AWC ぶらさがった眼球 最終章   スティール


        
#1268/3137 空中分解2
★タイトル (RJM     )  91/11/11  22:12  ( 82)
ぶらさがった眼球 最終章   スティール
★内容

            第二十一章  時の彼方に

          人がたくさん死ぬはずだった。だが、不思
         議なことに、胸の痛みがなかった。それどこ
         ろか、何かの呪縛から解き放たれたような解
         放感があった。私は運命に従い、使命を果た
         したのだ。人類を救済不可能と言われた矛盾
         に満ちた苦悩から救ったのだ。私がいままで
         闘っていたものにとうとう勝った。過去に誰
         もが打ち破れなかった呪縛から、人類を救っ
         たのだ。人類の不要な部分は切り捨てられ、
         生き残った人間たちが、新しく歴史をつくる
         だろう。

          EVEの顔は真っ白だった。だが、快方に
         向かっているようだ。良かった。DOGが朗
         報をもたらした。

         「イーブイイーハ、ニンシンシテ、イマス。」

          私は喜んだ。「俺の子か」

         「マダ、チチオヤハ、フメイ」

          私はDOGを思い切り蹴飛ばして、倒した。

          私はコクピットに行き、宇宙に旅立つ準備
         を始めた。すぐ逃げ出すつもりだった。あと
         何分かで、オート・パイロットで発進するよ
         うにして、EVEのところに戻った。

          EVEは目覚めていた。たどたどしい言葉
         で、喋った。

         「エーディーエーは、死んだの?」
         「ああ。」私は答えた。私がボタンを押した
         とは、とても言えなかった。

         「かわいそう。」EVEは、泣きそうな顔を
         した。

         「死んだものはもう還ってこない。過ぎ去っ
          た過去は、もう取り戻せない。私がそれを
          乗り越えたように、EVEもそれを乗り越
          えるんだ。」

         「わかった。でも、つらい。」EVEの目は
          子供のように、涙をこぼした。

         「これから、また、宇宙に旅立つんだ。私の
          役目はもう終わった。もう、二度と、還っ
          てこれない。」

         「もう、還らないの?」とEVEは聞いた。

         「もう、還らない。いままで、出会った奴で
          まともな奴は一人もいなかった。みんな、
          他人にどんなひどい事をしても、その事に
          すら、気付かないような奴ばっかりだ。俺
          は独りでいい。EVEがいれば。」

         「何処に行くの?」

         「好きなことに打ち込むさ。時間旅行の研究
          にね。」

          オート・パイロットで船が動き出した。

         「時を超え、僕たち二人の魂が、全宇宙を包
          むんだ。」

         「まあ、素敵ね!」EVEは微笑んで、抱き
         ついてきた。

          私達はもう、ノア6号が時を超えているよ
         うな錯覚に陥っていた。窓の外の暗く冷たい
         宇宙の景色が私の目に入ってきた。



          【 ぶら下がった眼球 】【 了 】




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