#1291/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DRH ) 88/11/30 20:15 (100)
「破滅の序曲」 Tink
★内容
●S−1.呪い
「一樹ぃー、ちょっと来て!」
河本一樹が2階の教室で、次の授業の小テストの勉強をしていると、突然一階から
大きな声が聞こえてきた。幼なじみの佐竹香代子が呼んでいるのである。
一樹は一瞬苦笑するような顔をすると、声がした方の窓から少し身を乗り出し、香
代子の姿を認め、大きな声で言った。
「どうしたんだい?」
「ちょっと面白いもの見付けたからきてくれない?」
「りょーかい、おじょーさま!」
一樹はやれやれと言う感じで、窓から離れると、香代子のいる校舎裏へと向かった。
香代子はとにかく珍しがりやで、何かあるごとに一樹を呼び出すので、こんなこと
は一樹にとって日常茶飯事なのであった。
一樹が校舎裏の、香代子のいる場所に行くと、香代子は何か地面にあいている小さ
な穴を覗き込んでいた。
「香代子、今回は何かな?」
香代子は一樹の方を振り返り、はしゃぐような感じで言った。
「この穴の中になにか壷かなにかあるのよね、あたしの力じゃひっぱり出せないから
一樹に手伝って貰おうと思ったのよ。」
「ふむふむ、まあいいけど、じゃあちょっとどいてくれる?」
「ありがと!」
一樹は小さな石を拾うとまず、壷の周りの土を崩し始めた。そしてある程度穴が大
きくなると、壷の縁に指をかけると、少し力を入れて引っ張った。しかし全然びくと
もしなかった。仕方が無いので、香代子にも手伝うように言って、香代子が壷に手を
かけて、一緒に引っ張った。すると突然壷が簡単に穴から抜けたので、思わず一樹は
尻もちをついてしまった。
「あいててて……」
一樹はそのショックで思わず壷を放してしまい、壷は地面に叩きつけてしまった。
しかし、その壷は割れることも、ひびが入ることさえなかった。
「ねえねえ、あけてみましょうよ!」
香代子は、興味深々と言う感じで壷の上に貼っている、ぼろぼろの紙をはがし、半
分腐った木の蓋を取った。
すると一樹は壷の中から、一瞬もやのようなものが出たのを目にしたような気がし
た。
香代子は一瞬びくんとけいれんしたようになり、壷を落としてしまった。
さっき、壷をおとした時にはひびすらはいらなかったのに、今度は粉々に砕け散っ
てしまった。
「香代子……?」
香代子は放心したような、青白い顔で立っていた。
一樹が声をかけても何の反応も無かった。ただ、焦点のあってないような目で、遠
くを眺めているだけである。
「香代子……!、どうしたんだ!?」
一樹が香代子の片を揺さぶると、一瞬ハッとしたような表情を作った。
「あれ……?、一樹どうしたの?」
「どうしたのって……、こっちが聞きたいよ、壷の蓋を開けたとたん急に放心状態に
なるんだもんな……、だけど大丈夫か?」
香代子は青白い顔で小さくうなずいた。
「うん……、大丈夫と思う。」
そう言い終わるがはやいか、香代子は小走りに走り去って行った。
●S−2 妖魔の復活
あの事件があってから、香代子の様子は一変した。今まではどちらかと言うと、の
びのびとしてて、悩みごとなど何も無い!っていうような感じだったのに、今では何
かに怯えているような感じなのである。
一樹はそんなことから、あの壷について調べてみようと言う気になった。
まず、図書室から、学校史のファイルを借りてきて、パラパラとページをめくって
いた。
すると、あの塚は、妖魔を封印したというようなことが記録されていた。そして、
それと一緒に次のようなことも書かれていた。
【一つの妖魔が闇に封印されし時、妖魔は言った。『1つの時代をこえて、妖魔は蘇
り、12月の月の満ちる時、1000の魂を道連れに再び暗黒の時代はやってくるだ
ろう』 1888年「】
「あの壷に貼っていたぼろぼろの紙がお札かなにかで、それを取ったことにより、封
印が解け、香代子に乗り移ったとしたら……。1つの時代……?、1世紀……100
年のことかな?、12月と言えば……、太陰暦の12月といえば今月じゃないか!、
満月は今日の夜……やばい!」
一樹はとにかく香代子の家に行ってみた。しかし、家の中は薄暗く、誰もいないよ
うであった。
「くそっ、どうしたらいいんだ!」
しかし、静かと言ってもこの静けさは異様であった。町の中全てが生気を抜かれた
ように活気を無くしている。
そして、道行くひとは皆、生気を抜かれたようにうつろな目をして、ある一定の方
向に向かって歩いていた、この方向は「「学校だ!
一樹は道を行く人々を避けながら学校へと向かった。
●S−3.破滅の序曲
カツーン、カツーン……。
誰もいない筈の学校の校舎に、大きな足音が響きわたっている。
カツーン、カツーン、カツーン……。
一人の足音では無い。無数の人々の足音が響いているのである。
人のいない音楽室からは、荒れ狂った様なピアノのメロディーが聞こえてくる。
人々は皆、生気を抜かれた様な青白い顔をして、どこか遠い所を眺めるようにして、
歩いている……。
香代子は人々から少し離れた場所から、その様子を眺めていた。口許に邪悪な笑み
を浮かべて……。
そして、一樹は塀に座っている香代子の姿を認めると、大きな声で叫んだ。
「香代子っ!」
香代子は一瞬びくんしたようになり、そしてゆっくりと振りかえった。
その顔には笑っているとも泣いているとも怒っているともつかないような表情が浮
かんでいた。
「あなただけは……、あなただけは殺したくなかった。でも、もう……」
香代子はそれだけ言うと、一樹をにらんだ。すると、香代子の目が光ったかと思う
が早いか、一樹の瞳は急に生気を失い、人々の中へと入って行った。
学校中には、ピアノのメロディと、甲高い香代子の「「妖魔の笑い声が響きわたる
……、それはそう、破滅への序曲なのかもしれなかった……。
End