AWC       帰環            木村ガラン


        
#1319/3137 空中分解2
★タイトル (AJC     )  91/12/ 8   0:35  ( 23)
      帰環            木村ガラン
★内容

 南方に行っていた息子が復員してきた。長い間待っていた一人息子だ。
 「ただいま」
 玄関に立つ男は、昨日もその前もこうして帰ってましたよ、というように自然だった。 微笑しているその目は、そうそう確かに息子だ。
 「おかえり」
 母はそう言って出迎える。ほーら、やっぱり帰ってきたじゃないか。
 「もうすぐ、晩ご飯だからね」
 息子は茶の間に入っていく。
 六畳の茶の間はすでにいっぱいだった。
 みんなテーブルのまわりにぐるりと座って、テレビを見たりしている。
 その内何人かは、入ってきた男に気付き、軽くあいさつする。
 「やあ」
 「ただいま」
 その男達の顔は全く似ていない。その数は、日に日に増えていく。
 息子は毎日帰ってくる。
 母はそのたびに我が子を、優しく迎えていく。そりゃそうだ、長い間その帰りを待ちわびた息子だもの。
 彼女の息子の遺骨はジャングルの奥深くで朽ちていく。
 茶の間の息子は、いつまでも増え続けていく。
 「おかえり、もうどこへも行くんじゃないよ」
 母は穏やかな微笑を浮かべている。
                            終




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