#1073/3137 空中分解2
★タイトル (MEH ) 91/ 8/ 6 23:11 ( 58)
浅草の隈雑 クリスチーネ郷田
★内容
吉本くんは、浅草をぶらつくのが好きだ。古巣に帰ったような気分になるのだ。
浅草の町は気取っていない。なんともイキだ。
「格好つけんなよ、新宿、渋谷!べらんめい原宿め!冗談じゃねえぜ、六本木。
」吉本くんは思う。
「てやんでい、格好つけんじゃねえよ他の町め、バーロー!」と、浅草も叫ん
でいる。
外人観光客が増えて、浅草もちょっとした観光地になっている。彼らは浅草を
勘違いしている、と吉本くんは感じた。
彼は雷門をくぐり、仲見世をうろつき、浅草寺でひといき入れる。
ヘビ石とか、日本刀とかよくわからないものが売られている。なんだあれは。
キセルなんか売って。誰がキセルなんて買うんだろうか?やはりユカタなんか
は外人観光客が買っていくんだろうなあ…。彼らにとっては、いいおみやげに
なるわなあ。
浅草寺境内はお参りの人であふれかえっていた。線香のにおいがこちらに漂っ
てくる。
髪の毛に、その煙をなでつけるおばあさん。
それを見て喜ぶ外人さん。
オー、ビューティフル!アメーィジング!とばかりに、外人さんはその光景を
写真に撮る。外人さんの青い目が、キラキラ輝く。その腕には、モジャモジャ
の毛が生えている。恐らく胸毛はそれ以上であろう。さらに股間の毛はすごい
よ、きっと。あっ、いやなものを想像してしまった。でも、モッくんよりモジ
ャモジャだよ、きっと。
そういえば「モジャ公」って漫画があったな、藤子不二雄の漫画で。モジャ公
なんて言葉が頭に浮かぶとは、まったくモジャ公な外人さんだ。吉本くんは思
った。今日から君の名前はモジャ公だ!よっ、モジャ公!調子はどうだい?
勝手に外人さんに名前をつけてあげるとは、ゴッドファーザーですか、あんた
は。
吉本くんは、うれしそうな外人さん(モジャ公)を見つめてこう思った。
やいモジャ公、東洋の神秘を見たって顔つきじゃねえか。チッチッチッ、甘い
ぜ。毛唐にこの浅草がわかるかい…。へへーん!
なに言ってんだ、おまえは。作者は思った。
吉本くんは思う。
ここはキラビヤカな所ではない。
隈雑な所なのだ。浅草は、エログロナンセンスの町なのだ。要するに人のにお
いのするところは、ドロドロした空気が漂うものなのだ。
吉本くんは、観音様に手を合わせる。
たった10円しか賽銭箱にいれなかったくせに、あれこれお願いした。
まったく欲張りなやつだ。
観音さまを拝んだ吉本くんは、もっと別の観音さまを拝みたくなった。
さっそく足は六区へ向かう。
途中、吉本くんは「舟和」でいもようかんを買う。これがうまいんだ。浅草の
味は雷おこしだけじゃない。このいもようかんもうまいのだなあ。
吉本くんは、六区に来た。
フランス座。かつて欽ちゃんや、ビートたけしがいた「フランス座」は今日も
開いていた。
吉本くんはその中に消えて行った。