AWC パラレル>「鷹司」−温泉に行こう!− かきちゃん


        
#1236/3137 空中分解2
★タイトル (ENB     )  91/10/17  23:11  (191)
パラレル>「鷹司」−温泉に行こう!−   かきちゃん
★内容

 JR某駅から三時間に一本というバスに揺られて二時間半、旅館が二軒だけ
というつつましやかな温泉町。
 もちろん、カラオケ屋さんもパチンコ屋さんもストリップ小屋もなーんにも
ない。山奥の、ホントにただの温泉である。

 ところでここの二軒の旅館、両方とも別に何の変哲もない、かなりがたがき
てるのを除けばごくごく普通の温泉旅館。両方ともちゃーんと露天風呂も備え
ているし、おなじみのマッサージ器も設置してある。
 立地条件だって、小さな通りに向かい合って建っているのだから全く互角、
料金も同じ、さらに食事だって似たようなもんである。
 設備面で違うといえば「どぶろく屋」のほうが卓球台があるってことぐらい。
 しかし、宿泊客数の差ははっきりしている。
 「せいしゅ屋」の方が断然多いのである。
 その秘密は……。
 おっ、ちょうど女子大生風の三人連れが降りてきたのでさっそく後をつけて
みることにしよう。

  「あっ、あったあった、せいしゅ屋!」
一番ケバケバしい感じのぼでこんギャルがまずのたまった。
  「でも、ホントに何もないところねえ。」
続いてちょっと童顔のおとなしそうな娘が素直な感想を一言。
 「そこがいいんじゃない。こういう小ぢんまりした温泉の方がゆっくりくつ
ろげていいのよ。」
最後に一番しっかりもん、て感じのおねえちゃんがしめくくって、
 「私が文江、ボディコン娘が早紀、おとなしめの娘が恵美子っていうのよ。」
と読者に紹介もしてくれた。
 しかし早紀はディスコもなにもないのが(というより男を引っかけられそうもないの
が)不満なようだ。

 「ごめんくださーい。」
ちょっと建て付けの悪い引戸をうんしょと引いて文江がごあいさつ。後の二人
がトコトコとついてくる。
 申し訳程度のフロント(フロントと呼ぶのが恥ずかしくなる)の奥からゴマ
シオ頭のおっさんが現れて、
 「いらっしゃいませ。」
と応対する。
 文江がチェック・イン(と呼ぶのもまた気が引けるが)の手続きをしている
間、早紀と恵美子がひそひそ話をしている。
 「ねえねえ恵美子、ここ、汚いわねえ。向いの旅館の方がよかったんじゃな
いの?」
 「んー、でも文江がちゃんと調べてこっちに決めたんだから間違いないと思
うけど……。文江ってこういう事調べるの、天才的だから。」
 「でもねえ……。」
 「あんた達、私がちゃーんと調べてきた事が信じられないの?」
チェック・インを済ませた文江が突っ込んできた。
 「でもお……。」
 「『でもお』じゃないの!この温泉の二つの旅館は設備・料金・その他ほと
んど変わりなし。ちゃーんとPC−VANのAWCの変な小説の冒頭部分に書
いてあるんだから。」
 「じゃあ、どっちでも良かったってこと?」
恵美子がもっともな疑問を提出した。
 「私はイイ男がいっぱいいるところが良かったあ!」
この際早紀は放っとこう。
 「これはある確かな情報なんだけど、こっちの旅館の方が人気があるらしい
のよ。一部の通の間で。」
と文江はちょっと声を落とす。
 「えっ?どんなとこが?」
 「うーん、そこまではわかんないの。でも絶対こっちのほうがいいっていう
噂だから……。」
結局文江もあまり確信はないらしい。
 「ふーん。」
早紀も恵美子もそうとしか言いようがなかった。

 「へーえ、部屋はまあまあね。」
 というか普通の旅館だったら、まあ、普通の部屋だなあって感じだが、この
旅館の中だと結構いい部屋に思える。
 三人とも荷物を降ろし、文江がお茶を入れようとお茶ときゅうすに手を延ば
しかけたが、気の早い早紀が、
 「さーっ、早く温泉に入いろっ!」
と言いながらしゅぱっとぼでこんすーつを脱ぎ、早くも浴衣に着替えている。
 仕方がないな、とばかりに肩をすくめて文江と恵美子も浴衣に着替える。
 一面に「せいしゅ屋」と染めぬかれた浴衣を着るとなんだか酔っぱらいそう
な気がする。
 混浴なんだそうだが、宿の親父の話だと今日の宿泊客は文江一行だけなんだ
そうだ。
 三人は安心して露天風呂に向かった。

 「うーん、いい気持ち☆」
 広ーい露天風呂につかっていると三人とも天国気分。
 もちろんお風呂だから三人とも裸である。
 結構遊んでそうな早紀の乳首はきれいなピンク。逆に私は男なんか知りませ
んよ、て感じの恵美子の乳首は黒ずんでいる。もっとも、乳首の色は遊んでる、
遊んでないということとは関係ありませんよ、と嘉門達夫が「哀愁の黒乳首」
で悲しく歌っているが。
 それにしても文江のは濃いなあ(何が?)。
 「へーえ、恵美子の胸、いい形してる!」
と早紀が恵美子の胸をむんずとつかんでみたりする。
 「きゃっ、なにすんおよ、もお。」
と恵美子が胸をおさえてほっぺたを膨らます。
 「なにやってんの、あんたたちは。」
冷静な文江が言うが、
 「あーら、なんだ、文江もさわって欲しいの?うりうりうり。」
 「ちょちょちょちょっと、なにすん……、や、やめてってば!。」
一気に修羅場と化そうとしていた露天風呂。
 いきなりガラガラっと、と言いたいところだがミシミシっと脱衣場の戸が開
いた。
 他の宿泊客はいないはずなのに、と三人の目は脱衣場へ……。

