#1832/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (JYC ) 89/ 9/19 15:45 (119)
B型プロレス小説 前田日明対ブルーザーブロディ 永山
★内容
「あの」時の対決が実現したと思ってください・・・。
先に入って来たのはブロディだ。「移民の歌」の曲にあわせて、チェーンを
振り回しながら入って来た。
「WHAU、WHAU、WHAU、WHAU、WHAU、・・・」
一斉にテープが投げ込まれる。続いて反対側から前田が入って来た。ガウンは
着ていない。リングサイドまで来て、前田がブロディを見上げる形となる。い
つもと違い、ブロディはつっかけない。激しいにらみ合い。大歓声が沸き起こ
る。前田がようやくリング内に入った。
「・・・ブルーザー、ブローディ!」
「・・・前田ー、あきぃらー!」
リングアナにコールされても、二人はにらみ合いをやめない。レフェリーのボ
ディチェックの時も同様だ。
「カーーーン!」
ゴングが鳴った。円を描くようにゆっくりと周り始める両雄。ブロディが立ち
止まって、大きくスタンスを開き、片手を高くかざした。それに応じて前田も
手をあわせる。次の瞬間、ブロディは前田の左腕を捻り、手刀を落とした。観
衆がどよめく。続けてブロディは前田の顔をかきむしり、髪を鷲掴みにしてコ
ーナーに打ちつける。レフェリーが割って入り、離れる。前田は頭を振って気
合いを入れ直した。
「ファイッ!」
レフェリーが再開を促すと、またもブロディは手をかざした。前田もそれに応
じる・・・と、見せかけていきなりブロディの右膝の内側にローキック!2発、3発と蹴ると、ブロディは右手を高くあげ左手を頭にやり、大げさに(?)痛
がってみせる。前田はブロディの腕を取ってアームホイップ。続いてアームロ
ック。ブロディは髪をかきあげながら呼吸を整えているようだ。ブロディが立
ち上がった。そして前田にチョップを連打!前田も2発は耐えたが3発目にな
って、手を放した。逆にブロディが腕を取り、ロープに振った。かえって来る
ところを、カウンターのキングコングキック!前田、ダウン。しかし、受身は
取っている。その前田めがけ、ブロディはギロチンドロップ。さらに抱えあげ、
ワンハンドボディスラムでたたきつけた。再度ギロチンドロップを狙ったが、
これは前田がよけて失敗。前田は尻餅をついているブロディの顔面めがけ、キ
ックを繰り出す。1発は受けたものの、後はカバーする超獣。そして立ち上が
りながらキックを受け止めると、前田を押し倒した。前田が怒って突っかかる。
組み合って、ロープ際にもつれる両雄。レフェリーが割って入る。ブレークの
瞬間、前田がエルボーをブロディの肩口に打ちつけた。今度はブロディが怒っ
て掴みかかる。またも割って入るレフェリー。何とか試合再開となるが、もう
喧嘩ファイトの様相を見せ始めた。いきなり蹴りに出る前田。それを受け止め
ようとするブロディ。しかし徐々に後退する。ファンの大歓声。前田がブロデ
ィをロープに追いつめると思われたが、ブロディは自らロープに飛ぶと、その
反動を利して前田にキングコングキック!前田の顔面にクリーンヒット。ダウ
ンする前田。その首を掴んで引きずり起こし、相手の腕を自分の首にかけさせ
たブロディ。そう、ブレーンバスターの体勢だ。一気に引き抜いて、叩きつけ
る!覆いかぶさるブロディ。
「ワン、ツ・・・。」
カウント1.5で返す前田。前田を引きずり起こしもう一度ブレーンバスターを狙
うブロディ。しかし、引き抜こうとした瞬間を前田は体勢を入れ換え脇固めに
移行した!しかし、関節技を研究していたかブロディ、前方に回転して脱出。
素早く立ち上がり、チョップを打ち下ろす。だが、腕を放さなかった前田はブロディを捕まえフロントスープレックスで投げた!さらに引きずり起こし、キャプチュードでブン投げる!前田、カバーに入る。
「ワン・・・。」
カウント1ではね返すブロディ。ここら辺は意地の張合いだ。前田は再び蹴り
を繰り出す。ところがブロディは足を取ると、立ち上がって前田を引き倒し、
両足を抱え込んだ。逆エビ固めか?いや、ジャイアントスウィングだ!1回、
2回・・・、14,5回転してやっとブロディは前田を放り投げた。さらに前
田を抱えあげ、アバランシュホールド!そしてコーナーに下がり、大きく片手
を振りあげ、アピールをする。ブロディが走った!キングコングニードロップ!
