AWC しあわせ


        
#1473/3137 空中分解2
★タイトル (VMM     )  92/ 2/24  22:13  ( 55)
しあわせ
★内容
しあわせ

 戦後45年も経つと、もう「戦後」と言うにはふさわしくないように思われる。
それはそうだろう。少なくも昭和20年以降に生まれた者にとっては、戦争など
は、遠い歴史上の出来事と化しているのである。私が日露戦争を考えるのと同列
のものであろう。世の中は一見落ち着いているし、物は豊かで溢れているし。テ
レビを見ていると、そこでは平気で卵の投げ合いをしたり、うまそうなカレ−を
顔に塗りっこしている。飢えている民族が見たら、なんと言って嘆くことか。
 私たちは、通勤に2時間以上もかかるところにマイホ−ムを持って、「兎小屋
だよ」と自嘲しながらも幸せを味わっている。これが中流意識と言われるものの
実態である。しかし、今の日本は戦争こそ長い間絶えてはいるものの、子供たち
の受験戦争などを見ていると、新型の神経戦でもしているのではないかと思って
しまう。折角の平和なのだから、もっとのんびりと世の中を送ればいいと思うの
だが、なかなかそうはいかないものらしい。
 ところで、日本は世界で1、2を競う長寿国だという。が、長生きして本当に
喜んでいる人は果してどのくらいいるのだろう。みんなが持たなければいけない
はずの敬老の心などは、戦争と一緒にとっくの昔にどこかへ行ってしまっている。
それどころか、年寄りと一緒に暮らすことを堂々と厭うのだから、参った、参っ
たである。日本は〈親に孝〉ということが、徹底的に教育されてきたのではなか
ったか。そうだったのに、米国などで家族が核化しているのを形だけ真似ようと
するのだから困る。こんな風潮は明らかに戦後のものであり、おそらく戦後の日
本独特の悪弊ではないのか。「日本人の良さ」の一つを失ってしまったのだ。韓
国に通じている人の話によると、その国ではとにかく家族の絆が強く、親への孝
行心は驚くほどのものだという。
  こんな世の中であれば、せめて自分は人に頼らず、何とか無事に暮らしていき
たいと考えてみる。だがしかし、老いてある日突然に、あの恐ろしい痴呆症に冒
されない保証は誰もしてくれない。だが、痴呆症の心配をすること自体が痴呆性
思考と言われそうである。だって痴呆にでもなってしまったら、自分が誰だかさ
え分からなくなってしまうらしいのだから・・・・
 さてはて、人の幸せって何のことだ、と本気で考えてみた。もちろん何も答え
は出て来ない。そもそも、いつも同じ答えをちゃんと用意しているほどに自分の
「幸福観」なるものが出来あがってもいない。だから、自分は何と幸せなことか、
とでも思っているしかないし、そういうのがけっこう本物の幸せなのかも知れな
い。ありがたや、ありがたやの精神を貫くしかない。
 「健康こそが幸せ」、と病める人は思いつめているだろう。いや、「毎日肉を
食えたら、最高の人生だ」、と貧しさのどん底の人は嘆くだろう。夢多き少年は
「宇宙パイロットになれたら至上の幸福」と考え、目を輝かすだろう。「息子と
でも、娘とでも、一緒に暮らせたら死ぬほど幸せじゃ」と、一人たたずまう老人
は溜息をつくだろう。だから、何が本当の幸せか、その答えはあり過ぎるし、も
しかするとひとつもないのかもしれない。また、「幸せ」というものの感じ方も
ピンからキリまでだろう。信州の俳人・小林一茶は『下下も下下 下下の下国の
 涼しさよ』と詠っている。これは、【上国(江戸)の暑さとくらべれば、下国
(江戸からみた信州・信濃の国)はなんと涼しくて住みよいことか】という趣旨
で詠まれたものだろうが、実際のところは「せかせかしないで、世の中の底辺の、
またその下の底辺で、のんびり暮らすのもなかなか清く涼やかで、これこそ本当
の幸せな暮らし方なんだよ」と『清貧の心』を言っているのかもしれない。
  それはともかく、昔から、世も末だ、という言い方がある。どうもいよいよ本
当に末であるぞよ。今の若者の多くが冷たい人間になっているのは、それなりの
理由があってのことのようだ。要するに、「情けは人の為ならず」とは、人に情
けを施すことは、決して(その人の)為にはならない、だから人に情けをかけて
はいけないということなのだそうである。やあ恐れ入った・・・・・・?!
 ああ、我ひとと尋め行きて、涙さしぐみ帰り来(き)ぬ、か。
                                            埼玉県飯能市 滝沢基典
                                            (長野市(旧共和村出身)
                                              ID VMM07471




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