#968/3137 空中分解2
★タイトル (UYD ) 91/ 5/25 15:26 ( 87)
一枚のカード KEKE
★内容
一枚のカードということで私が思い出すのは、以前つき合ってい
た絵理という女のことだ。
セックスするようになって一ヶ月程したころだろうか。その日もい
つものように絵理を布団に押し倒して、いざことにおよぼうとした
時だった。
絵理がさっと一枚のカードを私の顔のところに突き付けた。
「何これ」
と私がいうと彼女は
「読んで」
といった。
私はそのカードに目の焦点を合わせた。
『一発 1000円
二発 2000円
…………………』
とそのカードには書いてあった。
「何これ?」
私はあほのように繰り返した。
「これからは一回するごとにお金を貰うことにしたの」
「へっ?」
私はまだ意味がよく分からず、もう一回何これ?と繰り返した。
彼女がいうには、セックスをただでさせるのはもったいない、お
金をとるべきであるということらしい。
「しかし俺たちは恋人だぜ」
私は激しく抗議した。
これから何回するかは知らないが、そのたびにいちいち金を取られ
てはかなわない。私は貧乏人なのだ。
「親しき仲にも礼儀ありというでしょ」
「はあっ!」
私は怒るべきか哀願すべきか判断に迷った。
「それにちゃんと割り引きもしてあるんですからね」
「割り引き?」
「そう。よーく読んでごらんなさい」
私はカードを手に取ってようく読んでみた。
『三発 2500円』
と書いてある。なるほど、一発千円、二発二千円、で、三発三千円
のところを割り引きして二千五百円か。つまり五百円割り引いてあ
るわけである。なかなか良心的ではないか。(どこがじゃ)
それにしても血液型O型の女は現実的だというが、ここまでやる
とは思わなかった。現実的を通りこして、ドケチというべきではな
いだろうか。
それにセックスというのは男と女の共同作業であり、どちらかが一
方的に得をするという関係ではない。男が気持ちいいなら女だって
気持ちいいのである。それなのに何で男が金を払わなければならな
いのだ。
とはいえど、それは理屈である。現実にセックスを拒絶されたら、
ちんちん押えてのたうち回るのは私である。最初は何とかしてこの
条件を撤回させようとしたものの、無駄と分かると受け入れてしま
った。
「ところでな、絵理。ここには三発までしか書いてないが、四発以
上したらどうなるんだ」
「えっ、四発以上したら?だってこうちゃん(私の愛称)今までの
最高が三発だったじゃない。たいてい一発したあと、二発目の途中
でふにゃふにゃになるんですもん。この前やっと三発したときには
花火でも打ち上げたくなったわ。だから、四発なんて必要ないんじ
ゃない。」
「どうだろう。四発したときはタダということにしないか」
「タダ?」
「ほら、カレー屋でカレー5皿食べたらタダなんてよくあるじゃな
いか。だから、四発やったらタダということにしようよ」
「そうね」
絵理はその大きな目をくるくる回した。
「いいでしょう。四発やったらタダということにしましょう」
しめしめと私は思った。いったふりして素早くコンドームを取り替
えればいいのである。この手を使えば四発でも五発でも自由自在で
ある。
ところが絵理はいちいちコンドームを調べて、いったかいかなか
ったか確かめるのである。ふつうここまでやる?
というわけで、私は絵理とつき合っていた間じゅう貧乏していたの
である。
その絵理ともいつしか関係が絶えた。これという決定的な理由は
なかったのだが、いつの間にかつき合わなくなった。おそらくどち
らもお互いに飽いたのだろう。
その絵理が最近ひんぴんと電話をかけてくるようになった。また
関係が復活するのは時間の問題かと思われる。
そこで私が恐れていることがひとつある。彼女がまたあのカードを
出すのではないかということだ。
それにはおそらく次のようなことが書かれているかもしれぬ。
『諸物価値上げのため料金を値上げしました』
以前つき合っていたころよりもっと貧乏人になっている私はそれを
払えず、ふたりは清い関係になるやもしれぬ。それでは困る。
というわけで、こんど電話がかかったら、私は次のようにいうつも
りである。
「タダでやらせろ」
これを拒絶されたら、私は決然というつもりである。
「割り引きしてーな」