カバーに入るブロディ。
「ワン、ツー、ス・・・。」
ギリギリのところで前田の足がロープに届いた。信じられないと言った顔のブ
ロディ。前田を引きずり起こし、ロープに振ったかと思うとドロップキック!
ふっ飛ぶ前田。ここでブロディはヘッドロック。怪力で締め付ける。しかし前
田は力を振り絞って、腰に手を回しバックドロップ!バランスが崩れ、両者後
頭部を打ちダウン。ブロディが僅かに先に起き上がり、前田をロープに振って
ドロップキックを狙った。だが、今度は前田がロープを掴んだため、ヒットせ
ず。ダウンしたブロディの後ろに回り、チキンウィングフェースロックを狙う。
しかし、怪力のため極らない。仕方なく裸締めに移行する前田。しっかりと足
も固めた。観衆から、
「お、と、せ!お、と、せ!・・・」
の声も沸き上がる。だが、ブロディコールも負けていない。そして目を疑うよ
うな事が起こった。足を固められているにも関わらず、ブロディは立ち上がっ
たのだ。そしてゆっくりとロープに近付く。ロープに手が届きロープブレーク。
[WUOAAAAAAAAAA・・・・・・・・・・・・!」
ため息にも似た歓声が沸き上がる。驚きのためか、やや責めあぐねた感じの前
田。そこをすかさずブロディはチョップ、水平チョップだ。虚を突かれた前田
は後退。それでも踏んばって、チョップを返す前田。ブロディのやや大振りの
チョップをかわすと、うまく腰を抱えた。すかさず、サイドスープレックス!
だがブロディは何事もなかったように起き、前田の腰を捕らえ、お返しのサイ
ドスープレクッス!そしてダウンした前田にエルボーを落とすと、コーナーに
かけ登った。フライングニードロップか?だが気が付いた前田は起き上がって、コーナー上のブロディにパンチ、そしてデッドリードライブで投げ捨てた。そ
れだけかと思ったら、ブロディが膝をついて立ち上がった瞬間、前田が動いた。
ニールキック、一閃!ブロディのこめかみにヒット!ふらついて動きまわりな
がら、苦しむ(?)ブロディ。前田は蹴りを出して、ブロディの動きを止める
と、スロイダー!仰向けに倒れたブロディにギロチンドロップを狙った前田。
が、僅かなところでよけられた。反対にブロディは前田を抱えあげ、シュミッ
ト流バックブリーカーで何度も叩きつける。さらに頭上に掲げ、アルゼンチン
バックブリーカーだ。そしてなんと、そのままバックフリップ!しかし、これ
は体勢が悪すぎた。両者、ダウン。やはり、前田の方がダメージが深い。ブロ
ディは距離を取ると、前田めがけてフットボールタックル。続けて前田を起こ
しロープに振ってキックを狙ったが、かわされ、逆に前田がロープの反動を利
したエルボー。やけに大きく後ろに下がったと見えたブロディ、自らロープに
飛び、前田に対し、ボディアタック!同時に前田、無意識の内にと思われるニ
ールキックを繰り出した!両者ダウン!
驕@「ワーン、ツウ、スリー、フォウ、ファイブ、シックス、セブン、エイト、
ナイン・・・、テン!」
「カン、カンカンカン。」
沸き起こる歓声。
「23分07秒、両者KO、23分・・・。」
新・格闘王対超獣革命の対決はドローに終った。意外にも(?)試合後、握手
を固く交わす両雄。試合後のコメントで、ブロディは
「マエダがインディペンデントグループ(独立団体・UWF)時代にした発
言を聞いたときは、本当に腹が立って、奴のところに上がってやろうかとおも
った程だった。しかし、奴の言った事もまんざら嘘ではないな。だが、今度や
ったときはブロディレヴォリューション(革命)の勝利となろう(笑)。」
と語ったと言うことだ・・・。
−了−
プロレスファン以外には、何の事やらさっぱり分からないでしょう。すみま
せん。前田は今、ブームを起こしていると言われているUWFのエースで、彼
が新日本という団体にいたとき、対決を望まれていたのが、このブロディです。
ある時、この二人の対決が決まったのですが、ブロディ選手がトラブルを起こ
し、来日しませんでした。その後、二人は異なる団体のリングに上がるように
なり、昨年の夏、ブロディ選手はプエルトリコにて、レスラー仲間に刺され、
死去してしまいました。夢の対決は本当に夢となったのです。その夢をせめて
文字の上でも実現させようと試みたのが、これです。