#1810/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (JYC ) 89/ 9/ 4 16:41 ( 83)
犯人当てショート 赤い屋根 永山
★内容
登場人物
・巽延尾(たつみのぶお) ・扇藍造(おうぎらんぞう)
・孔雀麻人(くじゃくあさと) ・牟田綿子(むたわたこ)
・八竹不二男(やたけふじお) ・私<探偵役>
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「あ、まただああ。雨漏り、修理しとかないとだめじゃないか。」
が言った。
「ごめんなさい。いつも、なおさなくちゃ、とは思っているんだけど・・・。
一週間くらいかかると思うけど、やっておくわ。」
この場所の提供者、牟田綿子が答えた。ここは、モグリの雀荘。巽、扇、孔雀、
八竹の四人はいずれも二十代後半の麻雀狂。独身。職業はそれぞれ、新聞記者、
製薬会社社員、某科学研究所所員、メッキ工場工員である。牟田は水商売をや
っていて、結構儲けている。その金と他の男四人が共同出資して、このモグリ
の雀荘をつくったのだ。徹夜を考え、寝泊まりできるスペースも備えているの
だが、今では、こちらに住んでいるような奴もいる。とにかく、持ち主は、一
番金を出した牟田だ。その代わり、使用料を取っている。もちろん、一般のと
比べて、格安である。
「雨降るって、天気予報で言ってたよ。今度からは、気を付けといてよ。」
孔雀が女っぽい言葉で言う。
「修理するんだったら、屋根の色も塗り直してくれないかな。真っ赤っての
はどうも・・・。」
「わかったわ、八竹さん。考えとく。」
時が進んだ。巽の負けがこんでいる。
「よしっ!勝負!」
巽が牌を投げた。
「アッタリーーー!!!」
八竹が神経を逆撫でする−−少なくとも巽にとって−−声で言った。
「チクショー。残りは借りだっ!やめた!」
「おまえ、いつもそうだなあ。勝った時だけ、その場での現金支払いを要求
するくせに、自分が負けると、これだ。いい加減にしろよ。」
「あれ?そんな事、言っていいのかな?扇よ。いや、おまえだけじゃない。
孔雀も、八竹も、綿子さんだって、俺に命令は出来ないんだぜ。立場を忘れる
な。」
そうであった。この五人が知り合ったばかりの頃、綿子は店を出すために借り
た金に苦しんでいた。そこで、金貸しを殺すことを考え、巽を除く三人に相談
を持ちかけた。巽を避けたのは、彼が新聞記者だったからだ。四人は、口裏を
合わせて、ほぼ完全なる犯罪を実行した。だが、偶然にも巽に見られてしまっ
たのだ。物的証拠はないものの、巽が記事にすれば、四人は大打撃を受ける。
ここに殺意が生じる余地があった・・・。
「もう、寝るぜ。布団、ちゃんとしてるんだろうな、綿子さんよ。」
「ええ。今日は、寝酒、いります?」
「当然だ。」
巽が乱暴な口調で答えた。彼は寝つかれない質で、いつも酒を飲む。正確には、
寝酒ではなく、夜中に起き出して、一杯飲まないと眠れないのだ。「私」が彼
に誘われ、ここに来た時もそうであった。何故、誘われたかと言うと、巽は負
けがこむと、すぐにやめてしまうので、ゲームが続けられなくなり、その時の
ために呼ばれたのだ。
切り上げて、寝ることになった。いつの間にか、彼らの寝る場所は、決まっ
たそうだ。いつも同じ所に、みんな寝るので、私は、隅っこに追いやられた。
「あーあ。ここにも雨漏りだ。おい、本当になおせよ。」
巽がブツブツ言っている。見ると、彼の枕元に、ぽっつぽっつと雨が落ちて来
る。その側に、彼の寝酒がおいてある。やがて、みんな、床についた。だが、
私は隅のためか、全く、寝つかれず、起きていた。その時、何かの気配を感じ
た。巽が起き上がり、酒を呷っている。そのコップを置き、また横になった。
ところが、置き場所がずれたのか、その酒に雨が入っていく。それから、また、
時が流れた。うとうとするのだが、眠れない。がはっ!と、物音。まただ。巽
が起き上がって、残りの酒を呷っている。ところが、ここからは違った。巽が
何やら、苦しみだした。すぐ側にあった麻雀のセットに彼の手が当たり、牌が
散らばった。他の4人も、何事かといった体で、起き出した。綿子と孔雀が駆
け寄って、しっかり、とか言っているが、巽はうめき苦しんでいるままだ。そ
の声は、とても文字で表せないものであった。最後の力を振り絞るかのように、
巽が言った。
「犯人は・・・。」
その直後、彼は絶命した。アーモンドの香り。青酸化合物のようだ(あとで、
警察の鑑識の結果、青酸カリと分かった)。酒の中に入っていたのだ・・・。
さて、誰が殺したかというと?毒は、誰でも入手可能であった。男3人は職
場から毒を持ち出せる立場であり、綿子は、その商売柄、暴力団とのつながり
で、手に入れることができた。巽が飲んだ酒を買ってきたのは綿子、コップを
用意したのは扇、注いだのは孔雀、枕元まで運んだのは八竹であった。そして、
アれが一番重要なことだが、巽は手に麻雀の牌・竹の八を握って死んでいたの
だ。誰が犯人か?後の調べで、単独犯だと分かっているのだが・・・。
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これは、桂三枝氏の創作ミステリーを見て、そのひどさに立腹した勢いで書い
たものです。人物・状況等は違いますが、基本的には三枝氏のものと全く同じ
です。これで、真犯人を言い当てることが出来ますか?出来たとしても、厳密
なものではあり得ないと思います。しばらくしたら、三枝氏の正解と同じもの
ニ、私流に考えた解答をUPします。
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