AWC お題:「少女刑事」 鴉降


        
#1375/3137 空中分解2
★タイトル (QWG     )  92/ 1/ 5  19:59  (190)
お題:「少女刑事」          鴉降
★内容
 その少女がわしン家にやってきたのは、霜月二十三日、国民の祝日であった。
 門口に翻る日本国旗は、そもそも、一人息子であるこのわしが日本で二人目の
「少年警察官」になってから、非国民扱いされるのを恐れたとうちゃんの浅知恵
で掲げるようになったのだ。そして、さらに念を入れて、国旗様の下に整列し、
家族三人揃って叫ぶ、
「ヒノマルが好きっっっっっ!!」
 叫んだとたん、いつの間に近づいたのか、わしの菊座にジゴク突きをかますセ
ーラー服のねーちゃん(といっても、小学生か?)
「ふんっ!」
わしは思わず身をくねらせ、
「なによっ、あんた!?」
あら、ついおネエ言葉になっちゃったわ。
 腹が立つやら、気持ちいいやら、きっ、と流し目で睨むと、これがまた、あと
5〜6年も経って、しもぶくれの顔がほっそりすれば、『さんたふぇ』して世間
を沸かせそうなぽっちゃり美少女やんけ。わしの野生の局部がパオ〜ン!と立ち
上がった。
 それには目もくれず、少女はわしら3人を品定めする目つきでながめまわし、
「ふん、わりにまともそうな家族じゃん」
とほざいた。な、なまいきなっ!
 わしは怒りに震える局部で少女の柔らかい頬をいきなり打ち据えた(ヒトはこ
れを必殺コーガンムチと呼ぶ)。
 少女はなぜか鼻をつまみ、頬をおさえて倒れたが、すぐさま立ち上がり、黒い
手帳を構えて叫んだ、
「アタイを何とこころえるっ。『少女刑事凌虐罪』で懲役50ねぇぇぇぇんっ!
それに『1週間洗ってない局部罪』を加えて、死刑っっ!!」
 す、するどい! わしの『パオ〜ン』は一瞬ひるんだが、すぐに立ち直り、そ
の鼻で少女の手から手帳をひったくった。
「こざかしいっ! そのセリフを使えるのはニッポン広しといえども、わしのほ
かにはただ一人・・・・」
いいよどんだのは、それがどう見ても本物の警察手帳だったからだ。わしは中を
開いて見た。
「むむっ、これは確かに本物・・・・警視庁捜査五課『こおんな まわり子』」
そう読んだ瞬間、警察手帳はわしの手から消え、あっと思ったときには、少女刑
事・小女まわり子の手の中に吸い込まれていた。手帳はゴムヒモで繋がれていた
のだ。なぜ気がつかなかったんだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
 まわり子は眉を逆立てて言った、            オメ
「『こおんな』じゃないわよっ!『おめ』って読むのよ、『小女まわり子』!
無知! 無教養!!」
 な、なにおうっ! それを知られちゃあ、ただ済ますわけにゃいかねえ。
 もう一度『パオ〜ン』を取り出そうとすると、横からとうちゃんがそれをムン
ズと掴んだ。
「いてててっ! 何するんだ、とうちゃん!」
「す、すまん」
 とうちゃんは、手の力をゆるめたが、『パオ〜ン』を離そうとはしなかった。
その手が小刻みに震えている・・・・ああっ; ダメ;
「し、し、しょ、しょ・じょ」
とうちゃんは焦るとどもる。
 まわり子は頬をぽっと染めて言った。
「失礼ね。アタイ、まだ11歳よ。処女であたりまえじゃないの」
 とうちゃんは、そうじゃないと手を振り、
「そ、そ、そ、その、け、け、け・・・・」
 少女刑事の頬はますます赤くなった。
「毛もまだ生えてないわよ!」
 わしは、ぷっ、と吹き出した。かあちゃんが、わしのほっぺたを抓りながら、
とうちゃんの代わりに言った、
「少女刑事が、いったい何の御用かしら?」
「ぐうぅ〜っ」
けったいな返事や、と思ったら、まわり子の腹の虫が鳴ったのだった。しかし、
当の彼女はすました顔で、
「それは朝ご飯食べながら話しましょ」
そう言って、すたすたと家の中に入りかける。
「こ、こんガキぁーっ!」
 かあちゃんがゲンコツを振り上げて殴りかかろうとするのを、わしが押し止め
た(彼女の生意気なところが可愛ゆく思えてきたのだ)。とうちゃんは、妙にオ
ドオドしている。