 「きゃーーーーーーーーっ」
 悲鳴の三重唱。
 脱衣場から出てきた人物は30歳チョイ位の男、しかもすっぽんっぽん。
その男は三人が騒ぎまくるのにもかまわずまっすぐこちらに向かって来る。
 文江と恵美子は湯船の中でじたばたしている。
 その時早紀は気付いていた。
 この男、三人のぴちぴちGALを目の前にして勃起していない。
 今まで相手にしてきた男たちの倍はありそうな逸物はだらりんとしている。
 この男、イ×ポ、それともホモ?
などと考えているうちに男は目の前に来ていた。だらりんとしたモノが目の前
にある。
 「お背中を流しましょうか?」
男は言った。何の感情もない声である。この状況でそんな声を出されると結構
不気味だ。
 文江と恵美子は背中を向けてキャーキャー言っている。男の声は耳に入って
いないようだ。
 しかし早紀はこの男に興味を引かれた。
 この私の美しい裸体を目の前にしても勃起しない男。
 何の感情もない声。
 のっぺりとした無表情。
 早紀は決心した。
 「ええ、お願いするわ。」
 湯から出て木製の椅子を引き寄せ、男に背中を向けて腰掛けた。
 男は持っていた桶にお湯を満たし、タオルと石鹸を両手に持って構えた。
 早紀は後ろを振り向いてみた。
  さっきまでの無表情とはうって変わってキリリと引き締まった表情でタオル
と石鹸を構えている。
  できる!
 なんとなく早紀はそう思った。
 さて、男はついに早紀の背中を流しにかかった。
 タオルが早紀の背中をすうーっとこする。
 「ああ〜ん。」
早紀の背中に電流が走った。気持ちいい!快感!
 さらに絶妙のタッチで背中中をタオルが這回る。
 「あ、あ、あ、あ、あーっ、い、い、いい〜、あ、そんな……。」
 早紀は興奮島倉千代子!って感じで感じまくっていた。
 ん、ん、ん、背、背中だけじゃなくて他の所も……。
早紀はたまらなくなって男の方に向いて座り直した。しかし男は、
 「お嬢さん、後ろを向いてください。背中が流せません。」
と言いつつ早紀の肩をがっしと掴んで後ろを向かせ、背中を流し続けた。
 この男、本当に純粋に背中を流しているのである。
 背中を流すために生まれてきたような男だ。
 彼の背中流しには愛があった。
 だからこそこんなに感じるのである(弓月光の『甘い生活』みたいだ)。
 「あっ、いっ、うっ、あ゛ーーーーっ」
ついに背中だけで早紀はイッてしまった。
 その光景をみていた文江と恵美子。
 下半身をうるうるさせながら、
 「わ、私も……。」
 かくして三人とも天国に連れて行ってもらっちゃったとさ。

 ぐったりしている三人を後目に男は去ろうとしていた。
 「ま、待って!」
ようやく我に還った早紀が叫んだ。
 「あなたはいったい……。」
男は引き返してきて早紀の前にしゃがみ込んだ。
 「私は鷹司。この旅館で背中を流す仕事をしています。」
俗に言う「三助さん」である。
 「ありがとう、とっても気持ちが良かったわ。」
鷹司はにこっと笑って(結構いい笑顔している)、
 「こちらこそどうもありがとう。僕はお客さんにそう言って喜んでもらえる
のが一番嬉しいんです。」
 「この旅館にお客さんが集まるのって、あなたがいるからなのね。」
 この温泉の二軒の旅館。
 「せいしゅ屋」の方が人気がある理由が今わかったような気がした。
 しかし鷹司は、
 「いいえ、僕なんかまだ未熟です。今度、日本中の温泉に修行の旅に出るつ
もりです。」
 「じゃあ、ここを出るっていうの?」
 「ずっとじゃありません。いつか必ずここに帰ってきます。日本一、いや、
世界一の三助になって!」
 早紀はじーんと胸にこみ上げて来るものを押さえて、鷹司の手を取り、
 「あなたなら、絶対世界一になれるわ。あなたの背中流しには愛がある。今
度帰ってきたら絶対私の背中を流してね。」
 「ありがとう、約束します。世界一になってあなたの背中を……。」
男泣きに泣いた鷹司、早紀にくるりと背を向けた。
 その背中に一対のアザ。
 「もしかしてあなたは、天使?」
 思わずつぶやく早紀。
 その言葉に照れ笑いの鷹司。
 「ああ、これ?いやあ、ここのマッサージ器、気持ち良くってねえ。毎日使
ってるうちにこんなアザが出来ちゃった。」
 「まあ。」
 笑い崩れる二人。
 その背後にまだぼーっとしている文江と恵美子。
  すっぽんぽんの四人。
 頑張れ鷹司、負けるな鷹司、世界一の三助マン。
 君の未来は明るいぞ。
 世界が君を待っている!

                        − おわりです −





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