AWC 旅立ちの朝               木村ガラン


        
#1526/3137 空中分解2
★タイトル (AJC     )  92/ 3/22   2:23  ( 57)
旅立ちの朝               木村ガラン
★内容

さようなら、アラン君。
と、由美子さんは言った。
由美子さん、君はどこかにいくのかい。
何を言うのよ、私はどこにも行かないわ。
よかった。君がどこかに行ってしまうなんて、僕にはとても堪えられない。

さようなら、アラン。
と、母親が言った。
お母さん、あなたはどこかに行きますか。
お前はなにを言うんだい。母さんどこにも行きません。
ほっとしました、お母さん。どこにも行かないでください。決して、死んだりしないでください。

さようなら、アラン。
と、石橋君が言った。
石橋くん、君はどこかに行ってしまうのかい。
馬鹿言うなよ、アラン君、おいらはどこにも行かないぜ。
ああ、よかった、石橋くん。君は僕の親友だから、居なくなったら悲しいよ。

さようなら、アラン。
と、父親が言った。
お父さん、あなたは会社にお出かけですか。
いいや、今日は日曜日。一日、のんびりしていよう。
そうですか、あなたが居ないと困ります。僕は父親が居ないと困るのです。

さようなら、アラン兄さん。
と、妹が言った。
おや、妹よ。どこかに遊びにいくのかい。
いいえ、お兄さん。私はどこにも行きません。今日は一日、編み物します。
そうか、よかった、妹よ。兄さんお前が心配だから、どこにも行ってはいけないよ。

さようなら、アラン。
と、祖父が言った。
おや、お爺さん、今日はお加減よろしいですか。
おかげさまでな。お前こそ達者でな。
そうですか、それは何よりです。ええ、もちろん僕も元気です。

さようなら、アラン。
と、愛犬が言った。
おやおや、僕の愛犬のジョン。お前はどこかにお散歩かい。
いいや、おいらの鎖は短くて、どこにも行く事できません。
そうかい、それは気の毒に。だけど、ほっとしたよ。お前は僕の愛犬だからね。

これで、アランにさよならを言うものは居なくなった。
みんなにさよならを言われたアランは、それから少し考えた。

アランは玄関に立ち、言った。
さようなら、みなさん。

みんなは言った。
さようなら、アラン

だから、アランは出かけなくてはならなくなった。
そして、アランは家を出て、どこかの町に消えていった。

                          終




前のメッセージ 次のメッセージ 
「空中分解2」一覧 木村ガランの作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE