#1342/3137 空中分解2
★タイトル (MEH ) 91/12/22 1: 4 ( 79)
名探偵金田2 クリスチーネ郷田
★内容
死刑執行2日前
死刑執行まで、あと2日しか無かった。
S氏は無実の罪だというのに、有名な探偵、金田一郎の見事な推理で犯人にされてしまった。
S氏のアリバイは完璧なものだった。
それはそうだ、彼は犯人ではないのだから。
誰が考えて見ても犯人だった男(彼は日本刀を持って町を歩き回っていたところを捕ら
えられた。その時男は、日本刀から血をしたたらせてニヤリと笑った……。誰がどう見
てもこの危ない男が犯人なんだけど、名探偵金田の鋭い推理によって無罪になってしまったのだ。金田は見事にそのへんのツジツマを合わせたのである。実にすごい探偵だ。)
S氏は懸命に叫び続ける。
「俺は無罪だー!本当に無罪なんだってば!」
しかし、その声に答えるものはいない。S氏は諦めきれない。
「なぜ、無罪の私が死ななければならないんだよー、イヤダヨー……」
彼の目から大つぶの涙がこぼれだす。
S氏の妻が、そんな様子を見つめている。
そして、一緒に大つぶの涙をこぼす。
「ああ……あなた!あなたはもう死んでしまうのね……」
「ああ、おまえか……息子の事は頼んだぞ。俺が死んだら、早いとこ再婚しろよな」
「あ、あなた!」
二人は泣き続けるのであった。
死刑執行1日前
「いよいよあしたは死刑執行日だな」S氏は絶望の中、目覚めた。
もう、ジタバタしても仕方がない。彼はもう半ばあきらめた、すてばちな気持ちになっ
ていた。
「なぜ無罪なのに死ななくてはいけないんだー!なぜだー!」
彼は檻の中で叫ぶ。
隣の檻から罵声が聞こえる。
「ウルセー!てめえが悪い事をしたからだろーが」
「うわー!だから無罪だって言ってるだろうが」
「嘘つくな馬鹿!おまえは死刑だ」
「無罪なんだよー、信じてくれってばよー誰でもいいから」
「まだ言うか、この嘘つき!」
「ホ・ン・ト・ウだって言ってるだろうがこのやろう」
いくら力説してもだめだった。
そして明日はいよいよ、彼が死んでいく日であった。
死刑執行日
S氏は電気イスに座り、目隠しをさせられた。
「ああああああ、いよいよ俺は死ぬんだなー、無実なのに。小説だったらこんな時に助
かるんだよなあ。あっ、これは小説だから、ひょっとしたら助かるかも知れないぞ。期
待してもいいかな?でも、作者はいつもキャラクターを殺すから、俺も殺されるだろう
な……。ああ!いやだ、俺はまだ死にたくないんだよー。息子を誰が養えというんだ、
えっ、おい。そのへんの事を考慮してくれえ!助けてくれえ、頼むう」
そして、いよいよ電気イスに電気が流されようとした瞬間の事だった。
「待ちなさい!」
声の主は、名探偵の金田一郎だった。
「あっ……あなたは、金田さん!ひょっとして」
「いや、Sさん。遅れてすまなかった」
「うわ、うわあ。ひょっとしてひょっとして」
「Sさん、そんなに喜ばなくていいよ。照れるじゃないか」
「ありがとう金田さん!」
「……そうか、遅れないで良かった。そんなに喜んでくれるなんて思っても見なかった。これで君も安らかに死ねるな。」
「……へえ!?」
「なんだ?どうしたんだそんな顔して。私はSさんの死刑執行を見学に来たんだよ?」
沈黙が周囲を包む。
「う、うわーーやっぱり、ちょっぴりでも期待した俺が馬鹿だった!」
S氏はその後、しきりにくやしがったと言う。
END