#1365/3137 空中分解2
★タイトル (NKG ) 92/ 1/ 2 0:11 ( 88)
信じることさ〜♪必ず最後に……/ラヴコメディは突然にVer0
★内容
1991年12月31日午後8時45分頃。中谷家。
「きゃーKANちゃーん」
中谷水紀(18才。自称、可憐な女子高生)はテレビに向かって叫んでいた。
「水紀姉!うるさいよ。どうせまた紅白でも見られるんだからギャーギャー騒ぐな
よ。」
弟の高貴(14才。姉に反抗期のガキとからかわれる純な中学生)は、こたつに
半分潜ってせんべいのカスを散らかしながらぼりぼりと食べている。
「あんたの、そのせんべいの方がうるさいわよ!」
ここは中谷家の居間である。今、ここにいるのは長女の水紀と次男の高貴、そし
て次女の夕紀である。だが、夕紀は姉や兄と張り合える程の性格ではないので、お
となしく黙っているだけだった。長男の和貴はカノジョと初詣に、父親母親祖母は
客間でNHKを見ている。
この一家にテレビは二台しかなかった。
そして、今年もまた最後のチャンネル争いに負け「フジテレビ」のバラエティを
見る事ができなかった高貴であった。
今、テレビに映し出されているのは「TBS」の日本レコード大賞である
「たしかに歌はいいよな……でもギャーギャー騒ぐほどの顔…げっ……いてーよ!
水紀!!」
水紀の手にはテレビのリモコンが握られていた。このチャンネル争いは、リモコ
ンの取り合いと言っても過言ではないだろう。しかもこのリモコン、旧型の物なの
でずっしり重くフレームも頑丈にできている。その分、凶器にもなり得るのだ。
高貴は、どうせ九時になれば姉の水紀は客間の方へ移るのだからそれまで我慢し
よう、と思っていたのだが最後の最後になって姉にはむかい攻撃を受けてしまった。
「高貴には分からないんでしょ!あのKANちゃんの嬉しそうな顔……そして、あ
の歌に込められた想いが……」
水紀は、テレビから流れるエネルギッシュなボーカルに感動しながら、その遊ん
だ右手で高貴の頭をポンポンと叩いていた。
「み…水紀姉。頼むから、人のこと叩きながら自分の世界に入るのはやめて………」
1992年1月1日午前11時25分頃。同、中谷家。
元旦の日、一番のねぼすけは高貴である。
姉の水紀に、高貴の分の年賀状を手渡されるまでずっと布団の中にいるのだ。
「た・か・き・ちゃーん。」
水紀はわざらしく甘ったるい声を出す。
「……うーん、なんだよ。年賀状なら机の上に置いといてよ。」
高貴はうざったそうに布団の中に顔を隠す。
「…お・ん・な・の・子からきてるわよ。」
一瞬、高貴のが反応し布団がばさっと開かれる。
「ひとみちゃんだって。」
水紀は1枚の年賀状を天井にかざしてひらひらと動かす。
「水紀!毎年毎年同じギャグをやるんじゃねえ!!……そいつは小学校からのダチ
の小山人実だろうが!!!」
高貴はそう怒鳴ると再び布団にくるまる。
「あっそう。今年はもう一人女の子からきてるんだけどなぁ………」
その言葉に高貴は反応を示さない。姉のからかいにあきれたのだろう。
「反応ないんなら、読んじゃおうかな。……あけましておめでとう。今年もよろし
くね。…あらっハートがついてるわよ。あんたもやるじゃん。……えっと、去年は
いろいろとありがとう。ほんとうに中谷君のおかげです。今年もがんば…うひゃ、
またハートだ。………穂島澪子。」
高貴は名前を聞いたとたん起き上がり際に水紀の持った年賀状をひったくる。
「穂島さんて確か去年近所に越してきたあの子?」
「…そ…そうだよ……」
高貴は赤くなりながらぼそっと答える。
「高貴!チャンスよ。チャンスだわ。今から彼女にアタックしなさいよ。」
水紀は握り拳を目の前に持ってきて、何か面白い事を始めるかのように高貴を促
す。
「水紀姉。安易だよ!安易すぎる!!たかが年賀状一枚で、そんな……」
水紀の言葉にうろたえる高貴。心の中はうれしさでいっぱいなのだが、姉のせい
で素直に喜べない。
「……そうねえ…電話で挨拶ってのもどんくさいし…そうだ初詣に誘いなさいよ!」
水紀は手をポンっと叩いてニコっと微笑む。
「み…水紀姉。それってものすごい安易な考えで、ものすごく古くさくないかい?」
高貴は、姉のおせっかいを嫌がってはいても、心の中では穂島澪子となんとか会
いたいと思っていた。
「高貴!!去年のレコード大賞よ!!」
水紀は腰に左手をあて、右手で窓の外を指す。
事態は完全に水紀ペースにはまっていった。
「心配ないからね〜♪君の勇気が〜♪」
水紀ははずんだ声で歌いながら高貴の肩を押していく。
「よし!」
水紀にのせられた高貴は、完全にソノ気になっている。
「信じることさ〜♪必ず最後に チキンカツ!!」
「み…水紀!!せっかく人がその気になってるのに!!」
水紀:「高貴!愛よ!愛は勝つのよ。」
高貴:「頼むから遊ぶのは自分の世界だけに
して………………」
夕紀:「高兄ちゃんって………………不幸。」
というわけで、今年も らいと・ひる の作品をよろしく。