#1208/3137 空中分解2
★タイトル (GKE ) 91/ 9/25 14:20 (143)
メランコリーの小鳥(2) うぃず
★内容
第二章 傷ついた小鳥
1
それから一週間後、亜紀子は精一杯の笑顔で二人に言った。
「あたしね、ふられちゃったの」
「ん?そうだったの?」
「松永君たら、ひどいの。あたしに返事もくれないの」
「・・・・」
「ね・・ひどいでしょ・・・、知美、麻子」
二人は、亜紀子の目から流れ落ちる涙を見て、どうすることもできなかった。
次の日、二人は夜の町に遊びにいくことにした。
とは言っても、ただ、麻子が古い友達のパーティに誘われたので、一緒に行くことにしたのだ。
パーティ会場はディスコだった。
亜紀子は、そんなところ行ったこともないので、精一杯派手な服を着て行ったのだが、それでも会場に行ってみると地味な方だった。
「この子は亜紀子、で、こっちが知美」
麻子が二人を紹介している。
回りを見ると、みんな二十歳くらいの人ばかりだ。
そして、麻子はすぐ踊りに行った。
「あたしたち、ちょっとこの雰囲気には乗れないね」
知美が言う。
「そうよね、やっぱり大人の雰囲気ってやつじゃない?」
そう話しているとき、二人の男の人が二人のとなりに座って言った。
「ねえ、君達、もっと飲みなよ」
「いえ、私たち、まだ・・」
「未成年だって言うんでしょ、わかってるよ。大丈夫だって。少しくらい飲めるんでしょ」
そういって、カクテルを二人の前に出した。
「カンパーイ・・」
いままで飲んだことのないカクテルは、亜紀子の体をしびれるように熱くさせた。 「亜紀子、あなたも踊らない?」
頬を上気させた知美が、亜紀子を誘う。
「うーん、やめとく。あたし、ここにいるから、踊ってきていいよ」
「ったく、亜紀子は。じゃ、気が乗ったらおいでね」
そういって、知美は、二人の男をつれてホールにいった。
時間がたつにつれて亜紀子は何かさびしくなってきた。
「あーあ、一緒に行けばよかったかな・・・」
ふと横を見ると、横の男と目があった。
その男は背が高く、ピンクのシャツを着て金のネックレスをかけている。
いかにも、ここに似合いそうな男だ。
そう、亜紀子が考えていると、その男が亜紀子のとなりに座った。
「あの二人に、おいてきぼりか・・・」
「あの二人が帰ってくるまでのもうぜ」
「・・・」
「カクテルか・・・。俺がおごるから、ウイスキーにしよう」
「あの・・・、あたしもうお酒は・・」
「いいから」
そういうと、男は、ウイスキーの水割りを二つ頼んだ。
しばらくして、ウイスキーの水割りがきた。
「さあ、飲もうぜ」
初めて飲むウイスキーは苦くて、喉にしみた。
「ウイスキーも飲めないのか・・・」
そう笑う男にばかにされたくなくて、亜紀子は無理にウイスキーを喉に流し込んだ。
「俺は、浅野宏。大学2年だ」
「私は・・・」
「上村亜紀子だろ?さっき聞いていたよ」
「はい」
「こんなところお嬢ちゃんのくるところじゃないぜ」
「・・・」
「ま、いいさ。あれ、もう飲まないのかい」
そう男にせかされて、もう何杯飲んだだろうか。
そんな亜紀子を見て、浅野が言った。
「踊ろう」
「いえ・・・」
浅野は、そういう亜紀子を無理につれていった。
亜紀子は、かなりのアルコールのせいで、抵抗できなかった。
もう、そこからはよく覚えていない。
何曲踊っただろう。
チークも踊ったような気がする。
2
気がつくと、亜紀子は車のシートに乗っていた。
運転しているのは浅野だった。
「あの・・・。おろして下さい」
そういっても、浅野はニヤニヤ笑うだけで、車を止めようともしなかった。
「浅野さん。帰ります」
そういったとき、車は止まった。
けばけばしいネオンの前だった。
身の危険を感じた亜紀子は逃げようとした。
しかし、酔っているのか力が入らない。
そんな亜紀子の手をひいて、浅野はそのまま、その建物の中に入っていった。
気がつくと、亜紀子はベッドに寝かされていた。
「お目覚めかい。お嬢ちゃん」
笑いながら、上半身裸の浅野が言った。
亜紀子は逃げようとしたが力が入らなかった。
そして、そんな亜紀子をニヤニヤ見ながら、浅野は亜紀子のボタンをはずし始めた。
「やめて・・・下さい」
そして、浅野が亜紀子のブラジャーに手をかけたとき、亜紀子は渾身の力をふりしぼって浅野の急所を蹴った。
「ううっ・・、この・・」
そして、亜紀子は逃げた。
気分が悪くて今にも吐きそうだった。
バッグを置いてきたのにもかまわず走った。
ドン!
角を曲がったとき、亜紀子は何かにぶつかった。
そして、そのまま、気を失った。
3
気がつくと、亜紀子は公園のベンチに寝かされていた。
「あ、気がつきましたか。よかった」
「あなたは・・・?」
「あ、僕は通りすがりの学生です。いやー、びっくりしましたよ。突然、ぶつかってきて、倒れちゃってそのまま動かないんですからね。それにみたら、服は乱れてるし・・」 それを聞いて亜紀子はあせって服を見たが、ボタンはきちんと止められていた。
「あ、動かないほうがいいですよ。飲み過ぎたんでしょ。今、何か飲みものでも買ってきますから」
そういえば、吐き気は止まっていたが、喉が灼けるように乾いていた。
ベンチから起きあがってみると、頭の中心がズキッと鈍く痛んだ。
「はい。これでいいでしょ」
と、その男の子は缶ジュースを差し出した。
亜紀子はそのジュースを味わいもせずに飲み干すと、この男の子に迷惑をかけたことを思い出した。
「ごめんなさい。いろいろ、ご迷惑を・・・」
「あ、いいんですよ。気にしないで下さい」
「あの、あたしは上村亜紀子。あなたは?」
「神谷淳、と言います。今高校2年です」
「あたしと同じなのね」
「え?そうなんですか」
「はい・・・」
「それで、さっきはあんなに走ってどうしたんですか」
淳は亜紀子の顔色が変わったのを見て、この話題がまずかったのを知った。
「あ・・、それで、家はどこなんですか?」
亜紀子は話をそらしてくれたのでほっとして、家の住所を言った。
「えーっ?そこなら、歩いて帰れる距離じゃありませんよ」
亜紀子は、バッグをホテルに置いてきたことを思い出した。
「・・・・・」
「タクシー呼びましょう。タクシー代は僕がもちますから・・・」
「・・・、ごめんなさい。必ず返しますから」
そう言って淳から住所を聞いて、亜紀子はタクシーで帰った。
親には、盛り上がった、と言うことで何とかごまかした。