#1363/3137 空中分解2
★タイトル (KPG ) 91/12/31 20: 6 ( 28)
「氷梢」 由布子
★内容
「乾いた響きだった。」
「加納氏のご機嫌は?」
「大願成就の気分だろうな。まさか彼女があのステージに上がるとは思わな
かった。」
「あのステージを作ってから何年になるの?」
「8年だ。」
「今まで一度も。」
「そうだ。一度も彼女は上がらなかった。」
「なぜ?」
「加納氏は、留学中の彼女を無理矢理日本に連れ帰った。そして結婚した。
子供はフランス系の混血だ。」
「高伊達さんは?」
「彼は帯広にいる。」
「急に?」
「そうでもないな。最近は故意に地方の病院を選んでいる。看護婦達は疑心
暗鬼になっている。」
「少し嬉しそうよ。」
「隠せないな、朱鷺子には。」
「どうして私に会うの?」
「その目に会いたい。」
「あなた変わっているわ。私の目を嫌う人が多いのに。」
「そうだろうか、離れられなくなる場合もある。」
「自惚れているわ。この女を理解できるのは僕だけだって。」
「じゃあ、なんて言えばいいんだ?」
「私は鏡のようにあなたの心を映すだけ。あなたがあなたでいられるから。」
つづく