 食卓を整えて、かあちゃんが言った、
「あいにくねえ、ウチは、祝日の食事は質素に、ってのが家風なの」
 わしが、
「ちっ、今日もお新香だけか」
と呟くと、かあちゃんがまた抓った。わしのほっぺたがこんなに膨らんでんのは、
しょっちゅうかあちゃんに抓られるせいじゃないのか。
「おいしそうだわ。いただきま〜す」
 お? こいつ、案外、殊勝なとこもあるじゃん。
 かあちゃんも目を丸くして言った、
「まあ、まわり子さん、お行儀がいいこと」
 まわり子は、わしを冷たい目でジロッと見て、言った、
「警察官は食べ物に文句を言わないものよ」
さっき『可愛ゆい』って言ったの、取消しっ! べえーっ! 横向いて舌を出し
たら、すかさずかあちゃん、それを箸ではさんで、思いっきり捩じ上げた。
「あででで! とふぉろで、おまへ、わひン家に何の用があふんひゃ?」
「モグモグモグ・・・・おふぁわり!」
 口の中に飯を入れたまま、まわり子が言った。こ、このアマっ、ヒトの話しを
聞けよおっ!
 結局、まわり子は3杯おかわりをした。こ、こいつ、食うのが早えーっ!
「ごちそうさまあっ。お茶っ!」
 図々しい奴っ! さすがに、茶を淹れるかあちゃんの手も震えている。
 茶を一口すすると、まわり子が言った、
「まあ、祝日はお茶も質素なのね」
「じゃかぁしわいっ! さあ、ご飯も食べたし、もういいでしょっ? いったい
何の用なのよ!」
かあちゃんがキレかかっているのに、このアマ、しらっとしてる。
「それなんだけど、・・・・・・あら、おとうさんは?」
 そういえば、とうちゃんがいない。
「あら、どこへ行っちゃったのかしら、朝ご飯も食べずに」
と、かあちゃん。
「それに、大事なお客様が居るってのに」
と、まわり子。けっ、自分で言うか、ふつう?
「困ったなあ、おとうさんが居ないのに、話しちゃっていいのかしら」
「あの人のことなの? だったら、いいから話しちゃってよ、どうせ電車で女の
尻触るかなんかしたんでしょ? どうせ大したことできゃしないんだから」
「でも、やっぱり少し待ってみるわ」

 昼食時になっても、とうちゃんは帰って来なかった。まわり子はご飯を5杯食
べた。

 3時過ぎても、とうちゃんは帰ってこない。まわり子は時計を見て、そわそわ
しだした。そして、
「あの」
腰を浮かしかげんにして、言った、
「そろそろおやつの時間じゃない?」
 かあちゃんはこめかみに静脈を浮き出させながら、怒りを堪えて立ち上がった。
「おせんべいしかないけど」
じらされるほどに、とうちゃんに何の用があるのか、気にかかってくるのだ。
 かあちゃんがせんべいを取りに台所に行っているうちに、まわり子はかってに
茶箪笥を開けて、
「あら、虎屋のヨーカンがあるじゃない! アタイ大好物なのぉ」
 わしはカッときたが、虎屋のヨーカンが食べたいので、黙っていた。
 まわり子のやつは、おやつまでおかわりをした。

