 一瞬男達にきまずい雰囲気が流れるが、舞は一向に構わなかった。早い話
が、誰でも良いから速く聞かせろと言う事だ。
 「まあ、それは会ってからのお楽しみと言うことにしておきましょう」
 右隣の小太りな男が、少しだけ間を置いて事えた。
 「どーして?」
 「実は…三代目に口止めされているんですよ。おっと、私がそのような事
を言ったと言うことは、内緒って事で頼みます姉さん」
 大の大人が恐縮している姿を見て、案外ヤクザ屋さんも怖い人ばかりじゃ
ないものだと舞は思い初めていた。
 どんな人なんだろう?もう一度考えてみた………やはり何も覚えがない。
そもそも一体どこで、あたしの事を知ったのかしら。知り合いだったのかな?
それとも、ただ向うが一方的にあたしの事を知っているだけなの?
 疑問は山のように出てきたが、どれ一つ取って見ても、自分が満足するく
らいの答えは出てこなかった。
 キキィィ。車が停止する。
 自分の考えに没頭している間に、どうやら到着してしまったらしい。フロ
ントガラス越しに大きなビルの入り口が見える。
 入口の脇に、表札を数倍にしたような大きな木製の看板で、縦書きに『竜
人会』と書いてある。
 「姉さん、着きました」
 そう言って、右隣の小太りの男が舞の腕を縛っていた紐を解くと、子分格
である運転手は一足先に外へ出てドア・ボーイの如く、ドアを開いてくれる。
 この世界では身分が高いとまさに『いたせりつくせり』なんだと、妙に納
 「さぁ。こちらへどうぞ、姉さん」
 ここから先は、どうやら子分格である男が先導してくれるようだ。
 「ここから先はあなたが案内してくれるの?あの人達は?」
 「アニキ達は忙しい身なので………」
 一体何に急がしいのかまったく分からなかったが、これはごく普通の人に
は分かるはずもない世界だと言うことにしておいた。
 「じゃじゃあ、行きましょうか、姉さん」
 ヤクザ屋さんのわりに、丁寧な言葉使いだ。これなら普通の生活もできる
 良く見てみたら服装も髪形も全然普通だし、どこにでもいそうなお兄さん
風の姿。どうやら今風のヤクザ屋さんは、怖いだけではやって行けないらし
い。
 「………」
 コクンと返事はせずに、舞は頷くだけにしておいた。
し、無駄な労力のような気もしたので止めておくことにした。
 なぜそんな気分になったのかと言うと、何となくこの男が憎めなかったの
と、多少ではあるが心にゆとりができたためでもある。




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