#1316/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (AWC ) 88/12/18 21:40 ( 32)
深夜連載小説「ティーンミドル」(7)クエスト
★内容
「大地球博」のメインの展示品にされた恭一であったが、やはりただ見せるだけではつまらない。こいつは一応しゃべれるらしいし、何でもいいからしゃべらせてみろ。ということで恭一は講演会をすることになった。
「ボルト、もといバルト星人の皆さん、私の講演によく来ていただきました」
大盛況、数万のバルト人で埋まったドームの演壇で恭一は話始めた。
「なしくずしにこんなことになってしまって、私としては不本意な点もあるのですが、
折角の機会ですし、私の星、地球についてしばらくお話します」
「地球はまだ若い、そしてとても美しい星です。そして私達人類も若い種族です」
「その文明はここバルト星と比べ、大変未熟なものかも知れませんが、私達地球人は
絶え間無く進歩しています」
「基本的に私達は平和と友好を求め、様々な悪いことと闘っています」
「バルト星ともいずれは交流が始まることと思いますが、それがきっと素晴らしいもの
であることを私は....」
恭一は気付いた。会場にはしらけた雰囲気が漂っている。
「そうか...どこでも大衆は皆同じなんだ。真面目な話より娯楽を求めて集まって
いるだけなんだ...よし、それなら」
恭一は突然ステージに進み出て、股から45度に手を上下させた。
「コマネチ!」
反応がない。
恭一はステージの上で歌う真似をしながら滑らかに後ずさりした。
「ムーンウォーク!」
一部でどっと笑いが起こった。最近の地球の文化に詳しい事情通がいるらしい。
恭一はコンパ仕込みの瞬間芸を次々と披露し、だんだんとバルト星の大衆の心を
捉えていった。
そして大喝采の内に講演を終えたのである。
意気洋々と引き上げてくる恭一を見ながら船長は呟いた。
「この地球人はなかなか見所があるな。本当に残念だ。捕獲以来の記憶を消して地球
に送り帰してしまうのは...」
つづく