 夕食の時間が近くなって、やっっっっと、とうちゃんは帰ってきた。かあちゃ
んもわしもほっとした。
「ちっ!」
まわり子が小さく舌打ちをした。
 とうちゃんはぐでんぐでんに酔っぱらっていた。かあちゃんとわしが玄関に出
るなり、とうちゃん、ろれつのまわらない口で、怒鳴った、
「ま、まぁ〜り子はらあ、俺のむしゅめじゃあっ! ひっく、も、文句、あっか
ーっ! 俺とコマリの子じゃーっ!!」
 わしらは、とうちゃんが何を言っているのか、すぐには理解できなかった。後
ろで、まわり子の声がした。
「あらら、自分で言っちゃった」
 かあちゃんが、はっとした顔で振り返った。
「この人、何て言ったっていうの!?」
 まわり子はうすら笑いを浮かべながら、言った。
「アタイがおとうさんの娘だって言ったのよ。アタイのかあさん、小鞠っていう
の。小女小鞠」
 かあちゃんの顔からさっと血の気が引いた。卒倒するんじゃないかと思ったが、
だっ、と奥に駆け込み、すぐにバケツに水を汲んで戻ると、玄関にへたり込んで
いるとうちゃんの頭から水をぶっかけた。
「な、なんば、すっとかぁっ!」
不思議と、お故郷ナマリになると、レロらない。
 とうちゃんは、靴を脱いで、それをかあちゃんに投げつけた。かあちゃん、ひ
らりと身をかわし、バケツをとうちゃんの頭にぶつけた。とうちゃん、額を切っ
て血を流しながら、かあちゃんに組み付く。
 一家はじまって以来の乱闘に、わしはビビって後退りしながら、まわり子に訊
いた、
「お、おまえ、ほんとうにわしの妹なんか?」
「あら、同い歳だもん。姉かもよ。あんた、何月生まれ?」
相変わらず薄笑いを浮かべたまま、あいつが言った。
 出た! 『YAWARA』ファンのかあちゃんの背負い投げ!
「きゃっ!」
と、悲鳴を上げながらまわり子が引っ張ってくれたので、わしは巻き添えを食わ
ずにすんだ。ね、ねえちゃ〜ん!
「なつくなよ、気持ちわりーな!」
一転、冷淡にもねえちゃん(?)は、わしを突き飛ばした。
 かあちゃん、とどめのニードロップ・・・・ところが、勢い余って、居間に転がり
込んだ。酔っぱらいの強みは、感覚がマヒして、苦痛を感じなくなることだ。と
うちゃんは、ここぞと立ち上がり、倒れたかあちゃんに無慈悲なストンピングを
5・6回見舞うと、台所に飛び込んで・・・・包丁を持ち出した!
 顔中ミミズ腫れをつくり血だらけになって、悪鬼のごとき形相のとうちゃんを
目の前にして、わしは声も出ない。さすがの小悪魔・まわり子もおびえてわしの
背後に隠れる。
 逆上して我を失ったとうちゃんが、うずくまるかあちゃんの背に馬乗りになっ
て首筋に包丁を突き立てた。
「ぎゃっ!」
 叫んだかあちゃんの首から、まっ赤な血潮が吹き出した。それをまともに顔に
浴びて目潰しをくらったとうちゃんが、包丁を握ったまま、よろよろとわしらの
方に向かってくる。
 に、逃げなくちゃ!
 ところが、まわり子ががっちり腰にしがみついているために動けない! 振り
払おうとしたが、恐怖に膝ががくがくして、体にも力が入らない!
 そのとき、何を思ったか、まわり子が片手をわしの股間に伸ばしてタ○キンを
愛撫した。たまらず、
 パオ〜〜ン!!
 必殺コーガンムチが勢いよく飛び出して、とうちゃんの手から包丁を払い落と
した。のは良かったが、わしの『パオ〜ン』の先っちょの皮も少し切れてしまっ
た!
「いてててっ!」
でも、包茎でよかったっ!
 などと思っているうちに、まわり子は、すばしこくとうちゃんに体当たりして
突き倒し、後ろ手に手錠をはめた。
 同じ警察官でありながら、情けなくも腰を抜かしてしまったわしを、
「どきな!」
と突きのけて、まわり子は110番した。
 とうちゃんは、やがて駆けつけた警官に殺人犯として引き渡された・・・・・・
  それにしても、自ら事件を引き起こして自ら解決する・・・・うーむ、少女刑事・小女まわり子、あなどれないヤツ!

                            【おわり】





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