AWC 「氷梢」                       由布子


        
#1355/3137 空中分解2
★タイトル (KPG     )  91/12/29  12:50  ( 30)
「氷梢」                       由布子
★内容

  「この間はごめんなさい。」
  加納夫人の顔は、女に成りかけの美少女のように見えた。
  「いいえ、私は別に。これ、お返しします。」
  「あら、気にいらなかったの?」
  美少女は満足げな甘い笑顔で瞳を光らせている。
  「このブラウスは素敵過ぎて、私にはあわせるスカートも上着もありません
   から。」
  「まあ、朱鷺子さんはユニークね。」
  「変わっているかもしれません。」
  「高伊達は馬鹿な男でしょ?」
  「さあ、私には分かりません。」
  「正直におっしゃっていいのよ。」
  加納夫人の光は多少の暗色が混入された状態に変わった。
  「彼は彼なりに、真面目なのかと思います。」
  「彼が真面目ですって。本当にそう思っているの?」
  「ええ。」
  加納夫人の意識が辺りに拡散されていく。
  一流ホテルの客は全てが美しさを装っていたが、今、この場所には加納夫人
  を凌ぐ人間はいなかった。
  「あなたは男というものを知らないのよ。」
  「そうかもしれません。私は加納さんに高伊達さんには会わないようにと言
   われたのに会いました。高伊達さんには、二度と加納さんに近づくなと言
   われました。それなのに今また、ここにいます。馬鹿なのは私です。」
  「高伊達はあなたにそんなことを言ったの?」
  「はい。加納さんに近づいたら殺すと言われました。」
  「まあ、ほほほほ、ああ、おかしい。もっと詳しく聞かせてくださらない。」
  「他には何もありません。」
  「いいわ。言いたくなければ。」
                                                                  つづ




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